賃金と働く人のモチベーションの関係については、研究や理論により様々な見解があります。以下に、賃金とモチベーションの関係に関する主な理)論や見解を紹介します。
今回はジョン・アダムの公正理論(公平理論)についてです。

公正理論(公平理論)は、ジョン・アダムスによって提唱された理論で、人々が自身の努力や報酬を他者と比較して評価することに基づいています。この理論によれば、人々は自分が受け取る報酬(賃金など)と他者の報酬を比較し、公正感を感じるかどうかがモチベーションに大きな影響を与えるとされています。

公正理論の基本概念

公正理論では、次の要素を比較の基準とします。

  1. インプット(Input)

インプットとは、従業員が仕事に対して投入する努力、時間、スキル、経験、資格、忠誠心などのことです。これらの要素は、仕事に対してどれだけの価値を提供しているかを示します。

  1. アウトプット(Output)

アウトプットとは、従業員が受け取る報酬や見返りのことで、賃金、ボーナス、昇進、福利厚生、認知、賞賛などが含まれます。インプットに対してどれだけの報酬を得ているかが重要です。

  1. 比較(Comparison)

人々は自分のインプットとアウトプットの比率を、他者(同僚、他部署の従業員、他社の従業員など)のインプットとアウトプットの比率と比較します。この比較の結果、公正だと感じるか、不公正だと感じるかがモチベーションに影響を与えます。

賃金と公正理論の関係

賃金が公正理論においてどのようにモチベーションに影響するのか、詳しく説明します。

  1. 公正な賃金の効果

従業員が自分の賃金を他者と比較した際に、インプットとアウトプットのバランスが取れていると感じる場合、その状況は「公正」とされます。公正な状況では、従業員は自分の努力が正当に評価されていると感じ、モチベーションが維持されます。公正感があると、従業員はより一層努力し、仕事に対して積極的な態度を取る傾向があります。

  1. 不公正な賃金の影響

従業員が自分の賃金が不公正であると感じると、不満やストレスを感じ、モチベーションが低下します。不公正な状況には以下の2つのパターンがあります:

・過少報酬の不公正:自分が他者と比べて少ない賃金や報酬を受け取っていると感じる場合。従業員は「こんなに努力しているのに報酬が見合っていない」と感じ、不満足感やフラストレーションが高まります。この場合、モチベーションが低下し、仕事のパフォーマンスが悪化する可能性があります。
・過大報酬の不公正:自分が他者よりも多くの賃金や報酬を受け取っていると感じる場合。これは比較的少ないケースですが、罪悪感を感じたり、業務に見合わない報酬を受け取っていると感じることがあります。

  1. 不公正感への対応

従業員が不公正感を感じた場合、それを解消しようとする行動が見られます。具体的には以下のような行動が考えられます:

・努力の調整:仕事に対する努力やパフォーマンスを減少させる。
・報酬の交渉:昇給やボーナスの増額を要求する。
・インプットの変更:スキルを向上させたり、業務内容を変えたりすることで、自分のインプットを増やす。
・他者との比較を変更:比較対象を変えて自分の状況を見直す。
・職場の離脱:転職や退職を考える。

公正理論を活用した賃金制度の設計

公正理論に基づいて賃金制度を設計する際には、以下の点が重要です:

  1. 透明性の確保

賃金の決定基準や評価基準を明確にし、従業員に理解してもらうことが重要です。透明なプロセスを確立することで、公正感を高めることができます。

  1. 公正な評価制度

評価制度が公正であることは、従業員が自分の賃金や報酬に納得するための重要な要素です。評価基準を一貫して適用し、努力や成果が正当に評価されるようにすることが求められます。

  1. フィードバックの提供

定期的なフィードバックを通じて、従業員が自分の業績や評価について理解できるようにすることが大切です。これにより、従業員は自分のインプットとアウトプットの関係を把握しやすくなります。

公正理論において賃金は、従業員のモチベーションに大きな影響を与える重要な要素です。賃金が公正であると感じられれば、従業員は満足感を持ち、モチベーションを高めて仕事に取り組みます。一方で、不公正だと感じた場合は、不満やモチベーションの低下を引き起こすため、賃金制度の透明性や評価基準の公正さを確保することが、従業員のモチベーションを維持・向上させるために不可欠です。

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