女性管理職の現状は?

女性管理職比率のアップが課題であり続けています。
人口減、多様性・ダイバーシティなど、様々な観点から、いま最も重要な課題といっていいでしょう。

課題になっているということは、まだ進んでいないということですが。

先日公表された「令和4年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)によると、課長相当職以上に占める女性の割合は12.7%となっています。

数値を上げればいいというものではないという意見もありますが、数値という目に見えるものを出すことが、会社の人材マネジメントのあり方を変革することにつながります。
かたちから入って意識を変えていくということです。

法制面ではどうなっているか?

女性活躍推進法では、常時雇用する労働者が101人以上の企業に対し、一般事業主行動計画の策定・届出を義務づけています。

この計画の策定にあたって、現状把握しなくてはならない事項というのが次のように決まっています。

①採用した労働者に占める女性労働者の割合
②男女の平均継続勤務年数の差異
③労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
④管理職に占める女性労働者の割合
⑤男女の賃金の差異(301人以上の企業)

つまり101人以上規模の会社は、女性管理職比率を把握しなくてはならないということですね。

女性登用にかかる問題は

男女雇用機会均等法の制定を機に、少しづつではありますが、女性の登用も進んできました。
ただ、このときキャリアアップを目指す女性の多くは、男性と同じような動き方、働き方をしました。
時間制約無しに働き時間外・休日労働もOK、異動・転勤命令も受け入れるという、制約のない働き方です。

「均等を言うのだから当たり前だろう」というわけです。
確かに性別による差がなく仕事も待遇も同じという観点からであれば、その考えもありかもしれません。

しかし、多様な人材が働き成果をあげるという観点でみると、それは違うかと。
なぜなら、上記の状態だと、実質何も変わっていないからです。女性の登用は進んでも、中身は壮年男性社会。全然多様化していない。

もうひとつの問題は、女性には妙に高いハードルを課していたということです。
女性を登用する場合はさまざまな要件をあげ、それらすべてをクリアすることを求めました。
その要件自体は誤りではなかったと思いますし、それらをクリアすることを管理職登用の要件とすることもあるべき姿です。
しかし問題は、男性を登用する場合はそこまで厳しく要件を見ていたかということです。
私の見るところ、そうであったとは思えず、むしろ「年次もいっているしそろそろ上げてやらないと」という情実判断が働いていた例も散見されました。

これとは少し違いますが、行動経済学者のイリス・ボネットはその著「WORK DESIGN(ワークデザイン) 」(NTT出版株式会社)の中で「女性は男性と異なり、板挟みの状態に置かれる。「仕事 ができる」という評価 と「感じがいい」という評価の片方しか手に入らず、両方を得ることはできないのだ。」と、現場で女性がどのように見られているかを指摘しています。

成果や貢献度に対する評価基準が曖昧だったことも、女性には不利に働きました。
評価基準が曖昧だと、どうしても「がんばっているか」という印象に頼った評価がされがちで、それは往々にして長時間労働とむすびつきます。
そうなると、働く時間に制約のある人、私生活を大事にしている人は不利になります。そして、その多くは女性です。

これらを考えていくと、ダイバーシティ実現のカギになるのは評価基準になってきますが、もうひとつ見逃せないのが、「無理だよ」という、永年の慣習からくるぬぐいがたい固定観念でしょう。
これは若手登用にも通じることです。

積極的に差別しようと思っているわけではなくても、「それなりの年齢に達した男でないと」という固定観念からくる不安でしょうか。

「理念は分かった。でも本当に大丈夫なのか?」というわけです。
そして、「本当に大丈夫か?」と問われて、「大丈夫です」と言い切れる人はそうはいません。

それを言ったらいかなる人事もそうなのですが、女性登用や若手登用ではこの懸念が特に強く出されます。

実質的には若手・中堅社員、女性社員がリーダーになっているのに、お飾りのような年配の部長を上に乗せて安心しているという妙な現象も結構見られました。

そこで必要な施策は、ひとつは「メンダー制度」、もうひとつは「トライアル制度」となります。
後者の制度は、一定期間をトライアル期間として、期待通りならそのまま本格付とし、NGだったら元に戻す(ペナルティなし、もちろん再挑戦OK)というやり方です。

合わせて、トライアル期間の賃金などの人事処遇を整備します。

このような、セーフティネットというべきものとセットにして、積極的な人材登用・活用を考えていくのがいいでしょうね。

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