「能力」はどうやって評価する?

日本の会社で主流であった人事制度が「職能資格制度」(あるいは「職能等級制度」)と、それに紐づいた「職能給」です。
いまも尚、多くの企業で採用されています。

この制度は、社員の「職務遂行能力」、つまりその人が身につけ、発揮している能力を基準にしています。
しかし、実際のところ能力評価は難しいです。
能力というのは目に見えないからです。

実のところ、本来の職能等級制度は、「職務遂行能力」を基準とするということで、職務との関係がしっかり取れているものです。しかしそのように実際に運用されている例は少なく、理念と実態に大きな乖離が生じていたわけです。

いわば「簡易版職能等級制度」。
実際の職務と能力の関係が断ち切れたかたちになってしまっていますから、いざ能力を評価しようとしても、拠り所になるものがないわけです。

これで能力を評価するのは確かに至難の業でしょう。

今後も職能等級を続けようという場合でも、職務とのリンクはしっかりとるような形にするのがいいですね。

能力には「顕在能力」と「潜在能力」がある

さて、この「能力」ですが、これには「顕在能力」と「潜在能力」があります。

顕在能力の評価は、行動評価に置き換えてもいいでしょう。
行動をとっているということは、その裏付けになる能力があると考えて間違いはないわけですから。

・成果に結びついている
・直接の成果でなくとも、たとえばチームワークをよくする行動であるとか、顧客の信頼感を高める行動であるなど、間接的・中長期的に成果に結びつく行動である

---このようなものを評価します。

一方の潜在能力。これを正確に評価するのは至難の業です。というか、まず不可能でしょう。
よって、実際の行動などから類推するなど、見込みでやるしかありません。

潜在能力の評価も必要

「そんな不確かな評価など、必要ないではないか」と思われるかもしれません。
しかし、必要です、

ひとつは人材育成のため。

人を育てるときは、「この人はこういうことに向いている」とか「こういう点に強みがある」という見込みを立てて行います。
そのためには、その人の潜在能力を推測しなくてはなりません。

能力評価と昇格・降格

もうひとつ、潜在能力評価が必要なのが「昇格」判定。

そもそも昇格は、「上の等級にあげてもやっていけるだろう」という見込み(期待)に基づいて行うものです。
もちろん、昇格前の時点で、その等級の人に求められる職責を果たしていることが必須ですが、それだけでは足りません。上にあげても、そこでの職責が果たせるという見込みがないと昇格はさせられません。

こうして見込みを立てて昇格させたものの、見込み違いだったということも起こり得ます。
特に、一般社員層から管理職層への昇格では、十分にあり得ます。求められる役割・職責の質が全く異なる(はず)だからです。

このような場合、本来は降格とすべきですが、現実にはこれがなかなかできません。

しかし、その職責に耐えられない人がそのままそこにとどまっているという状態は、会社にとっても、周囲にとっても、そして本人にとっても不幸なことです。

情に流されず、必要な人事として行うべきでしょう。
その際には、降格にあたって、どこが不十分だったから降格となったのかをきちんと、丁寧に説明することが必要です。
もちろん、今後もチャンスがあるようにすることも、当然必要です。

このように、会社において能力評価は引き続き実施すべきものです。
そのやり方、そして評価結果の活用の仕方を十分検討し、実施するようにしましょう。

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