労働時間の原則は
1日の労働時間は8時間以内と決まっていますね。会社はこの時間をきちんと把握・管理しなくてはなりませんし、8時間を超える時間については割増賃金を支払わなくてはなりません。
この発想の根底にあるのは、仕事のアウトプットは働いた時間に比例するということです。
もちろん、人によって能力、スキルに差がありますから、同じ時間働いても、アウトプットに差は出ます。
この部分は人事評価で評価し、賃金、賞与などにむすびつけるということになります。
また、歩合給などのかたちで直接賃金に反映させるというやり方もあります。
このように同じ時間働いても、アウトプットに差は出ますが、それはあくまでも基本給などに反映させるというかたちになります。
「今日はアウトプットが少ないから、8時間分ではなく6時間分の賃金にするよ」などということは許されません。
労働時間の長短と業務のアウトプットの関係が崩れてきている
しかしいまでは、働いた時間とアウトプットの間の相関が薄い業務が増えています。
研究開発業務、企画業務などが典型です。
そしてこのような業務は、その人の様子を見ていても、仕事をしているのかそうでないのかが分からないことが多いです。
パソコンの前でじっと腕組みをしていても、次の会議で出す企画のことを考えているのか、夜の飲み会のことを考えているのか分かりようがありません。
そして、仕事の進め方や時間配分について上司などが管理することは適当ではなく、本人に任せます。
裁量労働制とは
このような業務に対応する制度として、「裁量労働制」があります。
業務の時間配分や進め方を本人の裁量にゆだねるということですね。
このような場合、厳密な労働時間管理は難しくなりますから、労働時間を「みなす」ということになります。
(ただし、始業時刻、終業時刻の把握はしなくてはなりません)。
重要なのはこのみなし時間をどのぐらいにするかです。
裁量労働制の場合、時間外手当は支払わなくていいと思っている方がいますが、これはたいへんな誤解です。
もちろん、裁量労働制なのだからみなし時間は所定労働時間通りでいいというわけでもありません。
ポイントは実態がどうなのか。
裁量労働制を適用する業務をこなすのに、1日どのぐらいの時間仕事をするのか把握し、みなし時間をどのぐらいにするのがいいのかを労使で話し合って決める必要があります。
また、このみなし時間は、1日単位です。「月〇〇時間」という設定はできません。
賃金計算実務を簡素化するために月単位で決めたいという場合は、1日あたりのみなし時間を決めたうえで、年間でもっとも所定日数の多い月に合わせて1カ月あたりのみなし時間を設定するようにします。
また、裁量労働制の場合、一斉休憩というのは馴染みません。
労使協定で一斉休憩の適用を除外するようしておくのが適当です。
※こちらをご参照ください
「休憩時間はどのぐらい?」
次回から、裁量労働制の詳細について解説していきます。
適切な労働時間管理のために
今回は裁量労働制にあらましについて解説させていただきました。
これからの働き方をを考えていくうえで、労働時間制度のあり方は重要なポイントになります。ヒューマンキャピタルでは、丁寧なヒアリングで現状を診断し、会社の実情にフィットした労働時間管理制度をご提案します。労働時間管理でお悩みの方はぜひご相談ください。