「いじめ・嫌がらせ」トラブルは依然としてトップ
さまざまな労務トラブルの中でも、パワハラはいま最も気を配らなくてはならないものといっていいでしょう。
労使間のトラブルを扱う「個別労働紛争解決制度」の令和2年度の施行状況をみると、「総合労働相談」、都道府県労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」のいずれにおいても、「いじめ・嫌がらせ」がトップとなっています。
この「いじめ・嫌がらせ」がすべてパワハラになるとは限りませんが、パワハラあるいはパワハラ的なトラブルが数多く発生していることは間違いないところです。
相談窓口が機能していない?
その一方で気になるのは、パワハラを受けた人のその後の対応で一番多いのが「何もしなかった」、パワハラを知った後の勤務先の対応で一番多いのも「特に何もしなかった」ということです。(厚生労働省「令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査」)
これは---
・会社に相談窓口などが存在しない
・相談窓口が機能していない、または存在を知られていない
・会社に相談してもムダと思われている
---などの原因が考えられます。
日本労働組合総連合会(連合)が実施した「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」には次のような結果が出ています。
・ハラスメントを受けたとき、誰かに相談した人は 56.8%、「誰にも相談しなかった」は 43.2%
・誰かに相談した人のうち、人事担当者に相談した人は8.7%、職場の相談窓口は3.8%、労働組合は2.2%にとどまる。
・相談しなかった理由を聞いた理由は、「相談しても無駄だと思ったから」が66.4%とトップ
パワハラにきちんと向き合おう
「パワハラを受けた」いう訴えには主観が多分に入っていることは確かです。もともとハラスメントというのは本人の感じ方が要素のひとつになりますから、当然ではあります。
そのため、本人がパワハラだと思っていても、客観的にみてパワハラには明らかに該当しないということも当然あります。
そのような場合、訴えた本人からみると「会社に相談したのにとりあってもらえなかった」ということになってしまうかもしれません。
ただその一方で、明らかにパワハラになるにもかかわらず、会社の調査結果は「パワハラにはあたらない」というものだったという例も見聞きします。
もし会社がそのような状況だったら、当然問題あり。
早急な改善が望まれます。
さらに私が危ないなと思うのは、どちらのケースになるかに関わらず、社員の間に「会社に相談したってムダ」という空気が蔓延してしまうことです。
その結果、パワハラを受けながら誰にも相談することなく悩み続け、メンタルヘルス不調になってしまったり、会社への不満がたまっていってしまったりといったことにつながります。
また、前者の場合(パワハラには明らかに該当しないと判断できるケース)でも、なぜパワハラにあたらないと会社が判断したのか、そもそもパワハラとは何かをきちんと説明することが大事ですね。
また、このようなことが起こるのは、パワハラではなくても何かしら職場に問題があるとか、本人のメンタル面の問題があるといったところに原因があるかもしれません。
「パワハラではないよ」と済ませるのではなく、このようなことにも目配りするのがいいですね。
いずれにしても、会社はパワハラに対する対応体制を整え、それがきちんと機能するようにすることが必須といえるでしょう。
働く環境を整え会社を活性化しましょう
以上、今回はパワハラの現状と対応策についてお話させていただきました。
労務管理体制を整え、働きやすい環境をつくることは、会社を活性化し業績アップにつながります。
ヒューマンキャピタルでは、丁寧なヒアリングで現状を診断し、会社をより良くする体制の整備をお手伝いします。人材の活用、労医務管理ででお悩みの方はぜひご相談ください。