前のパートでご説明した通り、会社を辞めるということについては、「退職」と「解雇」の2つのパターンがあります。
このうち、前者の退職をめぐって実務上問題になることの多いポイントを解説します。
辞職と合意退職の違いは
従業員から一方的に労働契約を解約することを、「辞職」といいます。
一方、「合意退職」は、従業員が退職の意思表示をし、会社が承諾することによる労働契約終了です。
辞職も合意退職も、従業員の意思による「自発的退職」であることに変わりはありません。
しかし「辞職」の場合は、従業員の退職の意思が会社側に到達した時点以降は撤回できないのに対し、合意退職の場合は、会社が承諾するまでは撤回が可能です。
辞職の場合は引き留めることができず、退職ならば引き留められるといえるでしょう。
実務的には合意の有無がポイント
辞職の場合に従業員が会社に提出する書面を「辞表」といい、合意退職の場合に提出する書面を「退職願」といいます。
また、名称はともかく、「○年○月○日をもって退職致します」と書かれてあれば辞表、「○年○月○日をもって退職致したくお願い申し上げます」と書かれてあれば退職願ということになります。
しかし、実務の現場でそこまで厳密な区分がされていることはまずありません。また、従業員がそこまで意識して辞表や退職願を書くとは限りません。
したがって、退職日などについて会社との合意があれば「合意退職」、そのような合意がなければ「辞職」とするのが現実的でしょう。
できるだけ合意退職にするのがベター
また、実務の現場では、従業員が退職するとなると、後任者の決定、引き継ぎ、得意先への挨拶回りなど、さまざまな業務が発生します。
これらを漏れなく、スムースに行うためには、それなりに時間がかかります。
そのため会社としては、従業員からの自発的退職はすべて合意退職とし、会社の承認を要件としたいところです。
そこで、「退職の際は双方合意の上でしてもらいたい」という意味で、就業規則に退職を承認制とすることを記載することは可能です。
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ただし、実際に「会社の承認がないと退職できない」ように運用することは、従業員の退職の自由を制限することになり、許されません。
あくまでも会社からの希望として記載するだけであり、就業規則にかかわらず、従業員から退職・辞職の申し入れをされた場合には受け入れなければなりません(退職まで2週間ない場合には、延長させることはできます)。
以上から、次のように対処するのが現実的です。
・就業規則上は、従業員から労働契約解約の申し入れをする場合の申し出期日と会社の承認を要する旨を定めておく
・従業員からの退職申し出が上記期日を切っている場合は、退職日を期日どおりにするよう話し合うが、従業員の意思が固い場合はそれを 認める
・ただし、2週間以上の期間は義務づける
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以上、就業規則を作ったり見直したりする際のポイントについて解説させていただきました。
先に述べたとおり、就業規則は事業活動を行うためにとても重要なツールです。
しかし、ご自身で膨大な法令情報を把握し、自社にとって最適なルールや働き方を就業規則として明文化することは難しいと感じる方も多いと思います。
ただ形を整えるだけではなく、きちんとした就業規則を整備するためには、やはり就業規則の作成や見直しに強い社会保険労務士に依頼することをオススメしています。
ヒューマンキャピタルでは、丁寧なヒアリングで現状を診断し、会社の実情にフィットした就業規則をご提案する「就業規則コンサルティング」サービスを行っていますので、就業規則の作成・見直しでお悩みの方はぜひご相談ください。
01_1.就業規則作成 01_2.就業規則作成、見直しの実際 02_1.メンタルヘルスと就業規則 02_2.ハラスメントと就業規則 03.労使協定 10.採用、試用期間 11.退職、解雇 12.服務 13.懲戒 14.人事 15.労働時間 17.安全衛生、メンタルヘルス 18.育児・介護 19.ハラスメント 19_1.セクハラ 19_2.パワハラ 19_3.マタハラ 20.年少者 31.人事・賃金制度全般 32.人事等級制度 33.人事評価制度 34.賃金制度 34_2.ベアと定昇 34_3.諸手当 34_4.賃金とモチベーション 34_5.職能給 34_6.職務給 34_7.役割給 34_8.高齢者賃金 35.ジョブ型人事 36.賞与 37.目標管理制度 40.モチベーション、エンゲージメント 41.人材育成 51.テレワーク 52.有期雇用、パート 53.正社員登用 54.高齢者雇用 60.社会保険 65.労災、通災 70.業界別人事・労務 71.外食・小売業の人事労務 80.ダイバーシティ、多様化 80_2.複線型人事 100.コラム