就業規則は「生き物」である
就業規則はいったん定めたあとも常に見直し、変更を繰り返すものです。
法改正への対応もありますし、会社の人事制度や人事ポリシーを具体的な文書としたものが就業規則ですから、こうしたものが変われば、当然就業規則も変更されます。
さらにもう1つ、企業業績の悪化に伴う変更もあります。
就業規則の変更が従業員にとって不利益になることもある
こうした就業規則の変更が、従業員にとって有利なものであれば特に問題は起こらないでしょう。問題になるのは、従業員にとって不利な変更だった場合です。
いわゆる「就業規則の不利益変更」の問題です。
こういう場合、労働契約との関係はどうなるのでしょうか?
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不利益変更はどういう場合に可能か?
この問題については、昭和43年に最高裁が次のような判決を出しています。
「新たな就業規則の作成または変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則として許されないが、労働条件の集合的処理、とくにその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該就業規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない(昭和43年・最高裁・秋北バス事件)」
そして、この判決をほぼ踏襲した形で、労働契約法に就業規則変更と労働契約との関係が定義されています。
「第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。」
このように第9条で、労働条件の不利益変更は合意が原則であることをまず述べています。
しかしそのうえで、以下に紹介する第10条の場合は、「その限りではない」としています。
第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、つ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
要するに、次の2つの要件を満たしている場合は、たとえ個々の労働者が同意をしていなくても、就業規則の不利益変更が可能だということです。
- 就業規則変更の内容が合理的である
- 変更後の就業規則を周知している
逆に言うと、不利益変更の程度が合理的ではなかったり、変更後の就業規則の周知がされていなかったりすると、その変更は無効とされてしまうのです。
就業規則見直しを検討されている会社様へ
就業規則の不利益変更はなかなかに難しいものです。
お悩みの会社様はヒューマンキャピタルにご一報ください。
01_1.就業規則作成 01_2.就業規則作成、見直しの実際 02_1.メンタルヘルスと就業規則 02_2.ハラスメントと就業規則 02_3.労働契約と就業規則 03.労使協定 10.採用、試用期間 11.退職、解雇 12.服務 13.懲戒 14.人事 15.労働時間 16.賃金規程 17.安全衛生、メンタルヘルス 18.育児・介護 19.ハラスメント 19_1.セクハラ 19_2.パワハラ 19_3.マタハラ 20.年少者 31.人事・賃金制度全般 32.人事等級制度 32_2.昇格、降格 33.人事評価制度 34.賃金制度 35.ジョブ型人事 36.賞与 37.目標管理制度 40.モチベーション、エンゲージメント 40_2.心理的安全性 41.人材育成 45.採用 51.テレワーク 52.有期雇用、パート 53.正社員登用 54.高齢者雇用 60.社会保険 63.事業所新設と社保 65.労災、通災 70.業界別人事・労務 71.外食・小売業の人事労務 80.ダイバーシティ、多様化 80_2.複線型人事 85.働き方改革 100.コラム