就業規則の作成・提出は労働基準法に定められています。
だからと言って「ただあるだけの就業規則」になっていませんでしょうか?
今回はそんな就業規則の必要性と役割についてお話しさせていただきます。
1.就業規則はなぜ必要?
就業規則は、なぜ作成する必要があるのでしょうか?
「労働基準法に定められているから」
確かにその通りです。
常時10名以上の労働者を使用する使用者は、労働基準法により就業規則の作成が義務づけられています。
一定以上の人を雇用して事業を営む会社にとって、就業規則の作成は法律で定められた責務なのです。
しかし、就業規則の位置づけは法的義務だけにとどまるものではありません。
就業規則はいわば会社のルールブック。
社員に対して働く上で守るべき規律を明示するとともに、どのような働き方をしてほしいかを伝えることができるツールが就業規則なのです。
事業目的を達成するために必要なルールや働き方は、それぞれの会社によって当然異なります。
そのため、一般的な雛形やテンプレートを一部だけ改変したり、インターネットで調べた内容を流用するだけでは、就業規則本来の機能を果たすことはできないでしょう。
就業規則の定め方一つで、人材活用や処遇のあり方は大きく変わってきます。
法律で定められているから仕方なく作成するのではなく、会社の目的や実情に合わせて就業規則のあり方をしっかりと考え、作成することが大切です。
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2.就業規則の役割
それでは就業規則の役割について、もう少し細分化して見ていきましょう。
就業規則には大きく分けて次の3つの役割があります。
①法を守る ②会社を守る ③社員を活性化する |
それぞれについて解説していきます。
(1)法を守る ~労務コンプライアンスの確立
労使トラブルの増加や雇用問題への関心の高まりを受け、会社における労務コンプライアンス(法令遵守)の重要性は日に日に高まってきています。
労働基準法をはじめとして、会社が守るべき労働関係法令は多岐に渡ります。
この分野は法令の数が多いだけでなく、改正や新法制定の動きが盛んなのも特徴の一つ。
また労働法に限らず、民法、個人情報保護法、公益通報者保護法など、働く人に関連する法律は様々です。
不要なトラブルを避けるために、これらの法律をしっかりと押さえて法令違反を犯さないようにしなければなりません。
会社において、人事労務に関連する「法を守る」基本となるのが就業規則です。
法令に則った内容で就業規則を作成し、内容を周知することが法令遵守の第一歩となります。
また、就業規則そのものにも法的規制があります。
記載事項、作成手続、周知義務などです。
これらの内容に則して就業規則を作成していないと、罰則が課されたり就業規則自体が無効となってしまう場合もあるため注意しなければなりません。
適切に整備した就業規則を労使ともに遵守し、労務コンプライアンス体制を確立することが大切です。
(2)会社を守る ~労務リスクの防止
人を雇うことには様々なリスクが伴います。
これを「労務リスク」といい、次の3つに分類できます。
①コンプライアンスリスク:会社の法令違反が引き起こす訴訟などのリスク ②人的リスク:従業員が直接引き起こす不祥事などのリスク ③健康・メンタルヘルスリスク:従業員の身体的・精神的な健康被害によるリスク |
就業規則は、このような労務リスクを未然に防ぐ機能も担っています。=
たとえば、管理職が不法な残業を部下に強いたりセクハラ行為をすることを、就業規則を整備し周知徹底することによって防止することができます。
また、就業規則の中で服務などに関する規定を明確にして周知することで、従業員の不祥事を防止することが可能です。
それだけでなく、就業規則に健康診断やケア体制に関する規定を設け、従業員の健康管理を行うこともできます。
就業規則は、会社が晒される様々な労務リスクに対し防波堤の役割を果たすのです。
(3)社員を活性化する ~人事のアカウンタビリティ
就業規則の背景には、会社の人事制度や人事ポリシーがあります。
就業規則は、これらの制度やポリシーを従業員に伝えるための役割を担っています。
人事制度がきちんと伝わっているかどうかで、従業員のモチベーションは大きく異なってきます。
また、自社の労働条件がどうなっているか分からなければ従業員は安心して働くことができないでしょう。
安心できないだけでなく、会社に対する不信感につながったり、場合によっては優秀な人材の流出にもつながりかねません。
優秀な人材を確保し会社の業績を上げるためには、働く人たちへの説明責任を果たして会社に対する安心感と信頼感を持ってもらうことが必要不可欠です。
就業規則は、従業員に対して説明責任を果たすツールとして活用することができます。
たとえば、会社がどのような人材をどのように処遇するかは、賃金の項目に表れます。
また、会社が従業員を大事にしているかどうかは、安全衛生や福利厚生の項目を見れば分かります。
人事制度や労働条件、従業員のための取り組みなどを就業規則に明記することにより、従業員は安心して働くことができます。
「就業規則には何を書く? 理念共有ツールとしての活用」
就業規則は社員のモチベーションを高め、組織を活性化させるためにも大切な役割を持っているのです。
あなたの会社に合った就業規則を作成するために
以上、就業規則の必要性と役割について解説させていただきました。
先に述べたとおり、就業規則は法的義務という枠組みを超えて、組織を活性化させ適法に事業活動を行うためにとても重要なツールです。
しかし、ご自身で膨大な法令情報を把握し、自社にとって最適なルールや働き方を就業規則として明文化することは難しいと感じる方も多いと思います。
ただ形を整えるだけではなく、きちんとした就業規則を整備するためには、やはり就業規則の作成や見直しに強い社会保険労務士に依頼することをオススメしています。
ヒューマンキャピタルでは、丁寧なヒアリングで現状を診断し、会社の実情にフィットした就業規則をご提案する「就業規則コンサルティング」サービスを行っていますので、就業規則の作成・見直しでお悩みの方はぜひご相談ください。
01_1.就業規則作成 01_2.就業規則作成、見直しの実際 02_1.メンタルヘルスと就業規則 02_2.ハラスメントと就業規則 02_3.労働契約と就業規則 03.労使協定 10.採用、試用期間 11.退職、解雇 12.服務 13.懲戒 14.人事 15.労働時間 16.賃金規程 17.安全衛生、メンタルヘルス 18.育児・介護 19.ハラスメント 19_1.セクハラ 19_2.パワハラ 19_3.マタハラ 20.年少者 31.人事・賃金制度全般 32.人事等級制度 32_2.昇格、降格 33.人事評価制度 34.賃金制度 35.ジョブ型人事 36.賞与 37.目標管理制度 40.モチベーション、エンゲージメント 40_2.心理的安全性 41.人材育成 45.採用 51.テレワーク 52.有期雇用、パート 53.正社員登用 54.高齢者雇用 60.社会保険 63.事業所新設と社保 65.労災、通災 70.業界別人事・労務 71.外食・小売業の人事労務 80.ダイバーシティ、多様化 80_2.複線型人事 85.働き方改革 100.コラム