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社員が退職するときの社会保険手続(5)~退職後の医療保険(2)

退職後はどの医療保険に入ればいいのか?

これは人事のご担当の方がよく聞かれる質問かと思います。

前回お話しした通り、選択肢になるのは、現在加入している健康保険に任意継続するという方法と、住んでいる地域の国民健康保険に加入する方法の2つがあります。

この2つ、どちらを選ぶのがいいのでしょうか?

まずは保険料負担の面からみていきます。


<保険料負担>

任意継続被保険者の場合、保険料は全額自己負担となります。
(在職中は会社と本人折半でした)。

保険料の基礎になるのは「標準報酬」ですが、これは、次のいずれかの低い方となります。

・本人の退職時の標準報酬
・加入している健康保険(協会健保または組合健保)の平均標準報酬

平均標準報酬は、加入している健康保険に確認してください。


一方、国民健康保険の保険料は、前年の年収をベースに算定されます。
額は自治体によって異なりますので、窓口で確認してみてください。


以上から、保険料負担という面では、どちらがいいとは一概に言えません。
ご本人の収入状況などから個別に検討してみてください。


<保険給付>

それぞれの保険制度の給付内容を一覧にすると、次のようになります。

◆健康保険・任意継続
 療養の給付
 入院時食事療養費
 入院時生活療養費
 保険外併用療養費
 療養費
 訪問看護療養費
 特別療養費
 移送費
 埋葬料
 出産育児一時金
 高額療養費

◆国民健康保険
 療養の給付
 入院時食事療養費
 入院時生活療養費
 保険外併用療養費
 療養費
 訪問看護療養費
 特別療養費
 移送費
 高額療養費
 ※出産育児一時金
 ※葬祭費
  ※:自治体による

こうして並べてみると、ほとんど違いがないことが分かります。
療養の給付における自己負担率3割なども同じです。

ただし健康保険・任意継続については、協会健保の給付内容を示しています。。
健康保険組合の場合、さらには、「特例退職被保険者」の場合は、独自の給付制度を設けている場合がありますので、確認してみてください。

 

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2019年06月17日

36協定の結び方のポイント、時間外の上限規制④~36協定の内容②

36協定で定めなくてはならないのは、次の事項です。

・時間外労働、休日労働をさせる労働者の範囲
・対象期間、起算日
・時間外労働、休日労働をさせる事由
・1日、1ヶ月、1年の時間外労働の時間数、休日労働日数
・協定の有効期間
・「特別条項」に関する事項

◆対象期間

1年に限られています。
「対象期間」とは、時間外労働、休日労働をさせることができる期間をいいます。
36協定では時間外労働できる時間の上限を決めますが、その時間を計算する期間ということです。

◆時間外労働、休日労働をさせる事由

どういう場合に時間外労働、休日労働をさせることができるかを決めます。
内容はできるだけ具体的にします。単に「忙しいとき」というだけではダメで、どういう理由で忙しくなるのかを記載します。
厚生労働省から記載例が示されていますので、参考にするのがいいでしょう。

◆1日、1ヶ月、1年の時間外労働の時間数、休日労働日数

時間外労働時間、休日労働日数の上限を、1日、1ヶ月、1年の単位でそれぞれ定めます。
1ヶ月、1年の時間外労働時間の限度時間が次のように法で定められています。

・1ヶ月45時間(1年変形の場合42時間)
・1年360時間(1年変形の場合320時間)

36協定の上限時間は、この限度時間の範囲におさめなくてはなりません。

一方、1日の時間外時間、休日労働の日数は特に規制はありません。
実状に見合うよう労使で話し合って決めるようにしましょう。

ただ、休日労働の「日数」に規制はありませんが、時間外労働時間と休日労働時間を合計した「時間数」には次のように限度時間が定められていますので注意が必要です。

・1ヶ月100時間未満
・2ヶ月ないし6ヶ月の平均80時間以内

また、36協定で定めた上限時価を超えることがありうる場合は、「特別条項」を結びます。

時間外の上限、36協定の特別条項については別の項でお話しします。

◆36協定の有効期間

36協定の有効期間をどのぐらいにするかは労使の任意ですが、通達では1年とすることが望ましいとしています。

 

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2019年06月14日

社員が退職するときの社会保険手続(4)~退職後の医療保険(1)

退職した場合の社会保険、今回は、退職後の医療保険について見ていきましょう。

退職した人が、別の会社に再就職した場合は、その会社で健康保険に入ります。
本人があれこれ考える余地はありません。

一方、そのまま完全にリタイアした場合、または自営業者などになった場合は、その人は健康保険の任意継続被保険者になるか、国民健康保険の被保険者になるか、いずれかを選ぶことになります。

(厚生年金などに20年以上加入し、老齢年金の支給開始年齢に達している人が退職した場合は、国民健康保険の退職被保険者になります。
また、加入している健康保険が特定健康保険組合の場合は、「特例退職被保険者」になることもできます)。


健康保険の任意継続被保険者になれるのは、被保険者期間が2ヶ月以上あるす人です。

資格喪失後20日以内に本人の住所を管轄する健康保険協会または加入していた健康保険組合に「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を提出します。

任意継続被保険者の期間は2年間です。途中で任意に脱退することはできません。


では、退職後はどちらを選択するのがいいのでしょうか?
次回はこのあたりを見ていきましょう。

 

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2019年06月12日

36協定の結び方のポイント、時間外の上限規制③~36協定の内容①

36協定で定めなくてはならないのは、次の事項です。

・時間外労働、休日労働をさせる労働者の範囲
・対象期間、起算日
・時間外労働、休日労働をさせる事由
・1日、1ヶ月、1年の時間外労働の時間数、休日労働日数
・協定の有効期間
・「特別条項」に関する事項

◆時間外労働、休日労働をさせる労働者の範囲

「全社員」というような定め方はNGです。
業務をごとに決めなくてはなりません。
これについて「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針
」(以下このコラムでは「36協定指針」とします)4条には次のように書かれています。

「業務の種類について定めるに当たっては、業務の区分を細分化することにより当該業務の範囲を明確にしなければならない」

つまり、大まかな区切りではダメで、細分化した具体的な定義をしなくてはならないということです。

ではどこまで細分化すればいいのか?
この点については、以前出された通達に次のような記述があります。

「労使は、各事業場における業務の実態に即し、業務の種類を具体的に区分しなければならないものであり、事業の実態、実情を最も熟知する労使の判断が尊重されるものであるが、例えば、労働時間管理を独立して行っている各種の製造工程が設けられているにもかかわらず業務の種類を「製造業務」としているような場合は、細分化が不十分であると考えられる。」(平成11年3月31日 基発169号)

ここでポイントになるのが「労働時間管理を独立して行っている」という部分でしょう。
労働時間の管理単位、業務内容・実態を基準に決めていくということですね。

 

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2019年06月06日

社員が退職するときの社会保険手続(3)~資格喪失日と被保険者資格、保険料の関係

退職した場合、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の資格喪失日は、退職日の翌日です。

したがって、療養などの保険給付は、原則として退職日が境になります。

一方保険料は、月単位になります。

そして、資格喪失月は、保険料徴収の対象となりません。

したがって、次のようなことになるのです。


(月末が31日の月の場合)

・30日退職=31日資格喪失→退職月が資格喪失月となるので、退職月は保険料がかからない

・31日退職=翌月1日資格喪失→退職月の翌月が資格喪失月となるので、退職月は保険料がかかる


保険料という観点だけで考えると、末日に退職するより、末日の前日に退職する方が得ということになります。


でも、保険料のことだけで決めるのは宜しくないですね。
それ以外のことも考える必要があります。

たとえば、年金給付は保険料の納付実績に対応します。
保険料を納めた月が1ヶ月少なければ、その分年金額も減ります。

また、退職金制度など、会社独自の制度についてはどうなのかもきちんと押さえる必要があります。


退職を考えている方はこうした点をトータルで考えるようにしましょう。

また、人事のご担当の方は、これらをよく理解した上で対応するようにしましょう。

 

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2019年06月05日

36協定の結び方のポイント、時間外の上限規制②~36協定のあらまし

◆36協定のあらましは?

時間外労働をさせるには「36協定」という労使協定を結ぶことが必須というお話を前回しました。
もう少し詳しくいうと、次のようなことになります。

・36協定は事業場ごとに結ぶのが原則。本社、工場、営業所がそれぞれ別の場所にある場合は、それぞれの場所で結ぶ。
・36協定の当事者は労働者代表。労働者代表とは、事業場の過半数の労働者が加入している労働組合がある場合はその労働組合、労働組合がない場合やあっても過半数組合でない場合は、事業場の労働者の過半数を代表する者。
・36協定で結ぶべき事項は法で定められている。
・協定を結んだら所定の様式(様式第9号、第9号の2)で所轄労働基準監督署長に届け出なくてはならない。

◆36協定で結ぶ内容は?

これは次のように定められています。

・時間外労働、休日労働をさせる労働者の範囲
・対象期間、起算日
・時間外労働、休日労働をさせる事由
・1日、1ヶ月、1年の時間外労働の時間数、休日労働日数
・協定の有効期間
・「特別条項」に関する事項

次回以降、これらの内容について見ていきましょう。

 

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2019年06月03日

社員が退職するとき(2)雇用保険の手続きは

退職時の手続き、次は雇用保険です。

雇用保険の場合も、退職(雇用保険では「離職」といいます)した場合は「資格喪失」の手続きをします。

雇用保険の資格喪失日は、離職した日の翌日です。


手続きにあたっては、「雇用保険被保険者資格喪失届」に「雇用保険被保険者離職証明書」を添付して、所轄公共職業安定所長に提出します。

提出期限は退職日の翌日から起算して10日以内です。

退職者が、離職票の交付を希望しない場合は、離職証明書を添付しなくて構いません。
その場合、資格喪失届の「離職票交付希望」欄が「無」になっており、被保険者確認印に退職者が押印していることが必要です。

ただし、離職日に59歳以上になっている場合は、本人の希望の有無にかかわらず離職証明書の交付が必要です。

また、退職の時点では離職票の交付を希望していなくても、後になってから希望した場合は、会社は離職証明書を発行しなくてはなりません。
資格喪失届を提出した後であってもです。

 

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2019年05月31日

36協定の結び方のポイント、時間外の上限規制①~時間外労働の基礎知識

◆時間外労働をさせるには36協定は必須

会社は従業員を何時間まで働かせていいのか?
労働基準法に定められていますね。

・1日8時間、1週40時間。
・休日は最低週1日(例外として4週4日)

これを「法定労働時間」、「法定休日」といいます。

この時間を超えて労働させることは労働基準法で厳しく禁じられています。

しかし現実には、この時間を超えて仕事をさせなくてはならないこともあります。

法も一定の条件にあたる場合には、法定労働時間を超え、あるいは法定休日に労働させることを認めています。

時間外労働をさせることができるのは、次の3つの場合です。

1)災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要性がある場合
2)公務のため臨時の必要がある場合
3)労使協定がある場合

このうち、業務多忙のために時間外労働・休日労働をさせることができるのが「3)労使協定がある場合」です。
この協定を、「36協定」といいます。
労働基準法36条に定められているため、このような通称になっています。

ここまでが、時間外労働をめぐる基本。
このコラムで、働き方改革法制で改正された36協定をめぐるもろもろをお話ししていきます。

 

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2019年05月30日

賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」⑩~職能給、職務給、役割給をどう組み合わせるか

前回は、賃金制度を考える場合は、業務特性を踏まえてというお話をしました。
今回は、組み合わせの発想についてお話しします。

◆組み合わせて考える

前述の業務特性と関連する話です。

専門性高めていくことで会社に貢献する人と、複数の業務をマルチにこなることで会社に貢献する人がいる場合、両者を同じ基準で賃金を決めるのは不適当と思われます。前者は職務給、後者は職能給が向いているでしょう。役割給は、役割の定義の仕方によって、どちらにも適用可能です。

また、専門性を評価されて中途採用される人、新卒でも同様の採用のされ方をした人の場合は、職務の現在価値を反映した職務給の方が合うでしょう。一方、新卒などで長期にわたって育成・活用していくことが前提の場合は、職能給がベースになると思われます。

それ以外にも、育成途上の人と一人前の人、長期雇用の人と短期雇用の人など、様々なバリエーションがあり得ます。

また、1人の人の賃金でも、たとえば職能給と職務給・役割給を組み合わせるということも考えられます。

このように、賃金制度は単一でなければならないという決まりはありません。
会社の実情に合わせて、どのような賃金制度をどのように組み合わせていくかが賃金制度設計のポイントになるのです。

 

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2019年05月24日

社員が退職するとき(1)社会保険の手続きは

社員が退職したときの手続きを、社会保険、雇用保険それぞれについて見ていきましょう。

まずは社会保険(健康保険、厚生年金保険)から。


退職の場合、会社は「資格喪失」という手続きをしなくてはなりません。

では、資格を喪失するのはいつなのか?
ここを正確に押さえておく必要があります。

社会保険の資格喪失日は、次のようになります。

・退職した日の翌日
・死亡した日の翌日
・被保険者が適用除外に該当した日の翌日。ただし、後期高齢者医療の被保険者となった場合は、資格取得日)
・事業所廃止、任意適用事業所の取り消しを許可された日の翌日
・70歳の誕生日の前日(※資格喪失するのは厚生年金保険のみ)

「健康保険・厚生年金保険資格喪失届」を、上記の資格喪失日から起算して5日以内に、所轄の年金事務所または健康保険組合に提出します。
その際に、健康保険被保険者証を添付します。

 

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2019年05月24日

賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」⑨~職能給、職務給、役割給のどれが適切か

ここまで、人基準賃金として年功給、職能給、仕事基準賃金として職務給、役割給を見てきました。
それぞれに特徴があり、メリット・デメリットがあることがご理解いただけたかと思います。

では、当社はこれからどうしたらいいのか?

経営者、人事責任者・担当者の方は、当然ここが一番気になるところ。
どう考えていくべきでしょうか?

◆賃金制度を考える3つの視点

①会社の基本ポリシーを踏まえる
②会社の業務特性に合わせる
③組み合わせで考える

この3つの視点が大事です。

このうち最初の会社の基本ポリシーに関するお話は、今回のコラムのテーマとは離れてきますので、別の機会にすることにします。

◆会社の業務特性に合わせる

現状がいまどうなっているか、きちんと押さえたうえで制度を考えるようにします。

たとえば人事異動や職務転換がほとんど行われず、社員はそれぞれ、ひとつの仕事を極めていくという行き方になっている場合、職能給の柔軟さというのはあまり意味をもちません。職務給の方が向いていると思われます。

一方、いわゆる多能工化、マルチジョブ化を進めているような場合や、業務範囲が本人の能力や状況に応じて変化していくような場合は、職能給の柔軟さが有効です

 

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2019年05月23日

社員を採用したときの社会保険手続(10)~被保険者の範囲③

雇用保険の被保険者の範囲について、判断に迷うケースについて解説します。

◆役員
代表取締役は雇用保険の被保険者とはなりません。
取締役も原則として被保険者になりませんが、使用人兼務などで労働者的性格が強い場合は、被保険者となります。

◆学生
原則として被保険者とはなりませんが、次の場合は被保険者となります。

・卒業を予定していて、卒業後も引き続き同じ事業所で雇用されることになっている
・休学中
・定時制課程に在学している

◆パートタイマー
次のいずれの条件にもあてはまる場合は被保険者となります

・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上引き続き雇用されることが見込まれる

 

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2019年05月23日

賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」⑧~職務給、役割給のデメリット

◆職務給、役割給のデメリット~柔軟さに欠ける

これについては「賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」②~属人給(能力給、年功給)のメリットは」でお話しした通りです。
担当している仕事のレベルと賃金がリンクしている職務給の場合、人事異動などの結果担当している仕事のレベルがダウンすると、賃金も下がることになります。そのため、人事異動が相当制約されてしまいます。

役割給の場合は、複数の職務をひとつの「役割等級」として括ります。
「役割等級1級=〇〇円~〇〇円」というように、賃金はある程度の幅になります。
(職務給の場合は、「職務等級1級=〇〇円」というようになり、幅はありません)。
そのため、職務給に比べれば柔軟な運用が可能です。
とは言え、役割レベル(=役割等級)が下がれば賃金はやはり下がるのが原則で、職能給ほどの柔軟さはありません。

◆職務給、役割給のデメリット~メンテナンスの労力

職務給では以前お話しした通り、職務分析・職務評価という作業を通じて、会社にある仕事をランクづけします。
しかし仕事というのは日々変化します。

・新しい仕事ができる
・仕事が無くなる
・仕事の内容・レベルが変化する

このようなことが日常的に起こります。

それに対応して職務分析・職務評価を改めて行わなくてはなりません。
大変な作業です。
そのため、ついつい放っておいてしまうことが多く、その結果、苦労して作った職務記述書、職務評価表といったツールが実情に合わず使えなくなってしまうのです。

役割給の場合は、職務給に比べればそこまで厳密にしなくても何とかなりますが、実情に見合わなくなったらメンテナンスしなくてはなりません。

 

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2019年05月22日

社員を採用したときの社会保険手続(9)~被保険者の範囲②

<雇用保険>

雇用保険の被保険者になるのは、適用事業所に雇用される労働者です。

雇用保険の被保険者は何種類かに分かれています。
それは次の通りです。

①一般被保険者

②~④以外の被保険者。
パートタイマーの場合、次の条件に当てはまれば被保険者となります。

・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上引き続き雇用されることが見込まれている

②高年齢継続被保険者

65歳の誕生日の前々日から同一の事業主に雇用されている65歳以上の人
(雇用された時点で65歳以上の場合は、被保険者となりません)

③短期雇用特例被保険者

季節的に雇用されていて、次のいずれにも該当しない人

・4か月以下の期間を定めて雇用される
・1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満

※短期雇用特例被保険者であっても、同一の事業主に引き続き1年以上雇用されることとなった場合は、その日から一般被保険者となります。

④日雇労働被保険者

 

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2019年05月22日

賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」⑦~職務給、役割給のメリット

◆職務給、役割給のメリット~成果型人事との相性

職務給、役割給のメリットとして、成果型人事との相性の良さも挙げられます。

「成果型」というと、以前流行した「成果主義」が頭に浮かびます。
ブームのような変な現象が起こり、ブームの常として成果主義型賃金の多くは失敗に終わっているようです。

しかし、成果主義の考え方そのものは間違いではありません。
成果に報いる、成果に対応して賃金などの処遇を決めるのは、至極当然のことでしょう。
問題は、実際の導入、運用にあったと言えるでしょう。
導入の目的、成果の定義、人事評価や目標管理の運用など。

◆何をやるべきかが明確になっていること

成果を重視して賃金などを決めようとしたら、まずは、その人がどんな仕事をしていて、何を期待されているかが明確になっていないといけません。
その点、職務給や役割給では、社員それぞれの担当職務や果たすべき役割が明確になっていますから、成果を評価するのも比較的容易にできるのです。

◆職務給、役割給のデメリット

これには次の2点があげられます

・柔軟さに欠ける
・メンテナンスに労力がかかる

次回はこれらについて見ていきましょう。

 

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2019年05月20日

社員を採用したときの社会保険手続(8)~被保険者の範囲①

社員を採用した時のお話、最後に被保険者の範囲についてご説明しておきます。

ここを間違えると、入れるべき人を入れていなかったり、その逆のことをしてしまったりといったことがおこり、トラブルの元になりますので、しっかりと押さえてください。


<健康保険>

適用事業所に使用されている人は、国籍・性別・年齢・賃金の額などに関係なく、次の「適用除外」に該当する場合を除いて、すべて被保険者となります。

「適用除外者」とは、以下に該当する人です。

・船員保険の被保険者
・所在地が一定しない事業所に使用される人
・国民健康保険組合の事業所に使用される人
・健康保険の保険者、共済組合の承認を受けて国民健康保険へ加入した人
・後期高齢者医療の被保険者等

適用対象とするかどうか判断に迷うのは、以下のような場合です。

・役員等
法人等の役員(代表者も含む)は、法人から報酬を受けていれば被保険者となります。
ただし、非常勤の役員は被保険者となりません。
また、個人事業主は被保険者となりません。

・試用期間中、研修期間中
被保険者となります。試用期間を過ぎてから資格取得手続きをする会社もありますが、これはNGです。

・パートタイマー
1日、1週の所定労働時間または1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務についている通常の労働者(一般的には正社員)の概ね3/4以上であれば、被保険者となります。

また、従業員数501人以上の会社については次の要件を満たすパートタイマーも被保険者の対象となります。(「短時間被保険者」と称します。)

・1週間の所定労働時間が20時間以上
・その事業所に継続して1年以上勤務することが見込まれる
・報酬月額が88,000円以上
・学生でない

 

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2019年05月20日

賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」⑥~職務給、役割給

それでは今回は「仕事基準賃金」を見ていきましょう。

◆仕事基準賃金とは

仕事基準賃金の代表が職務給です。
これは、担当している職務のレベルに応じて賃金が決まるという仕組み。
賃金額は、職務に対応して決まっています。人ではありません。
職務に対して値付けをするわけですから、会社にはどんな職務があって、それぞれの職務はどれぐらいのランクになるのかを決める、「職務分析」「職務評価」という作業が必須になります。

仕事基準賃金のもうひとつの型が役割給です。これは職務給の派生型ともいえる賃金です。
職務を「役割」という基準で括り、職務を通じて果たしている役割の大きさを基準に賃金を決めます。

◆職務給、役割給のメリット~基準の明確さ

職務給のメリットは何といっても基準の明確さです。
もちろんこれは、前述の職務分析・職務評価がきちんと行われていることが前提ですが。

「どの仕事を現実にしているか」が基準ですから、曖昧さの入る余地はありません。

役割給の場合は「果たしている役割」という、「担当している職務」に比べると曖昧さの残る基準になりますが、この点は「役割」と「職務」の対応関係を定義することによってクリアできます。
(話はそれますが、この点は職能給も同様で、「能力」と「職務・課業」の対応関係があれば、曖昧さはクリアできるはずです。またこの話は別の機会に)

◆職務給、役割給のメリット~人件費の高騰の予防

職務給・役割給のもうひとつのメリットは、人件費の膨張をコントロールできるということです。
社員の高齢化が人件費に影響を与えることはありません。

論理的には、会社に存在する職務の「価値」の総トータルが賃金総額と一致します。
もしそこのバランスが崩れていたら、会社の実情に合わないレベルの職務が存在しているか、職務評価が不適切であったかのいずれかになります。
その場合は、職務編成の見直しまたは職務評価の修正を行います。

これ以外にも職務給・役割給のメリットはあります。
また、デメリットも当然あります。

次回、このお話をしましょう。

 

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2019年05月15日

社員を採用したときの社会保険手続(7)~雇用保険資格取得

社員を採用したら、雇用保険にも加入させなくてはなりません。

採用した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を、事業所を管轄する公共職業安定所に提出します。

前職がある人の場合は、雇用保険被保険者証を添付しますので、入社の日に提出してもらうようにしてください。

また、兼務役員の場合は、兼務役員雇用実態証明書などが必要です。
この点については、公共職業安定所にご確認ください。

 

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2019年05月15日

賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」⑤~職能給はまだまだ生きている

年功給のもつ「基準の曖昧さ」を是正し、年功ではない、もっと納得性のある基準で賃金を決めようという狙いで考え出されたのが職能給でした。
しかし能力の捉え方に問題が出ることが多く、その結果、年齢や勤続といった「曖昧さのない基準」を重視した運用になってしまい、結果的には年功給のようになっていたのです。

◆年功給、年功的職能給の問題点は?

これにはいろいろありますが、整理すると次のようになります。

・従業員の高齢化の進行に比例して人件費が増加する。
・賃金額と担当している職務のレベルや業績・成果のバランスが取れない。特に経験年数と成果の関連性が薄い業務の場合、それが顕著に出る。
・専門職の処遇に向いていない。人事異動や職務転換に柔軟に対応できるという強みが、ここでは弱みになってしまう。

◆これからの職能給のあり方

年功給はフェードアウトの流れにあり、徐々にでしょうけどそうなるのが妥当かと思います。

「年の功」も一概に否定すべきものではありません。
しかし、評価すべきは年数や年齢そのものではなく、その結果として発揮されている能力・ノウハウ、会社への貢献度であるべきです。

一方職能給ですが、こちらはまだまだ通用するものだと思います。
変化の激しい時代、職能給のもつ柔軟さはこれからも大きなメリットになるのではないでしょうか?

・表に出ている能力を対象にする
・職能給以外の仕組みと組み合わせる
・若手・中堅の登用に対応させる

こうした課題をクリアすることが課題になっているかと。
このコラムでも、これからの職能給のあり方、作り方を考えていきたいと思っています。

 

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2019年05月14日

社員を採用したときの社会保険手続(6)~第3号被保険者届

採用した人に扶養家族がいる場合の手続きでお話ししていなかったことを2つします。


◆第3号被保険者該当届

入社者の扶養に入っている配偶者(被扶養配偶者)は、国民年金の「第3号被保険者」となります。

その場合、会社が「第3号被保険者該当届」を年金事務所に提出します。

加入している健康保険が協会健保であれば、先日「社員を採用したとき(4)」でお話しした「健康保険被扶養者(異動)届」と一緒に出せますが、健康保険組合の場合、別途年金事務所に上記届をしなくてはならないことがあります。

健康保険組合に確認のうえ、手続きを進めてください。

◆健康保険遠隔地被保険者証交付申請書

扶養家族が遠隔地(電車で2時間以上の距離)に住んでいる場合、その人のために遠隔地被保険者証を発行してもらいます。

協会健保の場合、保険証自体が1人1枚発行されるので、この手続きは必要ありません。

健康保険組合で、そのようになっていない場合は、上記手続きが必要になります。

 

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2019年05月14日

賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」④~年功給、職能給の問題点

前回まで、以下のようなお話をしてきました。

・賃金には、人を基準に決める属人給と仕事を基準に決める仕事給がある。
・属人給には年功序列給、能力給(職能給、以下能力給も職能給という)、仕事給には職務給、役割給がある。
・属人給のメリットは柔軟性である。このことが年功的定昇とあいまって柔軟な人材配置の実現、働く人の安心感につながっている。
・属人給のメリットを実現するには、「人員構成が若年層中心であること」、「能力のレベルがおおむね経験年数に比例していること」、「特定分野のスペシャリストより、複数の業務をこなせるゼネラリストの方が必要とされていること」の3つの前提条件が必要。

最後に述べた3つの前提条件が崩れてきており、年功序列型賃金は限界にきているように思います。
また、職能給も見直しが必要でしょう。

◆属人給のデメリットは?

属人給のデメリットとしてまず最初に挙げられるのが、「基準の曖昧さ」です。
このことが様々な問題につながっていくのです。

属人給の代表格である年功序列給がまさにそれでした。
年功序列給というと、同一「年齢」同一賃金と捉える向きがありますが、それは誤解です。
年功序列給でも差はつきます。ただ、その差が短期間では気がつかないほどの小さい差なのです。そしてこの小さい差が毎年積み上げっていき、定年までの長い時間をかけて選別が行われていくのが年功序列ということです。
このような「時間をかけた選別」の良し悪しは一概に言えませんが、問題は、差をつける基準が曖昧なことが多いということです。

素直に考えれば、「それなら曖昧にしなければいいではないか」となるのですが、1回の昇給でつく差がわずかなものであれば、手間暇かけて基準をつくり、手間暇かけて評価をする気にならなかったのだと思われます。

◆職能給の限界

それではいかんということで考え出されたのが、職能給でした。
これは実によく考えられた仕組みだと思いますが、基準が「能力」という捉えどころのないものにあったため、やはり曖昧さは払拭できませんでした。

実のところ職能給の本来のコンセプトは---
「職務に必要な保有している能力」
「職務を通じて発揮している能力」
---これらを基準にしています。

しかし、実際の設計や運用では、この「職務を通じて」という部分が曖昧になってしまっていました。
加えて「保有している能力」という、把握するのが難しいものを基準にしていたのも、曖昧さを助長していました。
特に、いわゆる「知識労働者」の場合、この問題は決定的な欠陥となっていたのです。

 

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2019年05月13日

社員を採用したときの社会保険手続(5)~標準報酬

社員を採用し、健康保険・厚生年金保険の資格を取得する際には、「標準報酬」を決めなくてはなりません。

これは、「みなし賃金」ともいうべきもので、賃金額の範囲に応じて設定されます。

たとえば、賃金額が210,000円~230,000円の範囲だったら、標準報酬は220,000円となっています。
この「220,000円」という金額を元に保険料が算定され、あるいは将来の年金額が計算されます。

賃金額と標準報酬の関係がどうなっているのかは、「健康保険・厚生年金保険標準報酬月額保険料額表」に出ています。


入社時、すなわち資格取得時には、賃金額と、それに対応する標準報酬月額を記載します。
(入社後も賃金額は変動します。その場合の手続きは追ってお話しします)。

この「賃金額」ですが、月給者であれば、月給額、すなわち、所定内賃金と所定外賃金額(時間外手当等)の見込み額、そして通勤手当1ヶ月分を合計します。

時間給や日給の場合は、1ヶ月の見込み額を計算して記載します。

 

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2019年05月13日

賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」③~年功序列はなぜ行き詰っているか

属人給のメリットは柔軟さにあると前回お話ししました。
これは、人事異動などで不慣れな仕事を担当することになっても賃金が下がらないということからきています。

このことが終身雇用慣行と相まって従業員の安心感につながり、腰を据えて業務や自己研鑽に取り組もうという動機づけになったのです。

また安心感や動機づけは、定期昇給という~かたちで毎年少しづつ賃金が上がる仕組みからもきています。
定期昇給は年功序列型賃金でみられる仕組みですが、能力給(職能給)にも存在します。毎年の「習熟」を賃金に反映させるということです。

ただしこのようなやり方が成り立つには、いくつか前提条件が必要です。

それは…
・人員構成が若年層中心であること
・能力のレベルがおおむね経験年数に比例していること
・特定分野のスペシャリストより、複数の業務をこなせるゼネラリストの方が必要とされていること
…この3つです。

高度成長期はこの3つの前提条件がほぼ揃っていたといっていいでしょう。
そのため、日本型人事、すなわち、年功序列型賃金と終身雇用が機能し、成長の推進力となったのです。

しかし時代とともに会社を取り巻く内外の環境は変わってきています。
上記の前提条件がすべて成り立っている会社はあまり見られなくなっています。

年功序列型賃金は行き詰まっているといっていいでしょう。

また、年功序列からの転換または修正を意図して作られた能力給(職能給)も見直しが必要です。
年功序列からの転換・修正ではあっても、「習熟」を反映させるという意図で毎年の定期昇給は行われましたし、降格・賃金ダウンはないという設計になっていましたから、年功的要素は依然として残っていましたし、実際の運用はかなり年功的になっていたからです。

 

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2019年05月10日

社員を採用したときの社会保険手続(4)~扶養家族の範囲

入社した社員に扶養家族がいる場合、健康保険の被扶養者に入れることができます。

もちろん、入社後、扶養家族が増えた場合も同じです。

この場合、「健康保険被扶養者(異動)届」を提出します。


では、被扶養者にはどのような人がなれるのでしょうか?

それは、以下の通りです。


(1)被保険者の直系尊属、配偶者(戸籍上の婚姻届がなくとも、事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、弟妹で、主として被保険者に生計を維持されている人 (同一世帯でなくてもよい)

※「主として被保険者に生計を維持されている」とは、被保険者の収入により、その人の暮らしが成り立っていることをいい、 かならずしも、被保険者といっしょに生活をしていなくてもかまいません。

(2)被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。

① 被保険者の三親等以内の親族((1)に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子

※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。


ここでいう「生計を維持されている」とは、次の要件を満たしているということです。

①被保険者と同一世帯に属している場合

年間収入が130万円未満(60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満。
(上記に該当しない場合であっても、年間収入が130万円未満(60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合がある)。

②被保険者と同一世帯に属していない場合

年間収入が130万円未満(60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない。

 

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2019年05月10日

賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」②~属人給(職能給、年功給)のメリットは

賃金の決め方には、「属人給」と「仕事給」があります。

◆属人給、仕事給とは

「属人給」とは、その人の属性、身につけたものを基準に賃金を決定する方式です。
次のものが代表的です。

・年功給:年功(年齢、勤続年数、毎年の功労の積み上げなど)によって賃金を決める
・能力給、職能給:身に着けた能力のレベルによって賃金を決める

一方「仕事給」は、その人が担当している仕事のレベルなどによって賃金を決定する方式です。

・職務給、役割給:担当している職務や役割のレベルによって賃金を決める
・成果給、業績給:達成した成果や業績によって賃金を決める

◆属人給(能力給、年功給)のメリットは柔軟さ

属人給のメリットは柔軟さです。

何が、どう柔軟なのでしょうか?

ここで、会社での人材活用のありかたを考えてみましょう。

採用された社員はどこかの部署に配属されますが、定年まで同じ部署のままとは限りません。
特に、規模が大きくなればなるほどそのような人は稀で、数年単位で部署異動を繰り返すことの方が一般的です。
部署を異動しても業務そのものは同じということもありますが、一方で、たとえば営業部から経理部など、全く異なる業務になることもあります。

このような場合、担当している仕事のレベルによって賃金が決まるのであれば、その人の賃金は下がります。
営業のベテランであっても、経理業務は初心者だからです。

もしこのようなことになったら、人事異動に応じる社員はいなくなります。
人事権を行使して強引に実行しても、不満が蔓延するでしょうし、労働条件の不利益変更という法的問題にもつながります。

事実上、ジョブ・ローテーションはできなくなります。

その点、「その人が身に着けたもの」が基準になる属人給であれば、担当する仕事が変わっても、賃金が下がることはありません。身に着けたものが変わるわけではないからです。

そのため、人事異動や職務転換といった人事施策を、会社は柔軟に行うことができます。
これが高度成長期にはとても有効に機能したのです。

 

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2019年05月09日

社員を採用したときの社会保険手続(3)

健康保険の資格を取得すると、健康保険証が全国健康保険協会(または健康保険組合)発行されます。

協会けんぽの場合、健康保険証が会社に届くまでには10日から2週間程かかります。

この保険証がないと、健康保険で療養を受けることができません。
(全額自己負担したうえで、後日療養費を請求するという方法はありますが)。

そのため、通院中であるなど、病院などで診療を受ける予定があるような場合は、「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」を年金事務所の窓口に提出して、「健康保険被保険者資格証明書」を交付してもらいます。

この証明書を病院などの窓口に提出すれば、保険証を出した時と同様、原則3割の自己負担で療養を受けることができます。

 

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2019年05月09日

賃金の決め方は「人基準」か「仕事基準」①

従業員1人々々の賃金をどうするか---悩ましい問題ですね。
毎年、鉛筆を舐めながら「Aさんは〇〇円」、「Bさんは△△円」という具合に決めている会社も少なくないと思いますが、このやり方だと、その時点では妥当だと思っても、2,3年たって全体を見るとなんだかよくわからないという姿になってしまいがちです。

そのような問題を回避し、賃金決定の合理性・納得性を高めるために賃金制度をつくるわけですが、そのときに押さえておきたい大事な要素があります。
それは、賃金を「人基準」で決めるか「仕事基準」で決めるかということです。

つまり、「この人にいくら支払うか」と考えるか、「この仕事をしている人にいくら支払うか」と考えるかということ。

これを見て、疑問を感じた方もいらっしゃるかもしれません。
「必要な能力をもっている人に仕事を割り当てている。だから、どちらになっても同じではないか?」と。

その通りです。
ただしそれは、仕事のレベルと担当者のレベルのバランスが取れている、いわゆる「適材適所」が実現している場合にのみ、あてはまることです。
現実には、様々な事情でバランスが取れていないことがほとんどといっていいでしょう。
また、意図的にアンバランスな状態をつくることもあります。
たとえば、その人を育てるために、本人の現在のレベルより高いレベルの仕事を割り当てる場合です。

人と仕事はアンバランスな状態にあるということを前提にすると、「人基準」か「仕事基準」かによって賃金は異なった姿になります。

では次回、人基準賃金と仕事基準賃金の中身を見ていきましょう。

 

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2019年05月07日

社員を採用したときの社会保険手続(2)

社員を採用したら、その人を健康保険・厚生年金保険に加入させます。

これを「資格取得」といい、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を資格取得日(入社日)から5日以内に提出します。

提出先は事業所を管轄する年金事務所ですが、健康保険組合に加入している場合は、健康保険の分は健康保険組合に提出します。
この場合、年金事務所に提出する資格取得届の備考欄の「70歳以上被用者該当」に○印をつけます。
また、厚生年金基金に加入している場合は、厚生年金保険の分を基金にも提出します。

また、入社者の状況に応じて、以下の書類も必要になります。

・扶養家族がいる場合:「健康保険被扶養者(異動)届」

・配偶者を扶養している場合:「国民年金第3号被保険者資格取得届」


※尚、資格取得の手続きが大幅に遅れ、60日以上経ってしまっているような場合、ペナルティとして次の書類を添付しなくてはなりません。手続は5日以内が原則ですが、諸般の事情で送れてしまったとしても、できるだけ早く済ませるようにしましょう。

・被保険者が法人の役員以外の場合
賃金台帳の写し及び出勤簿の写し(事実発生日の確認ができるもの)
 
・被保険者が株式会社(特例有限会社を含む。)の役員の場合
株主総会の議事録または役員変更登記の記載がある登記簿謄本の写し(事実発生日の確認ができるもの)

 

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2019年05月07日

社員が入社するまでに決めておくべきことは

社員が入社するまでには、いろいろと決めておくべきことがあります。
会社によって異なるところも多々ありますが、どの会社でも最低限決めておかないといけないのは次のようなことですね。

・入社日
・労働条件(賃金、労働時間・休憩、休日、休暇)
・配属先、役職

◆入社日

当たり前のことのようですが、なかなか決まらないということも珍しくありません。
新卒の場合なら4月1日とするのが一般的で、特別な事情がなければ、それ以外の日になるということはあまりないでしょう。
しかし中途採用の場合、前職の退職がなかなか決まらないなど、様々な事情がからんできます。
受け入れ側の体制の問題もありますね。
したがって、中途採用内定者や配属予定先と密に連絡をとりながら入社日を決めていく必要があります。

◆労働条件

新卒であれば賃金は学歴別に定められた初任給が適用されるでしょうし、労働時間などもほぼ一律でしょう。
しかし中途採用の場合は、その人の経験、能力などによって個別に賃金を決めることになります。
労働時間なども、職種、配属先などによって異なるかもしれませんね。(この点は新卒も同様ですが)。
また、パートタイマーなどの場合は、労働時間、勤務日なども様々なパターンがあり得ます。

◆配属先、役職

中途採用の場合、具体的な必要性に基づいて募集をかけることが一般的なので、募集の時点で配属先、役職が決まっていることが多いでしょう。
しかし新卒の場合、そうとは限らない、というより、そうでないことの方が多いと思われますので、全体の人員計画などとの関係で決めていきます。

 

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2019年04月29日

社員を採用したときの社会保険手続(1)

社員を採用した時に会社がやるべきことは、保険に加入させることです。

保険とは、次の3つになります。

・健康保険
・厚生年金保険
・雇用保険

労災保険は?と思われた方もいるかもしれません。
もちろん、会社に入ればその人は労災保険の適用対象になるのが原則ですが、この保険は、会社(事業所)自体が加入するだけで、社員個々が加入するという形になっていないのです。

上記3つの保険については、「資格取得」という手続きを取ります。
そのための所定の用紙があるわけですが、一方で、本人が持っている書類もあります。
手続きの際にはこれも必要になりますので、入社の際に提出してもらいます。

それは次の通り。

・厚生年金保険関連:年金手帳、基礎年金番号通知書
・雇用保険関係:雇用保険被保険者証

ただし、雇用保険被保険者証は、中途採用など前職がある人だけです。
新卒で会社勤めの経験のない人は持っていません。

資格取得手続きは、健康保険・厚生年金保険は入社から5日以内、雇用保険は採用月の翌月10日までとなっていますので、上記の書類も、それに間に合うように提出してもらいます。

 

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2019年04月29日

就業規則の実際(49)~懲戒(1)

懲戒規定はほとんどの会社が設けている

従業員が何か不始末をした場合、会社はそれに対して、譴責・出勤停止・減給・降格・諭旨解雇・懲戒解雇などの処罰をします。
このような会社の人事を「懲戒」といい、懲戒をする権限を「懲戒権」といいます。


会社が組織としての秩序を保ち、働く人が自分の就業環境を妨げられないようにするためには、それを乱す従業員にはしかるべき罰を与えなくてはなりません。
そのため、懲戒謙は会社が当然に有する権限です。
判例も「労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守する義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るために、その運用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種の制裁別である懲戒を課することができる」として、会社の懲戒権を認めています。

 

何でもありではない

だからと言って、会社は従業員に、自由自在に懲戒処分をすることができるわけではありません。

労働契約法は、第15条で、 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定めています。

 

懲戒処分の要件は

では、どのようにすれば、会社の懲戒処分は有効となるのでしょうか。
ポイントは次の3点です。

1)就業規則などに定めがあること
労働基準法はその第89条で、「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を就業規則に定めなければならないと定めています。
つまり、次の事項を定めておかなければ、会社は懲戒処分をすることはできないのです。

・懲戒処分の対象となる行為
就業規則に「何をしたら懲戒処分の対象になるのか」を定めておかなくてはなりません。ここに定められていない行為を従業員がやっても、それを理由とした懲戒処分は原則としてできません。
そこで無断欠勤○日以上、故意または重大な過失で会社に損害を与えた、など、懲戒処分の対象になる行為を定めます。
ただ、起こりうる事象すべてを具体的に記載することは不可能なので、ある程度抽象的な表現でも問題ありません。
また、「その他前各号に準ずる行為のあったとき」という包括的規定も有効です。

・懲戒処分の種類
譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇など、処分の種類を定めます。
どのような処分を設けるかは会社が任意に定めることができます。
しかし、就業規則にあらかじめ定められていない処分を課することはできません。
実際に事案が発生してから、新たな処分を考えるということは許されないのです。

2)懲戒処分と処分の対象となった行為の均衡が取れていること
軽微な違反行為に対して重い処分を課すことは、権利の濫用として無効となります。ただし、軽微な行為であっても、それを繰り返した場合は、重い処分を課すことも可能です。

3)懲戒処分の手続きを遵守すること
就業規則等に懲戒処分を行う際の手続が規定されている場合、それを遵守しなくてはなりません。もしそれを怠った場合、仮に違反行為が重大なものであっても懲戒処分が無効とされる可能性もあるので、要注意です。

 

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2019年03月04日

就業規則の実際(48)~休職(2)

メンタルヘルス障害による休職への対応

休職制度について最近特に問題となっているのは、メンタルヘルス障害を理由に休職した者の復職後の扱いです。
うつ病などのメンタルヘルス障害は完治したか否かの判断が難しく、たとえ復職してもしばらくすると再び休職を余儀なくされるケースが少なくありません。

このような事態を招かないようにするためには、復職時に会社の指定する信頼のおける専門医に診断をさせたうえで、その診断書等をもとに会社が「復職させてもよいのかどうか」を慎重に判断することが大切です。
安易に復職させた結果、病状が悪化したような場合には、安全配慮義務違反に問われるおそれもあるので注意が必要です。

 

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2019年03月04日

就業規則の実際(47)~休職(1)

休職制度とは

休職制度を設ける会社は少なくありません。

休職制度とは、社員を労務に従事させることが不能もしくは不適当な場合に、その社員との労働契約関係を維持しつつ、一定期間、就労を一時的に免除もしくは禁止する措置をいいます。
休職の主な事由として、次のようなものがあげられます。

・私傷病
・公職就任
・他社出向

休職制度は、労働者にとって一定期間解雇が猶予されるというメリットがあります。他方、使用者にとっても労働者が傷病等を被った場合の対応が明確になるという意味で有益な制度といえるでしょう。

 

私傷病休職

休職で一番多いと思われるのが、私傷病による休職です。

休職に入る場合の要件は、次のようになります。
・一定期間(3ヶ月など)病気欠勤した
・医師による診断書が出ており、一定期間の療養を要する旨が書かれている

この「一定期間の病気欠勤」ですが、通常は連続欠勤を指します。
では、断続的な欠勤、つまり出勤と欠勤を繰り返しているような場合はどうするか?
この場合、欠勤日数が累積して一定日数以上に達したら休職とするのがいいでしょう。つまり、出勤日数が連続○日以内の場合は、出勤前後の欠勤を通算するというやり方にするのです。

 

休職期間

休職期間はどのぐらいが適当かは、一概に言えません。
会社の体力などを念頭に、可能な範囲で設定します。
休職事由や勤続年数に対応して設定するのが一般的です。

 

復職

病気休職期間が満了したにもかかわらず病気が治癒していない場合、原職への復帰が困難なこともあるでしょう。

復職は原則として、通常勤務可能な状態に回復することが要件となります。
ただし、判例は「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十分にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易度等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性がると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当」としています。

つまり、原職復帰が不可能な状態だとしても、配置転換が可能であれば、それを実現することによって復職させるべきとしているわけです。

 

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2019年02月28日

就業規則の実際(46)~賃金(7)~賃金の非常時払い、端数計算

賃金の非常時払

賃金は、「一定期日」に、「毎月1回以上」支払えばよいこととされています。
前払いに応じる義務はありません。
しかし、病気など不時の出費が必要になったときは、支払日前であっても、会社は賃金を支払わなければなりません。
これが、「非常時払い」というもので、労働基準法第25条に、次のように定められています。

「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」


「既往の労働に対する賃金」ですから、実際に労務の提供があった分、つまり支払う前までの労働に対する分を支払えば足ります。
もし月給制であれば、支払前までの分を日割計算して支払うことになります。

この非常時払いの対象になるのは、「出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合」です。
「その他厚生労働省令で定める」とは、次のような場合を指します。

 

  • 労働者の収入によって生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合
  • 労働者又はその収入によって生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合
  • 労働者又はその収入によって生計を維持する者がやむを得ない事由により1週間以上にわたつて帰郷する場合

賃金の端数計算

賃金は原則として、全額を支払わなくてはなりません。
所得税など法令で定められたものや、財形貯蓄積立金など労使協定で定めたものを天引きした場合、天引き後の金額を全額支払うのが原則です。

しかし、1円単位まで支払うのは実務的に煩雑なことがあります。
特に、現金で支払う場合は、支払事務も大変です。

そこで、通達で、次のような場合は問題ないとされています。(ただし、就業規則に定めが必要です)

・1ヵ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合、50円未満を切り捨て、50円以上を切り上げる。
・1ヵ月の賃金支払額に生じた1000円未満の端数を翌月に繰り越して支払う。

 

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2019年02月28日

就業規則の実際(45)~賃金(6)~休業手当と平均賃金

休業手当

労働基準法第26条には、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」という規定があります。

これを「休業手当」といいます。

 

使用者の責に帰すべき事由

ここがポイントです。
どこまでが、「使用者の責に帰すべき事由」に該当するのでしょうか?

まず、本人の責に帰すべき事由によるものは除かれます。
私傷病、懲戒処分などによる休業が該当します。
ただし、懲戒処分の場合、休業させる(一般に「出勤停止」といいます)ということが、処分の対象となった行為に比べて重過ぎるような場合は、無効となります。

本人の責に帰すべき事由以外の休業の場合は、不可抗力によるもの以外は「使用者の責に帰すべき事由」になります。
経営不振などで一時休業をする場合なども、「使用者の責に帰すべき事由」になりますので、休業手当の支払が必要です。

 

一部休業の場合

受注量が急減したため、半日だけ操業した場合、会社は、当然のことながら、半日分の賃金を支払わなければなりません。
この場合、休業手当との関係はどうなるのでしょうか?

半日操業ですから、残りの半日分は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」ということになります。
そのため、この日についても、休業手当の支払義務が会社に生じます。
そして、その額は、平均賃金の100分の60と、半日分の賃金との差額となります。

 

平均賃金

平均賃金は、算定事由の発生の日(賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日)から遡って3ヶ月間に支払った賃金の総額を、その期間の総日数で割って算定します。

賃金総額には、残業手当、通勤手当等、その間に支払った賃金すべてが含まれます。
ただし、賞与など3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金や臨時に支払われる賃金は含みません。
また、6か月分の通勤定期券を現物支給した場合は、定期券の額を月割にします。

また、「その期間の総日数」とは、暦日です。



休業手当に関する事項も必ず就業規則に定めるようにします。
記載がない場合、休業の場合でも賃金の全額支払いを求められるリスクが発生しますので要注意です。

 

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2019年02月27日

就業規則の実際(44)~賃金(5)

前回、賃金支払については労働基準法に、次の「5原則」が定められているというお話をしました。

1)通貨払いの原則
2)直接払いの原則
3)全額払いの原則
4)毎月払いの原則
5)一定期日払いの原則


今回は「全額払いの原則」、「毎月払いの原則」、「一定期日払いの原則」についてお話します。

 

全額払いの原則

賃金は全額本人に支払わなければなりません。
いわゆる「ピンはね」は違法です。
日雇い派遣では、日給から「データ装備費」と称する経費が差し引かれていたことが問題になりました。これは、その費目自体の不透明さとともに、全額払いの原則に反する疑いが問題となったのです。


ただし、全額払いには次のように例外が2つあります。

①法令に定めのあるもの
源泉所得税や社会保険料などです。

②労使協定のあるもの
過半数労働組合または過半数代表者と書面で協定を結んだものについては、賃金からの控除が可能です。
社員食堂の利用料、財形貯蓄などの積立金などが一般的です。

 

毎月払いの原則

賃金は毎月1回以上支払わなくてはなりません。
したがって、年俸制であっても、実際の賃金支払は毎月行わなくてはなりません。

ただし、賞与や臨時の賃金は除きます。
たとえば、一定期間の勤怠状況に応じて支払う「精勤手当」などは、1ヵ月を超えて算定する方が適切であれば、毎月支払わなくても構いません。しかし、その必要性がなく、ただ毎月払いの適用を回避するためだけである場合は、違法となります。

 

一定期日払いの原則

賃金は「毎月○○日」というように、期日を定めて支払わなくてはなりません。
日にちが特定されていなくても、たとえば、週給制で「毎週金曜日」とか、月給制で「毎月末日」という定め方は問題ありません。
しかし、月給制で、「毎月第3金曜日」とか、「毎月20日から25日の間」という定め方はできません。

また、支払日が休日になる場合、支払日を繰り上げ・繰り下げすることは問題ありません。


以上、賃金支払の5原則のお話をお話してきました。
これらは賃金にかかる基本的なことがらですので、遵守することはもちろんのこと、就業規則にも定めなくてはなりません。

 

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2019年02月27日

就業規則の実際(17)~服務(7)

ハラスメントとは

ハラスメントには様々な類型がありますが、職場でみられる代表的なものは次の3つです。

・セクシュアル・ハラスメント:性的嫌がらせ
職場において行われる性的な言動に対するその雇用する従業員の対応により当該従業員がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該従業員の就業環境が害されること

・パワー・ハラスメント:職権を背景にする
職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与えること

・マタニティ・ハラスメント
妊娠・出産、育児休業等を契機として解雇その他の不利益な取扱いを行うこと。

 

ハラスメントの特徴

これらハラスメントに共通するのは以下の4点です。

①閉ざされた空間で起こることが多い

②個人(または少数派)への不当な攻撃

③職場のコミュニケーション不在が背景

④精神障害など被害の深刻化をもたらす

 

ハラスメント防止

会社はまず、就業規則にハラスメント行為を禁じる旨を定める必要があります。

しかし、就業規則に定めただけでは、会社として対策を十分に取ったとはいえません。

次のような措置を具体的に取る必要があるのです。

①事業主の方針の明確化およびその周知・啓発

②相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③事後の迅速かつ適切な対応

④上記措置に併せて実施すべき措置

 

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2019年02月26日

就業規則の実際(43)~賃金(4)

直接払いの原則

賃金は直接本人に支払わなくてはなりません。
口座払いの場合は、その口座が本人のものであれば問題ありませんが、注意が必要なのが現金払いの場合です。
直接払いですから、代理人に支払うことも禁じられています。
賃金支払日に本人が会社を休み、代理人が受け取りに来ても、絶対渡してはなりません。たとえ委任状があっても、です。

また、賃金の差し押さえも、裁判所の命令などの場合を除いて禁止されます。

ただし、「使者」への支払は認められています。
これは、本人の支配下にあると認められる妻や子が本人の印鑑を持参し、本人名義で受領するような場合を指します。

しかし、これは個人的な感想ですが、「妻」、「子」であることを誰が証明するのかという点が問題ですよね。
その社員と、相当親しいお付き合いをしていればともかく、そうでなければ、「私は御社の○○の妻です」と言ってきても、それをどう確認するのか?
住民票などの血縁関係を証明する書類と、本人確認できる証明書(免許証など)を見せてもらわないと、迂闊に払うことはできません。

もし会社が、使者にならない人に支払ってしまったら、改めて本人に賃金を支払わなくてはなりません。

こうしたことを考えると、賃金はできるだけ口座振込みにするのが良いように思います。(もちろん、本人同意が前提です)

 

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2019年02月26日

就業規則の実際(42)~賃金(3)

賃金支払の5原則

労働基準法では、賃金支払に関する規定をおき、賃金が確実に労働者の手元に渡るようにしています。

これを「賃金支払の5原則」といいます。

1)通貨払いの原則
2)直接払いの原則
3)全額払いの原則
4)毎月払いの原則
5)一定期日払いの原則


労働基準法
第24条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

②賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金については、この限りでない。

 

通貨払いの原則

賃金は現金で支払わなくてはなりません。
現実には、口座振込みにしている会社が多いと思いでしょう。
しかし、念頭におかなくてはならないのは、口座払いはこの「通貨払いの原則」の例外だということです。

ではどのような場合に認められるかというと、次の通りです。
①本人の同意がある
②本人名義の口座に振り込む
③賃金支払日の午前10時までに引き出し可能である

「同意」と言っても、改めて「同意書」を書いてもらう必要まではありません。
たとえば本人が、「給与振込み申請書」などの用紙に口座番号などの必要事項を記入して提出すれば、それで同意となります。

最大のポイントは「本人名義の口座」という点です。
ここはきちんとチェックしましょう。


また給与を現物支給する場合は、労働組合との労働協約が必要です。
(労使協定ではありません。)

最近は少なくなりましたが、業績不振で給与の代わりに自社製品を支給するということを、会社が一方的にやることはできません。

これは、誰が考えても問題だということが分かります。
間違えやすいのが、次の2つ。

<小切手>
これも現物支給になります。
ただし、退職金については一定の要件を満たせば小切手払いが認められます。

<通勤定期>
通勤手当の支給に変えて通勤定期を会社が購入して従業員に渡すのも、現物支給の扱いになります。
従業員の便宜をはかっているつもりでも、労働協約なしにやると、法違反となりますので注意してください。

労働協約は労働組合でないと締結できません。(この点が、過半数代表者が締結できる労使協定と異なる点です)。
したがって、労働組合のない会社は、定期券の現物支給はできません。

 

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2019年02月26日

就業規則の実際(41)~賃金(2)

賃金の法的性格

賃金は法律でどのように定義されているのでしょうか?
労働基準法第11条は、次のように定めています。

「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」

つまり、賃金とは、次の2つの条件を満たすものを指します。

・労働の対価である
・使用者が労働者に支払う

「労働の対価」というのは、必ずしも、成果や貢献度に対応して支払われるものとは限りません。
就業規則、労働契約などで支給要件が明確に定められていて、労働者に請求権があるものはすべて賃金となります。

<出張旅費・日当>
支給条件は明確ですが、「実費弁償的なもの」は賃金とはなりません。
したがって、出張旅費や日当は、賃金とはなりません。

<福利厚生的なもの>
支給条件が不明確で任意的・恩恵的なものは賃金とはなりません。
ただし、福利厚生的なものであっても、就業規則などで支給条件が明確に定められているものは賃金となります。たとえば、就業規則に定めのある結婚手当などが該当します。


<退職金>
退職金でも、就業規則や退職金規程などで支給条件が定まっているものは、賃金となります。

 

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2019年02月05日

就業規則の実際(40)~賃金(1)

賃金の重要さは、改めて言うまでもないぐらいのことでしょう。

働く人にとっては、賃金が生活の唯一または最大の糧です。
そのため労働基準法でも賃金については、厳しい規制をかけています。
この点については、またお話します。

一方、会社にとっても賃金は、人材マネジメント上の重要なツールです。
ここをいかに設計・運用するかで、賃金が、「利益を圧迫するコスト」か「価値を生み出す投資」になるかが決まります。

人事戦略、人材マネジメントと賃金について書き始めると、それだけでたいへんなボリュームになってしまいます。
「就業規則講座」という本題からはずれていきますので、これについては近日、別のコラムを立ち上げて、いろいろとお話していきたいと思っています。

ここでは、賃金とは何かということをおおまかに俯瞰しておきましょう。

 

賃金決定の「3原則」

従業員1人1人の賃金をどうやって決めるのかは、会社によってさまざまです。
ただ、どんな方法にも共通の原則というのがあります。それを「賃金決定の3原則」といい、次の3つになります。

1)労働対価の原則
2)生活保障の原則
3)労働力の市場価格

普段は、このようなことを意識することはありません。しかし、この3原則を無視して賃金体系をつくったり、賃金額を決めることはできないのです。
意識する・しないにかかわらず、賃金はこの3原則の枠組みで決まります。

 

賃金の公平性

賃金を決める際に、3原則以外に考えなくてはならないのが、「内部公平性」と「外部公平性」です。
これは、自分の賃金額が社内外の水準と比べて妥当と感じるか不公平と感じるかということです。

 

会社の支払い能力

賃金額を決定する要因は以上の通りですが、何であれ賃金総額(正確には人件費総額)は会社の支払能力を超えることはできません。

 

賃金の決定基準~賃金体系

賃金の決定基準を、「賃金体系」といいます。
もちろん、賃金を決める要素は、ひとつだけとは限りません。担当している職務の価値や本人の能力を基本に、需給関係や生活を勘案して決めるのが現実です。
ただ、その中で、一番基本になる、会社としてもっとも重視する基準があります。(もしなければ、新たに作ります)。この基準を何にするかが、賃金体系ということになるのです。
したがって賃金体系は、前述の「格付制度」とリンクするのが、もっとも理にかないます。

代表的な賃金体系は、次の通りです。

役割給:担っている役割のレベル
職務給:担当している職務のレベル
職能給:身につけた能力のレベル

 

均衡処遇、同一労働同一賃金

 

いま一番重要でホットなテーマですね。
この問題は別にコーナ-を設けてお話していきます。

 

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2019年02月05日

就業規則の実際(39)~退職、解雇(4)

解雇に関する労働基準法の規制

解雇については、労働基準法にいくつか規制があります。

 

解雇制限

使用者は、次のような場合、労働者を解雇してはなりません。

・労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間
・産前産後休業期間及びその後30日間

ただし次の場合を除きます。
・使用者が、労基法第81条の規定によつて打切補償を支払う場合
※打切補償:業務災害で療養開始後3年を経過しても傷病が治らない場合に、使用者が平均賃金1200日分の打切補償を支払えば、以後は補償をしなくてもいいという制度です。
労働者が労災保険の傷病補償年金を受けて3年経過した場合も含みます。

・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合(所轄労働基準監督署の認定が必要)

 

解雇予告

使用者は、労働者を解雇しようとする場合、30日以上前に「解雇予告」をしなければなするか、平均賃金30日分以上の「解雇予告手当」を支払わなければなりません。
ただし、解雇予告の日数は、解雇予告手当を支払った日数分を短縮することができます。

また、次の場合で、所轄労働基準監督署の「解雇予告除外認定」を受けた場合除きます。
・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
・懲戒解雇など労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合

なお、次の者は解雇予告の適用が除外されます。

・日日雇い入れられる者(1ヵ月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
・2ヵ月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
・季節的業務に4ヵ月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
・試用期間中(14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)

 

退職時等の証明

使用者は労働者が退職証明を請求した場合、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
証明すべき項目は次の通りです。

・使用期間
・業務の種類
・その事業における地位
・賃金
・退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)

また、労働者が解雇予告をされた日から退職の日までの間において、解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
ただし、解雇の予告がされた日以後に、労働者がその解雇以外の事由により退職した場合は、退職の日以後、証明書を交付する必要はありません。

なお、これらの証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはなりません。
また使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはなりません。

 

金品の返還

使用者は、労働者の死亡又は退職の場合で、権利者の請求があった場合は、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。

また、賃金又は金品に関して争いがある場合、使用者は、異議のない部分を7日以内同項の期間中に支払い、又は返還しなければなりません。

 

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2019年02月01日

就業規則の実際(38)~退職、解雇(3)

就業規則の作成には、さまざまなノウハウがあります。

・会社の規模・体力
・業種・業務実態
・人事政策
・従業員構成

こういう点をふまえて、一言一句吟味して作ります。
そうしないと、会社の実態に合わない、使い勝手の悪い就業規則ができあがってしまいます。

労務トラブルの中でも、退職・解雇にかかるものはトップクラスです。
(他にはハラスメント、メンタルヘルスがありますが)

そのため、就業規則にも、退職・解雇に関する事項は特に注意して定める必要があります。

就業規則作成講座、今回も退職・解雇に関するお話です。

 

いわゆる「リストラ解雇」

会社の経営上の理由で、従業員を解雇せざるを得ないことがあります。
いわゆる「リストラ解雇」。
やりたくない話ですが…

さて、この整理解雇を実施する場合は、しかるべき要件があります。

これを「整理解雇の4要件」と」いいます。

この要件を満たしていないと整理解雇は無効とされる可能性が大です。

 

判例が元

この「整理解雇の4要件」は、判例で示された考えで(東洋酸素事件・1979年東京高裁)、その後の裁判でも、これを踏襲したものが多く見られます。

労働契約法でも、これを法文化することが検討されましたが、見送りとなりました。
「4要件を踏襲した判例が多く見られる」のは事実ですが、一方で、この要件にこだわらずに判断している判決も見られ、確立した判例法理とまでは言えないといことからだと思われます。

とは言え、4要件が解雇有効・無効の重要な判断要素であることは確かです。
実務上はこの4要件を無視することはできません。

 

整理解雇の4要件

次の通りです。

①人員削減の必要性
②解雇回避の余地がないこと(他部署への配転などによって解雇を回避する努力を尽くしていること)
③対象者の選定基準の合理性(基準が客観的・合理的であること)
④解雇手続の妥当性(労使協議、労働者への説明等の手続を踏んでいること)


整理解雇は、実施する側・される側ともに、相当な痛みを感じる行為です。
される側にとっては、死活問題です。
会社にとっても、様々な傷跡が残ります。

もし、やらざるを得なくなったら、誠意をもって、十分な理解が得られるような努力をしましょう。

 

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2019年02月01日

就業規則の実際(37)~退職、解雇(2)

解雇権の濫用は許されない


労働契約法第16条には、解雇に関して次のような定めがあります。

(解雇)
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。


いわゆる「解雇権濫用の法理」と言われるものです。
元々労働基準法第18条の2にあった条文を、労働契約法に移したものです。

ここにある通り、解雇が有効とされるには、次の2つの条件を満たしていなくてはなりません。

・客観的に合理的な理由がること
・社会通念上相当であること

 

「客観的に合理的な理由」とは

「合理的な理由」には、次のようなものが考えられます。
・労働者の能力不足
・労働者の服務規律違反等の不始末
・会社の経営上の必要性によるもの
・会社の解散
・ユニオンショップ協定等の労働協約の定めによるもの

 

「社会通念上相当である」とは

「相当である」とは、解雇の事由と、解雇という処分の間のバランスが取れているということです。
合理的な理由は確かにあるが、解雇までやってしまうのは行き過ぎという場合は、「相当でない」となります。

これの判断基準として、次の点を検討し、判断します。

・就業規則違反があった場合、それを会社が知りながら放置していなかったか、また、適切な注意、指導、監督をしていたか
・本人の不適格性是正のために指導や人事異動等の努力を会社はしたか
・本人の能力不足や勤務態度不良について教育・指導をしたか
・他の処分との均衡は取れているか
・整理解雇の場合、「整理解雇4要件」に則っているか
・解雇に不当・不純な動機はないか

 

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2019年01月31日

就業規則の実際(36)~退職、解雇(1)

就業規則作成講座、今回から数回に渡って、労働契約の終了、すなわち、退職、解雇、契約期間終了についてお話していきます。

 

労働契約の終了には3種類ある

労働契約の終了とは、何らかの理由で従業員が会社を辞めることを指します。
これには様々なパターンがありますが、分類すると次の3つになります。

1)退職
2)解雇
3)契約期間満了

退職とは、次のような形で労働契約を終了させることをいいます。
・会社と働く人が合意の上で労働契約を終了させる
・定年などあらかじめ決められた条件を満たしたために労働契約を終了させる

一方、解雇とは、会社側の意思で一方的に労働契約を終了させることをいいます。

契約期間満了とは、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を結んでいる場合の、労働契約期間が到来し、雇用関係が終了することです。

 

退職、解雇の主なパターン


<退職>
・合意退職(労働者の退職願を会社が受理した場合など、双方合意の上での退職)
・無断退職(労働者の一方的な退職)
・有期雇用契約者の契約期間満了
・休職期間満了
・定年退職
・死亡・行方不明

<解雇>
・普通解雇(勤務成績不良などやむを得ない事由による解雇)
・整理解雇(経営上の事由による解雇)
・懲戒解雇(懲戒処分としての解雇)
・諭旨解雇(懲戒処分だが、懲戒解雇より軽い場合の解雇)
・有期雇用契約の更新を繰り返している労働者に対する契約更新拒否
・試用期間中または試用期間満了後の本採用拒否
・採用内定取消


◆解雇には様々な制約がある

退職も解雇も、労働契約の終了という点では同じですが、法律上の扱いはまったく異なります。法律や判例は解雇を厳しく制限しています。

労働契約を終了させるということは、会社、働く人双方にとって重要なことですが、特に働く人にとっては、最大の収入の道がなくなるわけですから、ひときわ重大な意味をもちます。

そのため、法律、判例は、解雇について様々な条件を課しています。

 

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2019年01月31日

就業規則の実際(35)~人事(4)~休職

休職制度とは

休職とは、何らかの理由で従業員が労務不能となった場合に、ただちに退職とはせず、一定期間就労を免除する制度です。

休職の主な事由として、次のようなものが上げられます。

就業規則には、想定しうるものを規定するようにします。

・私傷病
・公職就任
・他社出向
・留学、長期研修


休職制度それ自体は、法的義務ではありません。
ただ、働く人にとって休職制度は、労務不能となっても一定期間は雇用が維持される、「退職猶予期間」となります。

また、会社にとっても、人材流出を防ぐことができる制度になります。

休職制度は、労使双方にとってメリットのある制度と言えます。

 

私傷病休職制度設計のポイント

休職制度の中でも、注意が必要なのは私傷病休職です。
休職事由の発生をコントロールすることができませんから。
特に、近年増加している、メンタルヘルス障害の場合、病気という状態にいたっているのか、そして回復したといえるのか、いずれも判断が難しい場合が少なくありません。

以上から、休職制度をつくる場合、次の点を十分に検討し、就業規則に記載する必要があります。

・休職判定(欠勤期間がどのぐらいで休職とするか)
・断続的な欠勤の取扱
・休職期間
・休職期間の人事取扱(賃金、賞与、勤続期間への算入・不算入、人事評価など)
・復職判定
・復職後の配属、リハビリ勤務
・再発の場合の取扱

 

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2019年01月30日

就業規則の実際(34)~人事(3)~転籍

転籍とは

働く会社が変わる、つまり使用者が変わるような人事に、出向があります。

ただし、出向の場合は、元の会社との雇用関係は維持したままです。
そのため、このような形態を特に「在籍出向」などとも言います。


それでは、元の会社との労働契約を解消する場合は、どうなるのでしょうか?
このような形態を、転籍、あるいは移籍出向といいます。

このようなことが想定される場合、就業規則に規定することがまず必要です。

 

転籍を一方的に命じることはできない

転籍の場合、元の会社を退職して、新しい会社に移るということになります。
退職という重大な身分変更を伴う命令を、会社は一方的に下すことはできません。
本人の同意が必須です。
出向(在籍出向)のように、就業規則等による包括的合意というわけにはいきません。


会社分割法制による会社分割の場合は、労働契約は、本人の同意がなくても新会社に承継されます。
ただし、新会社の営業に無関係だった労働者の場合や、会社分割法制によらない分割の場合は、本人の同意が必要です。

 

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2019年01月30日

就業規則の実際(33)~人事(2)~出向

出向とは

人事異動というのは、同じ会社の中で、働く部署や勤務地が変わることをいいます。

それでは、働く会社も変わる場合は、どうなるのでしょう。

このような人事を、「出向」といいます。
出向には、元の会社との労働契約はそのまま継続する「在籍出向」と、元の会社との労働契約は終了する「移籍出向」があります。
一般に前者を「出向」、後者を「転籍」と呼んでいます。

今回はこのうち、「在籍出向」(今後、単に「出向」と称した場合、この在籍出向を指すことにします)のお話をします。


この出向という形態では、働く人は二重の労働契約を結びます。
ひとつは、元の会社との労働契約。
これは前述の通り、継続します。

もうひとつが、出向先の会社との労働契約です。

出向命令を受けた人は、元の会社と、出向先の会社両方と労働契約を交わし、出向先の指揮命令の元で仕事をすることになります。

 

出向は会社が一方的に命じられるのか?

人事異動と異なり、出向は、これまでの労働契約に加え、新たな労働契約を結ぶ形態です。そして、労務を提供する相手、つまり使用者が変わります。

したがって、会社は、このような命令を一方的に出すことはできず、本人の同意が必要となります。

ただし、個別の同意までは求められていません。

出向は、人事異動のように、「労働契約に付随した会社の当然の権限」とはなりません。
しかし、発令の都度、個別合意を要するものではなく、労働契約締結時に包括的な合意があれば、出向命令は有効になります。

したがって、就業規則や労働契約に、会社が出向を命じることがある旨が記載されている必要があります。

 

労働条件等への配慮が必要

また、それだけでは十分とはいえません。
出向の結果、労働条件が大幅に下がるような場合、いくら就業規則に出向を命じる旨が定めてあっても、「包括的な合意があった」とみるわけにはいかなくなります。

したがって、出向中の労働条件に配慮した詳細な規定を設ける必要があるのです。

 

権利の濫用は許されない

以上から、出向命令が有効とされるのは、次の2つの条件を満たしている場合です。

1)就業規則や労働契約に、会社が出向を命じることがある旨が記載されている
2)出向中の労働条件に配慮した詳細な規定がある


ただ、このような条件を満たしている場合でも、権利の濫用は許されません。
この点が、労働契約法第14条に、次のように定められていますので、押さえておきましょう。

(出向)
第14条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

 

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2019年01月29日

就業規則の実際(32)~人事

就業規則作成講座、今回から「人事」に関するお話をします。

会社は、従業員に対して、さまざまな人事発令をします。
人事異動、昇進・昇格、出向、転籍など。

これらは、いわゆる「人事権」に基づいて、会社が行う行為です。
しかし、人事権といえども、会社が自由自在に行使できるわけではありません。
それなりの根拠と合理性が必要です。
ここを踏まえないと、トラブルに発展する危険があります。

 

人事権の根拠

会社に入社すると、どこかの部署に配属されます。
正社員の場合、定年まで入社時の部署で過ごすということは稀で、定期、あるいは不定期に部署を移ります。

また、部署が変わっても職種は変わらない場合もあれば、部署も職種も変わる場合もあります。
(たとえば、前者は職種は営業のまま部署を移る場合、後者は営業部から人事部に移る場合を指します)

これを、「人事異動」とか「配置転換」といいます。

また、部署は変わらないけど職種が変わるという場合もあります。たとえば、同じ部署で技術職として仕事をしていた人が、営業職に変わる場合などです。
このようなものを、職種変更といいますが、これも人事異動のひとつと考えていいでしょう。


前回お話したとおり、このような人事異動も、労働契約内容の変更です。
では、人事異動を実行する場合、双方の合意が必要なのでしょうか?

そうではありません。

労働契約とは、労働者が、自己の提供する労働力を包括的に使用者に委ねる契約と解釈されています。したがって使用者は、労働契約に基づき、労働者の職務、勤務場所等を決定・変更する権限を有しています。

これを「人事権」といい、労働契約に当然に付随する権限とされています。

したがって、人事異動の際に、会社が本人の同意を得る必要はありません。

 

特約がある場合は別

ただし、労働契約において、人事異動は行わない、とか、職種の変更は行わない、という特約があれば、別です。
その場合は、人事異動は行えませんし、どうしてもやらなくてはならない事情が発生したら、本人の同意を得なくてはなりません。

 

就業規則等に明記しておくのがベター

前述の通り、人事権は会社が当然にもつ権限ですので、就業規則や労働契約に明記していなくても、異動命令は有効です。

しかし、トラブルを避けるためには、就業規則に、会社が業務の必要に応じて人事異動をする旨を明記する方がベターですし、実際、ほとんどの企業がそうしています。

 

権利の濫用は許されない

また、会社に人事権があるといっても、権利の濫用は許されません。
特に、転勤を伴う人事異動は注意が必要です。

判例でも、「転勤命令について業務上の必要性が存しない場合、または業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではない」(東亜ペイント事件・最高裁1986年7月14日)としていまs。

つまり、次のような場合は、権利の濫用として異動命令は無効とされます。
・業務上の必要性が存しない場合
・他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき
・労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき

 

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2019年01月29日

就業規則の実際(31)~労働時間、休日、休暇(14)~適用除外(2)

労働時間規制の適用除外、今回は管理監督者についてです。


管理職には、時間外手当や休日出勤手当を支給していないのが一般的です。
その根拠は、以下の労働基準法第41条の定めにあります。

労働基準法第41条
労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の1に該当する労働者については適用しない。
1.(略)
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.(略)

この「監督若しくは管理の地位にある者」が、「管理職」に該当するわけですが、どこまでがこの範囲に入るのでしょうか?
一言で「管理職」と言っても、その実態は企業によってさまざまです。
労働時間管理の中でも、管理職の範囲については、トラブルになりやすい部分なのです。


1.厚生労働省の通達では

この点について、厚生労働省は通達で基準を示しています。
行政指導も、この通達に則って行われますので、以下に要旨を掲載します。


【監督若しくは管理の地位にある者の範囲】

法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者とー体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。具体的な判断にあたっては、下記の考え方によられたい。

(1)原則

法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。


(2)適用除外の趣旨

これらの職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限つて管理監督者として法第41条による適用の除外が認められる趣旨であること。従って、その範囲はその限りに、限定しなければならないものであること。


(3)実態に基づく判断

一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と、経験、能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるに当たっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること。


(4)待遇に対する留意

管理監督者であるかの判定に当たっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視し得ないものであること。この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外のー般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといつて、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。


(5)スタッフ職の取扱い

法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によつては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、同法第41条第2号該当者に含めて取扱うことが妥当であると考えられること。


2.過去の判例では

<管理監督者に「該当しない」とされたケース>

◆課長職にあって役職手当を支給されていたとはいえ、課長昇進前とほとんど変わらない職務内容、給料、勤務時間の取り扱いに照らし、会社の利益を代表して工場の事務を処理するような職務内容、裁量権限、待遇を与えられていたとは到底いえず、会社と一体的な立場に立って勤務し勤務時間について自由裁量権を有していたともいえないから、管理監督者に該当せず、したがって、割増賃金の支払い義務があるとしたもの(サンド事件大阪地裁昭58 7 12判決)

◆国民金融公庫地方支店の総務課長に次ぐ地位にある業務役について、業務役の職務は本来の管理職の系列には属さない補佐的な役割を有するにとどまり、総務課長の権限の一部としての検印業務等を行い、契約係職員に対する超過勤務命令につき総務課長とともに支店長に対して具申する権限を有していたことは認められるものの、それ以上に被告の経営方針の決定や労務管理上の指揮権限につき経営者と一体的な立場にあったことを認めるに足りる事実は存在せず、出退勤の管理についても一般職員と同様であり、管理監督者に該当しないとしたもの(国民金融公庫事件東京地裁平7 9 25判決)

◆建設会社の現場監督について、勤務時間に関し自由裁量が認められていたと認めるに足りる証拠はなく、特に管理職に見合う手当なども支給されておらず、単に工事現場における従業員の配置を決めるだけではなく、これを超えて会社の従業員の採用および考課、労務管理方針の決定に参画し、または労務管理上の指揮権限を有し経営者と一体的な立場にあったとは認められず、管理監督者に該当するとはいえないとしたもの(光安建設事件大阪地裁平13 7 19判決)

◆地質調査会社支店の係長、課長補佐、課長、次長、課長待遇調査役、次長待遇調査役について、支店の管理職会議に出席し支店の運営方針について意見を述べる機会が与えられてはいたが、開催は年2回にすぎず、会議は基本的に会社側の運営方針を下達する場であり、原告らが行っていた人事考課も上位者による考課が予定され、最終的には支店長の評点が総合評価とされていたのであり、労務管理の一端を担っていたことは否定できないが経営者と一体的立場にあったとはいえず、管理監督者に該当するとはいえないとしたもの(東建ジオテック事件東京地裁平14 3 28判決)

<管理監督者に「該当する」とされたケース>

◆医療法人の人事第二課長について、看護婦の採否の決定、配置等労務管理等について経営者と一体的な立場にあり、タイムカードの打刻義務はあるもののせいぜい拘束時間の長さを示す程度のものであり、実際の労働時間は自由裁量に任され厳格な制限を受けておらず、責任手当、特別調整手当が支給されていること等から、管理監督者に該当するとしたもの(徳洲会事件大阪地裁昭62 3 31判決)


3.これらを総合すると

法の趣旨、通達などから具体的な判断基準を考えると、次のようなことになるでしょう。
(安西愈著「労働時間・休日・休暇の法律実務」より)

(1)企業の経営方針、労務人事管理方針の決定、労働条件の決定等に参画し、あるいは従業員の統括と管理、業務や労務取り扱い上の裁量事項の決定と命令又は承認を行う等その職務内容、責任と権限等からみて経営管理の一定範囲の事項や従業員の統括・管理的行為を行う立場にあること、又はそれと同等の地位のスタッフ的職にあること。

(2)労務管理上の勤務態様からみて、自己の勤務について自由裁量権限があり、出勤、退社について就業規則上および実態上厳格な制限を受けない地位にあること。つまり勤怠成績として評価されず、自主性が承認されていること。スタッフ職でも勤務態様が同等なものは、経営管理的な職務として該当すること。

(3)その管理監督的地位に対して賃金等の処遇面において、その地位にふさわしい処遇がなされていること。したがって直近下位の割増賃金が支払われる地位にある者とくらべて、月例給のみならず賞与等も含め相当程度の格差があること。

 

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2019年01月29日

就業規則の実際(30)~労働時間、休日、休暇(13)~適用除外(1)

就業規則作成講座、これまで数回にわたって、労働時間に関する法律問題をお話してきました。

このような労働時間規制の適用が除外されるケースがあります。
それは次の通り。

1)監視・断続労働
2)管理監督者、秘書業務

今回はこのうち、監視・断続労働についてお話します。

 

どんなに手待ち時間が長くても、全部労働時間に?

宿直などの場合でも、法定労働時間8時間など、労基法の労働時間規制は適用されるのでしょうか?
法定労働時間を超える時間には、時間外手当を支払わなければならないのでしょうか?

また、役員車の運転手などの場合も?

もしそうだとしたら、時間外手当の額が膨大なものになりかねません。
なぜならこういう業務の場合、いわゆる「手待ち時間」が長いため、拘束時間も長くなるからです。労基法では、手待ち時間も労働時間になるのです。

 

監視・断続労働の適用除外

労基法第41条第3項に、監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けた場合は、労働時間規制の適用除外となるということが定められています。

※ただし、深夜業の規制は適用除外にならないので注意が必要です。

 

どんな業務が対象に?

監視業務の対象は、「常態として身体又は精神的緊張の少ない業務」。
たとえば、次のようなものは該当しません。
 1)交通関係の監視、誘導を行う駐車場の監視など、精神的緊張の高い業務。
 2)プラント等における計器類を常態として監視する業務
 3)危険又は有害な場所における業務

断続的業務とは、休憩時間は少ないが手待ち時間の多い業務のことです。役員車の運転手などが、これに該当します。

なお、断続労働と通常の業務が1日の中に混在するような場合は該当しません。

 

日によって宿直がある場合は?

適用除外は、断続的業務を本来業務としている場合だけに限りません。
たとえば、普段は会社の通常の業務をしているが、当番制で宿直をする場合なども該当します。

次のような条件にあてはまれば、断続的労働と認められます。
(「宿直」と名づけてあれば何でもOKというわけではありません)。

・常態としてほとんど労働する必要がない。
・定時的巡視、緊急の文書や電話の収受、非常事態に備えての待機を目的とするものに限る。

また、宿直手当は、その事業場で宿直勤務につく可能性のある同種の労働者の賃金の1人1日平均額の1/3以上を基準とします。

 

所定労働時間を超えた場合は?

監視・断続労働であっても、所定労働時間は定めなくてはなりません。(1日8時間という法定労働時間の縛りはない、というだけです)。

その所定労働時間を超えた場合の賃金をどうするかは、会社の「決め」。
たとえば--
1)通常の労働時間の賃金を支払う
2)割増賃金を支払う
3)それ以外の方法で決めた賃金を支払う
--どの方法でもOKです。

 

深夜勤務の場合は?

ただし、深夜業の割増賃金は支払わなければなりません。
その場合の、時間当たり単価は、所定労働時間に対応させます。
もし所定労働時間が10時間、日給10,000円とすれば、1,000円の2割5分ということになります。

夜間の警備員業務などはどうしているのでしょうか?
毎日、深夜勤務手当を計算し、支払っているのでしょうか?
もしかしたら、そうかもしれませんが…

もし所定内賃金に、深夜の割増賃金分が含めれており、それが就業規則などで明らかになっていれば、さらに深夜業手当を支払う必要はありません。

 

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2019年01月25日

就業規則の実際(29)~労働時間、休日、休暇(12)

就業規則作成講座、今回は時間外労働、休日労働、深夜労働をさせたときの割増賃金についてご説明します。

 

時間外等の割増賃金

会社は、残業や休日労働をさせた場合は割増賃金を支払わなければなりません。
「残業代」、「残業手当」、「時間外手当」、「休日出勤手当」などと称されるものですね。

割増率は、残業の場合は25%以上、休日労働の場合は35%以上、深夜労働(午後10時から午前5時)の場合は25%以上です。
なお、残業時間や休日労働が深夜時間帯に及んだ場合、その部分については、残業+深夜の割増率(25%+25%=50%)または休日労働+深夜の割増率35%+25%=60%)となります。

また、月60時間を超える時間外があった場合、超えた時間については50%以上の割増率にしなくてはなりません。
この規定は、中小企業については適用が猶予されていましたが、2023年4月1日からは猶予措置がなくなります。


それでは、フレックスタイムや変形労働時間制を採用している場合、残業時間はどうカウントすればよいのでしょうか?
日によって働く時間が短かったり(所定労働時間未満ということ)、長かったりしますが…

また、1日の所定労働時間が8時間未満の場合、残業時間のカウントはどうすればよいのでしょう?法定の労働時間は8時間。そして、労基法が規定する残業とは、法定労働時間の8時間を超える労働のことです。それでは…

同じように、週休2日制の場合の休日労働手当は?

 

法内残業の場合

たとえば、始業9時、終業17時、休憩1時間、などという場合、拘束は8時間ですが、実働は7時間です。労働時間とは、この実働時間を指します。
17時を超えて仕事を命じた場合、17時~18時の1時間は、「法内残業」となり、この部分については、割増しない、「通常の労働時間の賃金」を支払えばOKです。

休日労働も同様に考えてかまいません。割増賃金の支払いが義務づけられるのは、法定休日、つまり1週1日または4週4日に業務をさせた場合です。
週休2日制、祝日など、法定休日を超えた休日に仕事をさせた場合、法内残業の場合と同様、通常の労働時間の賃金を支払えば足ります。

 

変形労働時間制を採用している場合の残業時間のカウント

次に、変形労働時間制を採用している場合の、残業のカウント方法を見ていきます。

(1)フレックスタイム
「清算期間」における法定労時間の総枠を超えた時間が、残業時間となります。
清算期間における法定労働時間とは、40時間(または44時間)×清算期間÷7で計算されます。

(2)1ヶ月変形
次の時間が、残業時間となります。
a.1日については、就業規則などで8時間を超える定めをした日は、それを超えた時間、そうでない日は8時間を超えた時間
b.1週間については就業規則などで40時間を超える定めをした週は、それを超えた時間、そうでない週は40時間を超えた時間(aの部分を除く)
c.変形期間については、変形期間の労働時間(40時間または44時間×(変形期間÷7))を超えた時間(a、bの部分を除く)

(3)1年変形
次の時間が、残業時間となります。
a.1日については、労使協定で8時間を超える定めをした日は、それを超えた時間、そうでない日は8時間を超えた時間
b.1週間については、労使協定で40時間を超える定めをした週は、それを超えた時間、そうでない週は40時間を超えた時間(aの部分を除く)
c.変形期間については、変形期間で40時間×(変形期間÷7))を超えた時間(a、bの部分を除く)

 

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2019年01月25日

就業規則の実際(28)~労働時間、休日、休暇(11)

就業規則作成講座、時間外労働に関する解説を続けます。


残業を命じるには36協定が必要だということは既にお話しました。
それでは、協定を結べば、それだけで残業を命じることができるのでしょうか?
答えは「×」です。
どういうことでしょう?

また、労働組合はあるけど、組合に加入していない従業員がいる場合はどうなるのでしょうか?また、過半数組合と、過半数に達していない少数組合がある場合はどうなるのでしょうか?

まず、「36協定を結んでも、それだけでは残業を命じることはできない」ということについてお話しましょう。

これは、「36協定は刑事的な免責効果があるに過ぎない」ということです。
何だか難しいコトバがでてきましたが…
36協定を結ぶと、法定の労働時間を超えて働かせても(つまり残業をさせても)、罰則は受けません。
でも、それだけです。
では、もし上司が部下に残業を命じても、部下がそれに応じなければどうなるか。指揮命令違反として処罰できるでしょうか?
それには、就業規則や労働契約に残業に関する定めがなくてはいけません。
「会社は業務の都合により、所定労働時間を超え、または所定休日に労働させることがある。従業員は正当な理由なくこれを拒んではならない」というような規定を入れるということです。
これで、はじめて、会社には残業を命じる根拠が、従業員には残業命令に応じる義務が生じるわけです。

次に、過半数労働組合と36協定を結んだものの、労働組合に加入していない従業員がいる場合や、少数組合が別にある場合はどうなるのかという問題です。
答えは、「この場合、非組合員や少数組合員にも協定の効果が及ぶ」、です。

また、もし過半数労働組合がある場合は、それとは別の過半数代表者と協定を締結することはできません。

 

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2019年01月24日

就業規則の実際(27)~労働時間、休日、休暇(10)

就業規則作成講座、時間外労働に関する解説を続けます。
今回は36協定と、時間外の限度時間についてです。

 

36協定の特別条項

36協定には、時間外労働の限度を定めなければなりません。
そして、定めた以上は守らなければなりません。
とはいえ、現実には、その限度時間を超えてしまうこともあり得ます。それに対応する方法として、「特別条項つき協定」というものがあります。

これは、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い36協定の限度時間を超えて労働させる必要がある場合、特別条項つきの36協定に所定の条項を設けることにより、限度時間を超える時間外労働を命じることができるというものです。

 

特別条項の内容は

特別条項で定めるべき事項は次の通りです。

①限度時間を超えて労働させる事由
②限度時間を超えて労働させたときの割増賃金率
③特別条項発動の手続
④健康・福祉確保措置

 

特別条項を締結した場合の時間外の限度

特別条項を締結したからといって、時間外労働が青天井になるわけではありません。

この点も2019年4月1日施行の改正労働基準法により次のように定められています。

まず、36協定の限度時間を超えて労働させることのできるのは1年について6ヶ月以内となっています。
そして1年の時間外は720時間以内としなくてはなりません。

 

休日労働も含めた限度時間

法改正により、休日労働も含めた限度時間が定められました。
内容は次の通りです。

限度時間①
・期間:1ヶ月
・限度時間:時間外、休日労働の合計で100時間未満

限度時間②
・期間:2ヶ月ないし6ヶ月
・限度時間:時間外、休日労働の合計で平均80時間以内

②が分かりずらいところですね。

これはたとえば9月を起点に考えると--
・8月~9月の2ヶ月
・7月~9月の3ヶ月
・6月~9月の4ヶ月
・5月~9月の5ヶ月
--このいずれの期間をとっても平均80時間以内におさまらなくてはならないということです。

休日労働も入っている点が要注意です。
時間外労働だけ見ていて限度時間に収まっていると安心していても、休日労働を加えたら超えてしまっていたということがおこってしまうかもしれませんので。

また、この2つの限度時間は特別条項だけにかかる規制ではありません。
36協定の限度時間(月45時間以内)、特別条項の限度時間(年720時間以内)はあくまでも時間外労働だけが対象で法定休日労働は含まれません。
これだけだと、時間外労働は限度時間の範囲におさめて、法定休日労働増やしても問題ないということになり、上限規制が尻抜けになるおそれがあります。
休日労働も含めた2つの限度時間には、それを防ぐという意味があります。
この点も要注意ですね。

 

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2019年01月24日

働き方改革への取組(20)~フレックスタイム制の見直し③

一連の働き方改革関連法制で、フレックスタイム制の規制緩和が図られました。
今回もその解説を続けます。

 

法定労働時間の総枠

フレックスタイム制の見直し②でご説明した通り、フレックスタイム制では清算期間の法定労働時間の総枠と総実労働時間の差を時間外労働とします。

具体的な時間を、清算期間1ヶ月の場合と3ヶ月の場合でお示しします。(週の法定労働時間が40時間の場合)

<清算期間1ヶ月>
清算期間の暦日数 法定労働時間の総枠
  31日       177.1時間
  30日       171.4時間
  29日       165.7時間
  28日       160.0時間

<清算期間3ヶ月>
清算期間の暦日数 法定労働時間の総枠
  92日       525.7時間
  91日       520.0時間
  90日       514.2時間
  89日       508.5時間

 

完全週休2日制の場合、不具合が

このように清算期間の平均週数を使うというかたちで時間外計算をするのが原則ですが、この方法だと、その月の暦日数、所定日数によって不具合が生じることがあります。

完全週休2日制をとっている会社で、ある月の暦日数が31日、所定労働日数が23日の場合、上記の法定労働時間の総枠は177.1時間です。
仮に実働時間が毎日8時間、休日労働がなかった場合、この人の実労働時間は8時間×23日で184時間、したがって時間外は184時間-177.1時間=6.9時間となります。
これもおかしな話です。
フレックスタイム制適用でなければ、この人の時間外は0なのですから。

このような不具合を避けるため、労働基準法32条の3の3第3項には、1週間の所定労働日数が5日以下の場合、労使協定により、労働時間の限度を清算期間の所定労働日数に8時間を乗じた時間とすることができる旨が定められました。

 

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2019年01月24日

就業規則の実際(26)~労働時間、休日、休暇(9)

36協定

災害その他避けることのできない事由で臨時の必要があれば時間外労働をさせることができます。
しかしそしてその場合、単なる業務の繁忙その他、これに準ずる経営上の必要は認められません。

「そんなこと言っても、忙しいときは残業してもらっている。これは違法なのか?」
こんな疑問がわくと思います。
「そんなことはないだろう。もしそうなら、世の中の会社のほとんどは、労基法違反を犯していることになってしまう」
確かにそうなんです。法律が求める要件を満たしていないと、違法です。

それでは、どんな要件を満たしていれば、業務繁忙などの場合に時間外労働をさせることができるのでしょうか。

それが、いわゆる「36協定」と言われる労使協定です。この労使協定を結んでいれば、業務繁忙などの経営上の必要があるときに、時間外労働を命じることができます。(それとは別に、就業規則などの定めは必要ですが)。

具体的には、使用者が
1)事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があれば、その労働組合、そのような労働組合がない場合は、労働者の過半数代表者と
2)書面による協定を結び、
3)その協定を所轄労働基準監督署長に届け出れば
――協定の定めに基づいて、時間外労働、休日労働をさせることができるということです。

「そんなの見たことない」
まぁ、普通はそうでしょう。
でも、誰も見たことがなかったり、人事部門の方も協定の存在を知らないということだと、問題です。一度、ご確認することをお勧めします。

36協定で定めなくてはならないことは、次の通りです。
①労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
②対象期間(1年間に限る)
③労働時間を延長し、又は休日に労働させることができるのはどんな場合か
④対象期間における1日、1ヶ月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
⑤労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項

⑤は次の通りです。
1)協定の有効期間
2)1ヶ月、1年の起算日
3)特別条項について
・限度時間を超えて労働させる事由
・限度時間を超えて労働させたときの割増賃金率
・特別条項発動の手続
・健康・福祉確保措置

※2019年4月1日施行の改正法に基づいています。


この協定には、時間外労働の限度時間を定めなくてはなりません。

これまでは、労働基準法第36条第2項に限度時間の基準が定められており、協定の内容は、この基準に合致したものとなるようにしなければならないとされていました。

この点が法改正により時間そのものが条文に定められ、かつ、「限度時間を超えない時間に限る」と、超えることが許されない義務となっています。

限度時間の上限は、1ヶ月45時間、1年360時間となっています。
ただし、1年単位の変形労働時間制で、対象期間が3ヶ月を超える場合は1ヶ月42時間、1年320時間です。

ここで注意しなくてはならないのは、1ヶ月と1年それぞれの限度時間の関係です。
たとえば、月々の時間外が40時間で推移した場合、1ヶ月の限度時間は超えません。しかし、この状態が9カ月を超えて続くと、1年の限度時間である360時間を超えてしまうのです。
単月の管理だけでは足りないということですね。

 

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2019年01月23日

就業規則の実際(25)~労働時間、休日、休暇(8)

時間外労働を命じることができるのは

法定の労働時間は、1日8時間、1週40時間と定められています。また、法定休日は1週1日または4週4日です。
これを超えて勤務した場合、「時間外労働」となり、割増賃金の支払い義務が生じます。

時間外労働をさせることができるのは、次の3つの場合です。
1)災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要性がある場合
2)公務のため臨時の必要がある場合
3)労使協定がある場合

 

非常災害の場合の時間外労働

1番目の「災害その他避けることのできない事由」とは何か、次のような通達が出ています。
・単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めない
・急病、ボイラーの破裂その他、人命または公益を保護するための必要は認める
・事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械の故障の修理は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な手入れは認めない。

結構厳しい要件です。
これだけ見ると、時間外労働は、よほどのことがない限り、できないということになります。
それでは、世の中で当たり前のように行われている時間外労働は何なのか。
それが3番目の「労使協定」に基づくものになるわけです。これについては次回、見ていきます。

この「災害その他避けることのできない事由」による時間外労働をさせる場合、事前に労働基準監督署長の許可を受ける必要がありますが、それができない場合は、事後に遅滞なく届けなくてはなりません。
(事前に許可を受けるということがあり得るのかどうか、よく分かりませんが)。
労働基準監督署長が、この時間外労働を不適当と認めた場合、その時間に相当する休憩または休日を与えるよう、使用者に命じます。

 

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2019年01月23日

働き方改革への取組(19)~フレックスタイム制の見直し②

清算期間の見直し

法改正により、フレックスタイム制における清算期間が1ヶ月以内から3カ月以内に延長されます。

つまり、これまでは1ヶ月以内の期間で実労働時間を計算し、その期間の法定総労働時間を上回った場合は、上回った時間分は時間外手当を支払わなければならなったのですが、この計算期間を最大3ヶ月まで延長できるということです。

分かりずらいかもしれませんね。
既にフレックスタイム制を導入していればともかくとして、そうでない場合は、何となく分かったような分からないようなというのが実感かもしれません。

清算期間の考えはフレックスタイム制のポイントになるところですので、詳しくご説明していきましょう。

 

清算期間とは何か?

通常の労働時間制度では、法定労働時間は1日8時間以内、1週40時間以内となっています。(特掲事業所を除く)。
そして、この時間を超えた分については時間外手当の支払いが義務づけられています。

しかし、フレックスタイム制では、1日、1週の労働時間は当然一定ではありません。
そこで1ヶ月とか3ヶ月のといった一定期間で管理することになっています。これを「清算期間」といいます。

 

清算期間の法定労働時間

ここで面倒なのは、1ヶ月とか3ヶ月の日数は 月によって異なるため、法定総労働時間も異なるということです。

それなら会社の所定労働日数×法定労働時間を基準にすればいいと思われるかもしれませんが、その場合、1日の所定労働時間が短く、週の所定労働日数が6日という場合、具合が悪くなってきます。

一方、7時間など所定労働時間が法定労働時間より短い会社が、所定労働日数×所定労働時間としたらどうか?
会社が独自に、この時間を超えた分について時間外手当を支払うことにすることは問題ありません。
ただ、ここで問題にしているのは、労働基準法の定めを満たす基準はどこにあるのかということなので、これでは答えになりません。

様々な事象に対応できる方策として考え出されたのが、清算期間の平均週数を使うということです。
たとえば、清算期間が1ヶ月で、その月が31日の場合、31日÷7日=4.428週となります。
これに1週あたりの法定労働時間40時間をかけた177.1時間がその月の「法定労働時間の総枠」となり、1ヶ月の総実労働時間がこの時間を超えたら時間外手当の支払いが義務づけられるということです。

 

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2019年01月23日

就業規則の実際(24)~労働時間、休日、休暇(7)

年次有給休暇付与日

年休は、初回は6ヶ月、以後は1年ごとに付与します。

付与日には、次の2つのパターンがあります。

1)入社日を起点に付与
たとえば、4月1日入社の場合、初回付与日は10月1日、2回目は翌年10月1日となる。

2)全社一斉の基準日に付与

1番目の入社日基準は、従業員ごとに付与日が異なりますので、事務的に煩雑です。
付与漏れということも起こり得ます。
その点では、2番目の基準日方式の方が、実務的に運用しやすいのですが、法定基準を下回らないように注意しなくてはなりません。

たとえば、基準日を5月1日に設定し、基準日時点で勤続6ヶ月以上の従業員に付与するとした場合で、次のような扱いにしたらどうなるでしょうか?

・当年の4月1日入社者:当年5月1日は付与なし、翌年5月1日で10日付与。

この場合、当年10月1日で勤続6ヵ月となりますので、その時点で10日付与しなくてはなりません。
しかし、これをやっていると、何のために基準日方式を入れたのか分からなくなってきます。
そこで、当年5月1日時点で10日、前倒し付与します。

 

年次有給休暇の取得

年次有給休暇は、請求すれば使用できます。
会社が許可するという性格のものではありません。

許可制にしている会社をたまに見ますが、これはやってはなりません。

では、会社は従業員が請求するままに年休を使わせなくてはならないのか?
そこまで会社は強制されているわけではなく、「時季変更権」が会社にはあります。
これは、事業の正常な運営を妨げる場合に、他の時季に変更することができるというものです。

では、「事業の正常な運営を妨げる場合」とは何を指すかですが、通達では、「事業の正常な運営を妨げる場合とは、個別的、具体的に客観的に判断されるべきものであると共に、事由消滅後能あたう限り速やかに休暇を与えなければならない」とされています。

また、判例では---
「その企業の規模、年休請求権者の職場における配置、その担当する業務の内容・性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、時季を同じくして年休を請求する者の人数等、諸般の事情を考慮して制度の趣旨に反しないように合理的に決すべきものである」

「法の趣旨は、使用者に対し、できるだけ労働者が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすることを要請しているものとみることができる。使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできない」
---このように示されています。

「この忙しいのに年休なんて取らないでくれ」というだけでは、時季変更権の行使はできませんので、注意しましょう。

 

年休の時季指定義務

2019年4月1日から会社は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年5日については、使用者が時季を指定し取得させることが必要となりました。

ただし、年次有給休暇を5日以上取得済みの労働者に対しては、使用よる時季指定不要です。
また、労働者が自ら申し出て取得た日数や、労使協定による計画的付与についは5日から控除することができます。

 

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2019年01月21日

就業規則の実際(23)~労働時間、休日、休暇(6)

年次有給休暇の原則

年次有給休暇は、6ヶ月以上継続勤務し、その期間の出勤率が8割以上の人に対し10日間付与されます。
6ヶ月経過後は、1年ごとに、その期間の出勤率が8割以上の場合、、次の通り付与されます。


勤続6ヶ月   10日
  1年6ヶ月 11日
  2年6ヶ月 12日
  3年6ヶ月 14日
  4年6ヶ月 16日
  5年6ヶ月 18日
  6年6ヶ月 20日

以後は毎年20日

出勤率が8割未満の場合は年休は付与されません。
ただし、その次の期の出勤率が8割以上であれば、その期の勤続年数に対応した日数の年休が付与されます。
具体的には、次の例の通りです。

年休付与例
・勤続1年6ヶ月 それ以前1年間の出勤率9割→11日付与
・勤続2年6ヶ月 それ以前1年間の出勤率7割→付与なし
・勤続3年6ヶ月 それ以前1年間の出勤率9割→14日付与

 

出勤率の計算方法

労働日とは所定労働日数のことです。
その期間(6ヶ月または1年)の暦日数から、所定休日を除いて算定します。
したがって、出勤率は、欠勤などを除いた、現実に出勤した日を、会社の所定労働日数で割ればいいのですが、いくつか考慮しなくてはならないことがあります。

前述のとおり、休日は労働日ではありませんので、分母に入れません。
また、休日出勤をしても、分子、つまり就労日数には入れません。休日出勤日は、労働日ではないので、休日出勤をしても、分母・分子ともに入れないのです。

年次有給休暇で休んだ日は、元々労働日ですから、分母に入れます。
また、出勤とみなしますので、分子にも入れます。

これらの関係をまとめると、次のようになります。

【分母、分子両方に入れる】
・年次有給休暇取得日
・産前産後休暇
・業務災害による休業日
・育児・介護休業日

【分母、分子両方から除外】
・休日労働日
・休職期間
・使用者の責に帰すべき休業日
・ストライキ

【任意(会社の定めるところによる)】
・通勤災害による休業日
・特別休暇
・生理休暇

 

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2019年01月21日

働き方改革への取組(18)~フレックスタイム制の見直し①

今回の法改正で、フレックスタイム制の見直しが行われ、労働時間の計算期間(清算期間)が1ヶ月から3ヶ月(以内)に伸びました。

弾力的な運用が可能になりましたが、それに伴い新たな規制も加わっており、その点も踏まえて対応を検討する必要があります。

 

フレックスタイム制の概要

フレックスタイム制とは、1ヶ月などの一定期間(これを清算期間といいます)の総労働時間を定め、その範囲内で本人が始業、終業の時刻を弾力的に決められる制度です。
研究開発職、技術職、企画職、営業職などに適した制度と言えます。

フレックスタイム制は労働時間法制の柔軟化に先鞭をつけたものといっていいでしょう。

仕事は日々、全く同じように流れていくわけではありません。繁閑の差は日によって異なります。また、前中はあまり忙しくなく、午後に業務が集中するような日もあります。
このような日々の業務の状況に対応して、従業員自身が業務の開始・終了時刻や勤務時間の長さを決めることができるようにして、生産性の向上を図ることができます。
また、時間的拘束を緩めることにより、「どのように働くかを自分で決める」という、従業員の自主管理の範囲を広げます。

フレックスタイム制では、
・弾力的にできる時間帯:フレキシブルタイム
・必ず働かなくてはならない:コアタイム
――を決めます。

たとえば、7時~22時をフレックスタイム適用時間帯とします。
そして、13時~15時をコアタイム、7時~12時、15時~22時をフレキシブルタイムだとしましょう。(12時~13時は休憩時間です)。
その場合、従業員は、13時~15時は仕事をしなくてはなりませんが、何時から仕事を始め、何時に終わるかは自由です。

そして労働時間計算は、「清算期間」単位で計算します。

この清算期間はこれまで1ヶ月以内とされていましたが、法改正により3ヶ月まで延長されました。

一方、1週の平均労働時間が50時間を超えた場合、超えた分については時間外手当を支払うことが新たに義務付けられました。

導入にあたっては、労使協定の締結が必要です。この点は同じですが、これまでは労使協定の届出は不要だったところ、清算期間が1ヶ月を超える場合は所轄労働基準監督署長に届け出ることが義務付けられています。

 

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2019年01月21日

就業規則の実際(22)~労働時間、休日、休暇(5)

休日の原則

会社は働く人に休日を与えなくてはなりません。
労働基準法で休日は次のように定められています。

(休日)
第36条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。

つまり休日は、「毎週1日以上、または4週4日以上」与えなくてはならないわけです。

「1週間」をいつからいつまでにするかは会社の自由ですが、就業規則などで特定しておかなくてはなりません。特定がない場合は、日曜日から土曜日までの暦週となります。
また、「4週間」については、起算日を決めておかなくてはなりません。

週1日の休日があれば、労基法違反とはなりません。

ただし、労基法は一方で、週の労働時間を40時間と定めています。
もし1日の労働時間が8時間だとすると、週2日休日がないと、労基法違反となりますので、注意が必要です。

なお、国民の祝日や年末年始等をどうするかは、会社の自由です。

 

法定休日・法定外休日

前述の通り、法が義務づけている休日は、「週1日または4週4日」です。
これを「法定休日」といいます。
法定休日に仕事をさせた場合は、割増賃金を支払わなくてはなりません。
(割増賃金については後述します)

法定休日以外の休日を、「法定外休日」といいます。
法定外休日に仕事をさせた場合も、賃金は支払わなくてはなりませんが、割増にする義務はありません。

このように、同じ休日でも、法定休日と法定外休日では、法律上の取り扱いが異なります。

では、週休2日の場合、法定休日をあらかじめ決めておく必要はあるのでしょうか?
法律は、法定休日の特定までは義務づけていませんので、その必要はありません。

したがって、次のような扱いが考えられます。

<パターン1>
・休日は毎週土・日とする。
・日曜日を法定休日とする。(したがって日曜日に仕事をした場合は3割5分の割増賃金)

<パターン2>
・休日は毎週土・日とするが、法定休日は特定しない。
・土・日とも出勤し、1週間休日がなかった場合は、休日出勤日のどちらか一方を法定休日労働とする。(どちらにするかは会社の決め)

 

休日は暦日が原則

休日は、暦日が原則です。
ただし、交替制勤務など、勤務が暦日をまたがる場合は、継続24時間の休日という方法でもOKです。就業規則などで、交替制勤務のことをきちんと定める必要があります。

 

休日は特定しなければならない?

労基法は、休日の特定までは求めていません。ですから、「休日は週2日とする」というような決め方でも問題ありません。
しかし、厚生労働省の通達にも、「特定することが法の趣旨に沿う」とあります。
「休日は毎週土曜日、日曜日とする」というように、日を特定するのが望ましいですね。

 

休日を振替える場合は?

休日振替とは、休日と定められている日を勤務日とし、別の日を休日とすることです。
就業規則に、休日の振替をすることがある旨を定めておく必要があります。
また、休日振替すべき具体的事由と、振り替えるべき日を具体的に規定するほうが望ましいとされています。ただ、現実に「具体的な事由」を定めるのは、難しいことも多いでしょう。「業務の都合により」という定め方にならざるを得ないかもしれません。

休日を振り替えた場合、もともとの休日は勤務日となり、「休日出勤」とはなりません。従って、割増賃金を支払う必要はありません。

ただし、その場合でも、1週1日または4週4日の休日は確保する必要があります。
振替後の休日をいつにするかについて、労基法上の決まりはありませ。4週4日の枠内であれば、いつでもいいのですが、できるだけ近い日にすることが望ましいですね。

 

代休とは?休日振替との違いは?

休日振替と似ていますが、休日振替の場合は、元々の休日が勤務日に転換されるので、その日の勤務は休日勤務とはなりません。

代休の場合は、元々休日だった日はあくまでも「休日」です。ですから、この日に勤務すれば、それは「休日出勤」となり、割増賃金の対象になります。

代休は義務ではありません。会社の「決め」です。
与え方についても、会社が強制的に与える(休ませる)、本人の請求による、という2パターンがあります。
また、休日出勤時間が、一定時間以上になったら与えるという方法もあります。

 

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2019年01月16日

働き方改革への取組(17)~労働時間短縮への取組⑯

働き方改革法制の目玉になっている時間外労働の抑制(=時間外の上限時間の設定)に、会社は次の3つの側面から対応を考える必要があります。

①労働時間管理
②労働時間制度
③生産性向上

今回はこのうち、生産性向上について触れたいと思います。

 

生産性向上

働き方改革の目的は、生産性の向上にあります。
労働時間短縮はもとより、ワークライフバランスの実現、創造性の向上も、突き詰めていけば生産性が根っこになります。

生産性向上は3つの観点から考えます。

①業務のやり方を効率化できないか
②業務と業務の流れを効率化できないか。ボトルネックはないか
③そもそもその業務は必要か

肝心なのはゼロベースで考えることです。

たとえば、業務のムダの象徴としてヤリ玉にあがる会議。
「その会議は必要か」という議論をしますが、「必要性」というのはひねり出せばいくらでも出てきます。
「その会議がなくなったら困ることがあるのか」と考えるべきです。

また、会議そのものは必要としても、参加メンバーは適当かという目線も大事です。
「この案件は○○部も無関係ではないので、メンバーに入れよう」という発想が実に多いというのが私の実感です。そうして、一言も発しない人が過半を占めるという奇妙な会議があちこちで開かれるのです。


私は業務時間中は一切のムダがあってはならないと言うつもりはありません。
疲れたり煮詰まったりしたときはブレーク時間も必要です。

というか、このような時間はムダ時間ではありません。

本当にムダなのは、仕事をするでもなく、かといってリフレッシュするでもない、義務的にいるだけの時間、待たされているだけの時間です。無意味な業務をやらされている時間もそれになりますね。

そのような時間が実は結構多い。

こういう時間を失くしていくことが肝心かと。

 

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2019年01月16日

就業規則の実際(21)~労働時間、休日、休暇(4)

休憩時間の長さ

労働基準法による休憩時間の定めは次の通りです。
・労働時間が6時間を超える場合は45分以上
・労働時間が8時間を超える場合は1時間以上

所定労働時間が8時間以下の場合は、最低45分の休憩が必要です。
残業などで労働時間が8時間を超える場合は、15分の休憩を追加しなくてはいけません。

また、所定労働時間が6時間以下の場合は、休憩時間を与える法的義務はありません。
とは言え、現実に、仕事が4時間、5時間と連続すると、疲労もたまります。生産性は下がるでしょうし、ミスや事故にもつながりかねません。
労働時間が6時間以下でも、それなりの休憩時間を与えることが望ましいでしょう。

 

休憩の与え方

1)勤務時間の途中に与えること

休憩時間は、勤務時間の途中に与えなくてはいけません。
「始業9時、終業17時、休憩17時~17時45分」というのはダメです。

2)原則として一斉に与えること

休憩は一斉に与えることが原則です。後で書きますが、「休憩の自由利用」を担保するという趣旨です。

ただ、例外が2つあります。
・労使協定
・労基法第40条

労使協定

労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数代表者との間で書面協定を結べば、一斉に付与しなくてもOKです。
協定すべき事項は
・休憩を一斉に与えない(分散して与える)従業員の範囲
・分散して与える「与え方」
です。

労基法第40条

一定の事業場は、一斉休憩の原則が適用されません。サービス業など、全員が一斉に休憩でいなくなってしまうと、お客さんに不便な思いをさせてしまうような事業です。このようなところは、就業規則で休憩の与え方を定めます。
該当する事業は、次の通りです。
・旅客、貨物の運送事業
・物品の販売または理容の事業
・金融、保険等または広告の事業
・映画、演劇、その他興業事業
・郵便、電信、電話事業
・保健、衛生の事業
・旅館、飲食店、娯楽場
・官公署

 

休憩は自由利用が原則

休憩時間は、従業員に自由に利用させなくてはなりません。
休憩時間中に電話当番をさせたり、来客が来た場合は対応させたりした場合はどうなるのでしょうか。

「電話がかかってこなければ休憩していられるのだから、問題ない」
「実際に電話に出たり、来客の対応をしていた時間の分だけ休憩時間を伸ばせば良い」
――いずれも「×」です。
このような時間は、いつでも業務に対応できるように待機している「手待ち時間」ということになり、労働時間となります。

それなら、休憩時間中は、法に触れない限り何をしていても良く、会社はそれに対して何もできないのでしょうか。
いくらなんでも、そんなことはありません。
事業場の規律保持上、必要な制限を加えることはできます。

・外出を許可制としても、事業場内で自由に休息できればOKです。
・休憩時間中の、ビラ配布などの政治活動に制限を加えることができるか否かについては、企業秩序を乱す行為かどうか、労働協約などがどうなっているか、などによって判例が分かれいています。
ケース・バイ・ケースとしか言いようがないのですが、程度問題ということになるのでしょう。

 

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2019年01月15日

就業規則の実際(20)~労働時間、休日、休暇(3)

労働時間とは?

就業規則には労働時間に関する事項を必ず記載しなくてはなりませんが、そもそも「労働時間」とは何でしょうか?
「働いている時間のことでしょう?」…確かにその通りです。
でも、この「働いている時間」の範囲をめぐって、これまで実に多くの紛争があったのです。

たとえば、仕事を始める前の準備作業は労働時間に入るのでしょうか?
仕事をするためにの準備作業なのだから、労働時間に入るという考え方、仕事そのものではないのだから労働時間にはならないという考え方、それぞれ一理あります。
それでは、出張中の移動時間はどうでしょう?
出張でなくても、外回りの営業マンが得意先と得意先の間を移動している間は?
勤務の間の仮眠時間は?
他にも色々なケースがありますね。

こういうことをしっかり把握しておきましょう。
そうすれば、次のステップに進めます。

「それでは当社はどんな労働時間管理をするのがいいのだろう?」
これを考えるには、そもそも労働時間とは何かということを、しっかり押さえておかなくてはなりません。

労働時間の定義を、社会保険労務士会編の「社会保険労務ハンドブック」(中央経済社)から引用します。

「労働時間とは、休憩時間を除いた実働時間をさし、休憩時間をも含めた拘束時間と異なる。また、実働時間とは、労働者が現実に労働に従事している時間だけでなく、労働者の労働力がなんらかの形で使用者の指揮命令下におかれている時間をいい、したがっていわゆる手待時間(たとえば販売店の従業員が買物客のくるのを店内で待っている時間)は、当然労働時間に含まれる」

この「指揮命令下」というのも、実務上大切な概念です。

ここではっきりしていることは、何かしら手を動かしたり、会議で発言している時間だけが労働時間ではないということです。
仕事をしないでぼ~っとしていたからといって、その時間を勤務と認めず、時間相当分の賃金を差し引くことは、労働時間の定義に限って言えば、やってはいけません。

これは、職場の労務管理や懲戒など、別の問題としてとらえる必要があるということです。

 

労働時間に関する労働基準法の規定

労働時間は、1日8時間、1週40時間を超えてはならないと労働基準法で定められています。前回お話しした通り、この「8時間」とか「40時間」には休憩時間は含まれません。


1週」は、通常は日曜日~土曜日の「暦週」を意味しますが、就業規則で、別の決め方もできます。ただ、特別な必要性がなければ、暦週を使うのがいいでしょう。

「1日」は、午前0時から午後12時までの暦日を指します。

それでは、残業が長引いて、午後12時を過ぎた場合などはどうなるのでしょうか。
この場合、暦日をまたがっていても1勤務として扱います。

それでは、今度は、徹夜になってしまった場合はどうなるのか?
この場合は、徹夜明けの日の始業時刻までを、前日からの勤務時間としてカウントすることになります。

 

労働時間になる例、ならない例

それでは具体的に、労働時間になる・ならないを、これまでの通達や判例から拾ってみます。

<労働時間になる例>
・昼休み中の来客当番
・黙示の指示による労働時間
 たとえば、管理者が部下に、明確に残業を指示していなくても、部下が法定労働時間を超えて仕事をし、それを黙認していた場合は、労働時間(残業時間)となります。
・終業時間外の教育訓練
自由参加のものであれば、労働時間にはなりません。
・着替え時間
着用を義務づけられた作業服などを、事業所内で着替える時間は労働時間になります。
・仮眠時間

<労働時間にならない例>
・出張先への往復に要した時間
出張中の移動時間は、労働時間になります。
・趣味の会の活動

 

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2019年01月15日

働き方改革への取組(16)~労働時間短縮への取組⑮

働き方改革法制の目玉になっている時間外労働の抑制(=時間外の上限時間の設定)に、会社は次の3つの側面から対応を考える必要があります。

①労働時間管理
②労働時間制度
③生産性向上

今回はこのうち、労働時間制度について触れたいと思います。

 

労働時間制度

労働基準法制定当時に一般的だった、全員が一斉に仕事を始め、一斉に終わるという業務形態も、いまではだいぶ変わってきました。
それに対応して、労働時間制度も次のようにいろいろなバリエーションが作られています。

・変形労働時間制(1年単位、1ヶ月単位、1週単位)
・フレックスタイム制
・事業場外みなし労働時間制
・裁量労働制(専門業務型、企画業務型)

フレックスタイム制は今回の法改正で多少は柔軟な運用ができるようになりました。
また、大騒ぎになった高度プロフェッショナル制も、旧来と異なる労働時間制と言えます。

ポイントは、全社で同じ制度にする必要はないということです。
まぁ、当たり前ではありますが。

部署単位、業務内容単位、職種単位、階層・ランク単位でどのようなやり方が最も合理的かを吟味するのがいいですね。

 

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2019年01月15日

働き方改革への取組(15)~労働時間短縮への取組⑭

時間外の上限規制は、「働き方」改革というより「働かせ方」改革といった方が適切かもしれません。
まぁそれを言ったら、今後お話ししていく他の事項もそうなりますが。
ただ、時間外規制はその色合いがより強いのではないかという気がします。

いずれにしても、会社はこの法改正を機に、従業員の活用、すなわち人材マネジメントのあり方を見直すのがいいですね。

 

働き方見直しの「3つの視点」

見直しは次の「3つの視点」から考えます。

①労働時間管理
②労働時間制度
③生産性向上

 

労働時間管理

労働時間管理(勤怠管理ともいいます)をどうするかはとても大事な問題です。

労働時間管理のあり方は次のように、人材活用・労務管理のさまざまな面に影響を及ぼすからです。

・働く人の生産性や創造性
・ムダな残業、ダラダラ残業
・働く人の心身の健康
・労務コンプライアンス、訴訟リスク

今回の一連の法改正で、一部の例外を除き、時間外労働・休日労働に天井が設けられました。
そのため、きめ細かい労働時間管理が求められます。

労働時間管理は、2つの側面から設計するのがいいですね。

①入り口の管理
・出退勤時刻と始業・終業時刻の管理
※この両者は全く異なるものです。一緒くたになっている会社が少なくありませんが、区別して管理すべきです。
・時間外労働の承認手続

②実績の管理
・時間外実績の把握
・長時間労働の要因分析、解消策検討
※時間外実績の集計を月半ばで行うようにするのがベター

 

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2019年01月10日

就業規則の実際(19)~労働時間、休日、休暇(2)

拘束時間、労働時間、休憩時間

就業規則には、「始業時刻」と「終業時刻」を定めます。
では、「労働時間」とは、始業時刻から終業時刻までの時間を指すのでしょうか?

そうではありませんね。
始業と終業の間には、「休憩時間」があります。
この時間は労働時間ではありません。
つまり、始業時刻から終業時刻までの時間は「拘束時間」。
拘束時間から休憩時間を差し引いたのが「労働時間」になるのです。

この関係を整理すると、次のようになります。

拘束時間=終業時刻-始業時刻
労働時間=拘束時間-休憩時間

たとえば、始業9:00、終業18:00、休憩12:00~13:00の1時間だとすると、拘束時間は9:00~18:00の9時間、労働時間は拘束時間から1時間を差し引いた8時間ということになります。

 

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2019年01月10日

就業規則の実際(18)~労働時間、休日、休暇(1)

労働時間の始点と終点

労働時間はどこからどこまでか?
分かりきっているようで、意外とはっきりしないのがこの点です。

たとえば、始業時刻前の準備や、業務終了後の後片付けは、労働時間に入るのか入らないのか?
着替えや身支度は?


判例や行政解釈などからは、次のよ点が判断基準になると言えます。

・使用者の命令があるか
・法令で義務づけられているか
・黙示的な命令があるか
・当該作業を行うために必然的なものか
・当該作業を行うに際して通常必要とされるものか


労働者には、業務に必要な状態で労務を提供する義務があります。
たとえば、自宅でスーツを着用する時間は、労働時間にはなりません。
したがって、会社に着いてから制服に着替える、安全靴・ヘルメットを着用する、机の上を整理するなどの準備作業は、労働時間とはなりません。
しかし、こうした準備作業が会社の指揮命令下に、集団的組織的に行われる場合は、労働時間となります。

 

就業規則に明記する

現実の場面では、労働時間に入るかどうか、判断に迷うことも少なくありません。
こうした混乱を避けるために、就業規則に労働時間の定義をしておくことをお勧めします。

 

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2019年01月10日

就業規則の実際(16)~服務(6)

パソコン、インターネット等の私的利用の禁止

会社のパソコン、ネットワークは、業務のために用意された、会社の資産です。
従業員はこれらを業務以外の目的で使用することはできません。

また、従業員は、勤務時間中は職務専念義務を負っています。
勤務時間中に私的なメールを送受信したり、業務には関係のないWebサイトを見ることは、職務専念義務違反となります。

さらに、そのような行為から、社内システムがウィルスに汚染されたり、外部に損害を与えて賠償責任を取らされるといったリスクもあります。

したがって、パソコン、インターネット等の私的利用を禁止することは、当然できますし、しなくてはなりません。

 

会社は従業員のインターネット閲覧や電子メールの私的利用をチェックすることはできるか

結論から言うと、可能です。
ただし、個人情報保護、プライバシー侵害の問題がからんできますので、注意が必要です。

この点について済産業省の「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を
対象とするガイドライン」は、以下のように定めています。

①モニタリングの目的、すなわち取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、社内規程に定めるとともに、従業者に明示すること
②モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること
③モニタリングを実施する場合には、あらかじめモニタリングの実施について定めた社内規程を策定するものとし、事前に社内に徹底すること
④モニタリングの実施状況については、適正に行われているか監督、または確認を行うこと


以上から、次の点に留意してチェックを行えばいいでしょう。

・チェック目的が合理的であること
あくまでも私的利用の監視(防止)を目的に行わなくてはなりません。
個人のプライベート情報の収集などにモニタリング結果を利用してはなりません。

・責任者とその権限を定めること

・就業規則に明記し、事前に社内に周知徹底すること

 

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2019年01月09日

働き方改革への取組(14)~労働時間短縮への取組⑬

労働時間の上限規制について、改正法ではどうなるのかをお話してきました。

いろいろと多岐にわたっていますが、整理すると次の2つが柱になっています。

①36協定による限度時間が法律の条文に「格上げ」され、遵守義務となった
②36協定の特別条項に上限規制が新設された

①の限度時間そのものはこれまでとほぼ同じです。
その点では、実務的な影響はそれほど大きくないと思われます。
しかし、これまでが「基準に適合したものとなるようにしなければならない」とされていたのが、法改正で「限度時間を超えない時間に限る」と、限度時間が遵守義務であることを明確にうたっています。

位置づけが大きく異なるのです。
ここは十分念頭におく必要があります。

一方、②の上限規制の新設は、既に特別条項付き36協定を締結している会社、これから締結しようとしている会社には影響が大きいと思われます。

ここでいたっている「1ヶ月100時間未満」と「2ヶ月ないし6ヶ月の平均80時間以内」という数字そのものは、労災保険の「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」、いわゆる「過労死認定基準」にでてくる数字です。

そのため、この時間を超えて時間外をさせ、その結果働く人が健康を害したり、最悪死に至ったような場合、会社の責任度合いが重くなるリスクが高くなります。

そのため、これまでも特別条項付きの36協定を結ぶ場合、この過労死認定基準を念頭に置いていた会社も多いと思います。

しかし、労働基準法に明確に規定された意味は大きいですね。
この時間を超えたら、労災事故等の有無にかかわらずただちに法違反となるわけですから。

 

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2019年01月09日

就業規則の実際(15)~服務(5)

兼業禁止規定はどこまで有効か?

兼業禁止規定を設けている会社は少なくありません。

会社の従業員は、会社に対して「職務専念義務」を負います。
つまり、会社の業務に専念し、誠実に業務を遂行するということです。

その点から、会社の業務以外の業務に就く、いわゆる兼業を禁止することも、妥当なことと言えます。

ただ、このような規定を、プライベートな時間にまで及ぼすことができるかという問題があります。
上記の職務専念義務が対象になるのは、原則として就業時間中のことです。
就業時間外は、本人の自由な時間です。


しかし、プライベートな時間に対して、会社の規制は一切及ぶことはないのか?
あるいは、及ぼすことはできないのか?

そのようなことはありません。

この点は、「服務(2)」のパートでもお話した通り、会社の名誉を傷つけるような行為は、私生活上といえども禁止できます。
飲酒運転も同様です。(「服務(3)」)

では、兼業はどうなのでしょうか?

この点、判例は、会社の信用などに与える影響や本業に与える影響を判断基準にしています。

「労働者がその自由なる時間を精神的肉体的疲労回復のため適度な休養に用いることは次の労働日における誠実な労務提供のための基礎的条件をなすものであるから、使用者としても労働者の自由な時間の利用に関心をもたざるをえず、また、兼業の内容によっては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、対面が傷つけられる場合もありうるので、従業員の兼業の諾否について、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮した上で会社の承諾にかからしむる旨の規定を就業規則に定めることは不当とはいいがたい」

つまり兼業制限が有効とされるのは、次のような場合になります。

・兼業が不正な競業にあたる場合
・働き過ぎによって健康を害するおそれがある場合
・兼業の態様が会社の社会的信用を傷つける場合


したがって、個々の事情にかかわらず、あらゆる兼業を禁止するというわけにはいきません。

 

会社の許可を必要とするということは?

兼業が問題ないかどうかを、従業員が勝手に判断していいものではありません。
会社にどのような影響があるかを、会社が判断する必要があります。

したがって、兼業を会社の許可制にするという規定を設けるのは有効です。

 

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2019年01月08日

就業規則の実際(14)~服務(4)

企業秘密の保護

技術情報、新製品情報、アライアンス情報、ノウハウ情報など、企業秘密は多岐に渡ります。
企業秘密の保持は、会社の存亡に響く重要事項です。

PC、インターネットが一般化したデジタル社会の今日、会社は情報保護に、最新の注意を払わなくてはなりません。

就業規則とは別に、情報保護規定を設けることも、検討した方がいいでしょう。

 

関連法制との関係

まず上げられるのが「個人情報保護法」、そして、同法施行に伴い厚生労働省が「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」を出しています。

また、不正競争防止法では営業秘密を、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義し、それを不正の競業その他の不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、または開示する行為を不正競争としています。
同法は、営業秘密としての要件を具備し、かつ不正の利益を得る目的がある行為を禁止しています。

 

在職中は秘密保持義務を当然に負う

会社の従業員が、企業秘密を保持しなくてはならないのは、当然のことと言えます。
これは、仮に就業規則などに明記されていなくても、労働契約上当然に発生する、「誠実義務」のひとつと言っていいでしょう。

判例でも、「労働者は労働契約に伴う付随義務として、信義則上、使用者の利益をことさら害するような行為を避けるべき義務を負うが、その1つとして使用者の業務上の秘密を漏らさないとの義務を負うものと解せられる」として、労働者の守秘義務を労働契約に当然に付随する義務と定義しています。

 

退職後の秘密保持義務、競業避止義務

ここは議論のあるところです。

退職後も、どこまでその人は守秘義務を負うのか?
この義務が無制限に存在するのだとすると、労働者の自由を不当に制約することになりかねません。

これについては、会社と本人との間に、秘密保持に関する特別な合意がある場合に、退職後の秘密保持義務が成立すると考えられます。

また、競業避止義務とは、競合関係にある会社への就職をしないという義務です。
社員がライバル会社に転職して、身につけたノウハウ、知識、情報などを活用されるのは、会社としては避けたいところです。

しかし、これも、職業選択の自由との関係もあり、制約があります。
やはり、特別な合意がある場合に成立すると考えていいでしょう。
そして具体的な判断にあたっては、次のような要素が考慮に入れられます。

・労働者の地位
・競業制限の対象期間、地域などからみて労働者の職業選択の自由を不当に制限していないか
・競業制限に対する代償措置


では、退職後の守秘義務、競業避止義務を有効にするためには、何をしたらいいのでしょうか?

まずひとつは、就業規則に、退職後の守秘義務、競業避止義務に関する定めを置くことです。
期間、地域など、できるだけ具体的なものにした方がいいでしょう。
ただ、業務内容、労働者の地位によって、一概に定義できないこともあるでしょうから、その点も考慮に入れた定め方をします。

もうひとつは、退職時に誓約書を書いてもらうことです。
これは個別的なものになりますから、就業規則よりも具体的にします。

 

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2019年01月08日

働き方改革への取組(13)~労働時間短縮への取組⑫

時間外限度規制等の施行日

ここまでお話ししてきた事項の施行日は平成31年(2019年)4月1日です。

ただし、中小企業については1年後の平成32年(2020年)4月1日となっています。

※今回の法改正は、内容によって施行日が異なります。
どこかのタイミングでひとまとめにしますが、読者の皆様も注意してください。

 

60時間を超える時間外割増率にかかる中小企業の猶予措置がなくなる

会社は時間外労働をさせたときは、割増賃金を支払わなくてはなりません。
時間外手当とか残業手当、残業代と一般に言われているものですね。

割増賃金の「割増率」は、次のように労働基準法で定められています。

・時間外労働:25%以上
・深夜労働:25%以上
・休日労働:35%以上

また、時間外労働が60時間を超えた場合は、割増率が50%となります。
これは平成22年4月1日施行の改正労働基準法。既にそうなっているということですね。

ただし、中小企業については適用猶予となっていました。
これが今回の法改正で撤廃されます。

猶予措置がなくなるのは平成35年(2023年)4月1日です。
中小企業は要注意ですね。

 

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2019年01月08日

就業規則の実際(13)~服務(3)

飲酒運転への規制強化を図る会社が増えている

就業規則に、飲酒運転に関する規制を入れる会社が増えています。

飲酒運転に起因する悲惨な事故が後を絶たない中、飲酒運転に対する社会の目もかつてないほど厳しくなっています。

そのような社会的情勢にあって、会社の従業員が飲酒運転で事故を起こした場合、会社の信用や名誉に与える影響は、計り知れないものがあるでしょう。

会社が従業員の飲酒運転に対する取締りを強化するのは、企業の社会的責任という点からも、当然のことと言えます。

 

就業中の飲酒運転

これは当然禁止されます。
飲酒運転に限らず、就業中に酒気帯び状態でいること自体、当然禁止行為となります。

ただ、飲酒運転・酒気帯び運転禁止を就業規則で明確にすることも考えられます。
特に、業務で乗用車などを使うような場合、明記した方がベターです。

 

私生活における飲酒運転

私生活上でも、会社の名誉や信用を傷つける行為を禁止することはできます。
したがって、「常に品位を保ち、私生活上も含めて会社の名誉を傷つける行為をしないこと」というような規定だけでも、もし従業員が飲酒運転をした場合に処罰をする根拠になります。

しかし、より明確に飲酒運転を禁止する条文を設け、飲酒運転に対して会社は厳罰をもって臨むことを示すべきでしょう。

 

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2019年01月07日

就業規則の実際(12)~服務(2)

私生活に対する会社の規制はどこまで可能か

私生活は、その人の自由に属することです。
これは当然のこと。

しかし、私生活上のことでも、会社の信用や秩序に悪影響を及ぼすようなことをされては困ります。
したがって、そのような行為を就業規則で規制することは可能です。


この点について判例は次のように指摘しています。

「営利を目的とする会社がその名誉、信用その他相当の社会的評価を維持することは、会社の存立ないし事業の運営にとって不可欠であるから、会社の社会的評価に重大な悪影響を与えるような従業員の行為については、職場外でされた職務遂行に関係のないものであっても、これに対して会社の規制を及ぼしうることは当然認められなければならない」(日本鋼管事件・最高裁・昭和49年3月15日)

 

「名誉を傷つける行為」とは?

どのような場合に、「名誉を傷つけた」と言えるのでしょうか?

再び、判例を引用します。

「従業員の不名誉な行為が会社の対面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない」


たとえば、法令違反でも…
・駐車違反をしてしまった
・公共の器物を破損してしまった
・公共の器物を破損し、そのことが新聞に報道された
…それぞれ、どう考えればいいでしょうか?

「駐車違反ぐらいなら…」
そう考える人は多いと思います。
しかし、そう言い切っていいでしょうか?
その人が、もし交通警察官だったら?
まぁ、これは極端な例ですが…。会社員ではないし。
ただ言いたいのは、行為それ自体を単独で取り上げても、判断は難しいということなのです。

判例にもある通り、次の諸般の事情を考慮して、総合判断することになります。

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2019年01月07日

働き方改革への取組(11)~労働時間短縮への取組⑩

時間外限度時間、絶対的上限規制には例外がある

ここまで時間外限度時間(月45時間以内など)、絶対的上限規制(特別条項を結んだ場合の上限)について解説してきましたが、次の事業・業務には例外・猶予措置があります。

・建設の事業
・自動車運転の業務
・医師
・鹿児島県、沖縄県における砂糖製造業
・新技術・新商品等の研究開発業務

 

◆建設の事業の猶予措置

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

◆自動車運転の業務の猶予措置

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

5年経過後は次のようになります。

・時間外限度時間は適用されます。
・時間外の絶対的上限は引き続き適用除外となりますが、1年の時間外労働の上限は960時間と緩和されています。(通常は720時間)

◆医師

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

◆鹿児島県、沖縄県における砂糖製造業

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は絶対的上限規制のうち、「1ヶ月100時間未満」と「2ヶ月ないし6ヶ月の平均80時間以内」は適用されません。

◆新技術・新商品等の研究開発業務

時間外の限度時間規制は適用されません。(絶対的上限規制は適用されます)。

また指針には次のような記載がありますので留意してください。」

・時間を定めるに当たっては、限度時間を勘案することが望ましいことに留意しなければならない
・限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置を定めるように努めなければならない。

 

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2019年01月07日

働き方改革への取組(12)~労働時間短縮への取組⑪

36協定の特別条項の内容は

特別条項の内容を改めてお示しします。

① 限度時間を超えて労働させる事由
② 限度時間を超えて労働させたときの割増賃金率
③ 特別条項発動の手続
④ 健康・福祉確保措置

このうち①~③はこれまでと同じです。

④の「健康・福祉確保措置」が今回新たに定められた事項ですね。
どのような措置を取るかは労使で決めることになりますが、指針は、次に掲げるもののうちから協定することが望ましいとしています。

1)面接指導:労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること。
2)深夜労働の抑制:法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること。
3)勤務間インターバル:終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。
4)特別休暇:労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。
5)健康診断:労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること。
6)連続休暇:年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること。
7)相談窓口:心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。
8)配置転換:労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。
9)保健指導等:必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受
けさせること。

 

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2018年12月27日

就業規則の実際(11)~服務(1)

服務とは何か?

 

就業規則には、ほぼ例外なく「服務」に関する規定が入っています。
会社によっては、別規則として「服務規程」を設けている場合もあります。

働く人と会社は、労働契約、つまり労働者は労働を提供し、会社はその対価として賃金を支払うという「有償双務契約」を結びます。

労働契約関係に入ると、労働者は会社の指揮命令下に入り、労働時間中は職務に専念する義務を負います。

このような従業員の職務専念義務を規定化したのが、服務規定です。

また、私生活上でも、会社の従業員として守るべき義務があります。
たとえば、会社の信用を害するような行為をしてはならないといったことです。
このようなことも、服務規程の中で規定します。

つまり従業員としての身分に伴い発生する義務を規定したものと言っていいでしょう。

 

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2018年12月27日

就業規則の実際(10)~採用(7)~試用期間(3)

試用期間の延長について

試用期間が満了した場合、会社は次のいずれかの判断をします。
1)正式採用する
2)本採用拒否とする(留保解約権の行使、つまり解雇)

ただ、こんな場合どうするか?

・能力や勤務態度など、従業員としての適格性に疑問符がつく
・しかし、教育指導によっては改まる可能性も残されている
・見所もあるので、もう少し様子を見たい

こういう場合、試用期間を延長するという方法があります。
ただ、このような手を、会社は自由に取れるわけではありません。

試用期間の延長が許されるには、就業規則などに延長規定があり、かつ、その延長にが合理的な理由があることが必要です。

また、延長する場合も、期間を区切る必要があります。
そして、不当に長い期間とすることは許されません。

 

試用期間と勤続年数

試用期間は勤続年数にカウントするのでしょうか?

年次有給休暇の発生要件としての勤続期間を見る場合、試用期間も含めなくてはなりません。
ただし、退職金や永年勤続表彰など、会社として独自に定める制度については、自由に決めて差し支えありません。

なお社会保険等は、試用期間中でも加入させなくてはなりません。

 

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2018年12月27日

働き方改革への取組(10)~労働時間短縮への取組⑨

時間外限度時間、絶対的上限規制には例外がある

ここまで時間外限度時間(月45時間以内など)、絶対的上限規制(特別条項を結んだ場合の上限)について解説してきましたが、次の事業・業務には例外・猶予措置があります。

・建設の事業
・自動車運転の業務
・医師
・鹿児島県、沖縄県における砂糖製造業
・新技術・新商品等の研究開発業務

◆建設の事業の猶予措置

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

◆自動車運転の業務の猶予措置

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

5年経過後は次のようになります。

・時間外限度時間は適用されます。
・時間外の絶対的上限は引き続き適用除外となりますが、1年の時間外労働の上限は960時間と緩和されています。(通常は720時間)

◆医師

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

◆鹿児島県、沖縄県における砂糖製造業

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は絶対的上限規制のうち、「1ヶ月100時間未満」と「2ヶ月ないし6ヶ月の平均80時間以内」は適用されません。

◆新技術・新商品等の研究開発業務

時間外の限度時間規制は適用されません。(絶対的上限規制は適用されます)。

また指針には次のような記載がありますので留意してください。」

・時間を定めるに当たっては、限度時間を勘案することが望ましいことに留意しなければならない
・限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置を定めるように努めなければならない。

 

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2018年12月26日

就業規則の実際(9)~採用(6)~試用期間(2)

試用期間の長さはどのぐらい?

試用期間は、あらかじめ期間を定めなければなりません。

この期間は、前回お話した通り、「解約権留保付の労働契約」期間。
働く人にとっては、不安定な期間です。

そのため、「従業員としての適格性を判断できるまでの期間とする」というような、終期のはっきりしない定めは許されません。

では期間はどのぐらいにするか?
これに関する法律上の規制はありません。
ただ、上記の通り、試用期間というのは働く人にとっては不安定な期間ですから、それを不当に長くするのは許されないと考えていいでしょう。

 

労働基準法との関係

同法第21条には、
「前条の規定(解雇予告)は、次の各号の1に該当する労働者については適用しない。但し、(中略)第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、この限りでない。
(1)日日雇い入れられる者
(2)2カ月以内の期間を定めて使用される者
(3)季節的業務に4月以内の期間を定めて使用される者
(4)試の使用期間中の者

--こう定められています。

この「第4号」が、試用期間中の従業員を指すのですが、この条文を見て、「試用期間は14日以内でなくてはならない」とか、「14日を超えたら試用期間満了後の本採用拒否はできない」と思っている方がいますが、これは誤解です。

ここで言っているのは、あくまでも、「解雇予告または解雇予告手当が必要かどうか」です。
つまり、14日を超えたら、試用期間であっても解雇予告(または解雇予告手当)が必要だと言っているだけのことなのです。

 

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2018年12月26日

就業規則の実際(8)~採用(5)~試用期間(1)

試用期間とは?

従業員を採用するときは、筆記試験、面接など、さまざまな選考試験を行い、適格と判断できる人を採用します。

しかし、短期間の採用試験だけでは、ほんとうに従業員として適格かどうかは分かりません。

従業員としての適格性を判断するためには、実際に仕事をさせてみるしかありません。
そのために、紹介予定派遣や、入社当初は有期雇用とするといった方法をとる会社もあります。

ただ、それよりも一般的なのが、入社当初の一定期間を「試用期間」、つまり、試みに用いる期間とし、その期間中の勤務態度、能力、適性などを評価して正式採用とするかどうかを判断するという方法です。

もしこの評価の結果、従業員として不適格であると判断されれば、本採用拒否ということになります。

このような制度を設ける場合、就業規則に試用期間を設ける旨、期間、不適格の場合の取扱などを定めます。

 

試用期間の法的位置づけは?

試用期間は、「解約権留保付きの労働契約が成立」しているとされます。
つまり、「試用期間中に従業員としての適格性を判定し、試用期間の試用の結果、不適当と判断されたときには労働契約を解約しうるとの留保がなされている」ということです。

採用内定と、あまり変わらないように見えますが、試用期間は既に雇用関係に入っているという点が、内定とは決定的に異なります。
そのため、試用期間終了後の本採用拒否は、「解雇」。
ここが決定的に異なりますし、その分、使用期間満了後の本採用拒否は、採用内定取消よりハードルが高いと言っていいでしょう。

したがって、試用期間中や終了後の本採用拒否は、解雇にあたります。
そのため、14日以内の場合を除き、30日以上の解雇予告または平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払が必要となります。

 

それでは、「本採用拒否」はどんな場合にできるのでしょうか?

広い解雇の自由が認めらる。

留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解するのが相当である」

--としています。

1)客観的に合理的な理由が存在すること
2)社会通念上相当であること

この2つが必要だということですね。

 

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2018年12月26日

働き方改革への取組(9)~労働時間短縮への取組⑧

これからの人事制度を、働き方改革法制を踏まえて考えていこうというシリーズ、いまは労働時間・残業時間規制についてお話ししています。

 

時間外労働にかかる規制を整理すると

会社が従業員に時間外労働を適法に命じるためには、次の要件を満たしていなくてはなりません。

① 36協定を締結し、就業規則に時間外を命じる旨が定めてある。
② 協定に定める時間外時間は限度時間以内になっている。
③ ②の限度時間を超えることがある場合は「特別条項」を36協定に定めている。
④ ③の場合でも、時間外は「絶対的上限」の範囲内である。

 

36協定の締結について指針が出されています

36協定はこれまで、時間外労働の抑制になっていないとか、形骸化しているといった批判がされていました。

私見ですが、このことが裁量労働制などの柔軟な労働時間制度を普及させる足枷になっているように思います。
「時間外労働が事実上の青天井になっている状況で労働時間規制を緩めたら、さらに酷いことになってしまう」というわけです。
生産性を上げ、競争力を高めていくうえで、新しい働き方の推進は必須だと思いますが、長時間労働の解消はその前提条件になるのです。

この問題はまた、別の機会にじっくりと考えてみたいと思います。

さて、上記の問題認識を受けて、今回の法改正に伴い「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」と題する指針が出されました。

指針ではまず、「労使当事者の責務」として、次のように指摘しています。

「労働時間の延長及び休日の労働は必要最小限にとどめられるべきであり、また、労働時間の延長は原則として同条第三項の限度時間を超えないものとされていることから、労使当事者は、これらに十分留意した上で時間外・休日労働協定をするように努めなければならない。」

限度時間を超えないことを改めて謳っています。これは当然のことですね。

この指針、協定を結ぶ際に注意すべき事項が詳細に書かれています。
次回も続けます。

 

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2018年12月25日

就業規則の実際(7)~採用(4)~労働条件明示

労働契約締結時に主要な労働条件を明示しなければならない

労働基準法では①労働契約の締結時に労働条件を明示すること、②賃金など一定の事項については書面により明示することを義務づけています。

具体的には次の通り。

<労働条件明示義務>

「法的義務」を超えて

労働条件の明示は労基法上の義務ですが、「言った、言わない」というトラブルを避けるという意味もあります。
トラブルのない、適切な労務管理という点でも、書面できちんと示すことが重要です。

 

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2018年12月25日

就業規則の実際(6)~採用(3)~身元保証人

身元保証とは

採用内定者や入社者に、身元保証書の提出を求める会社は多いと思います。

身元保証契約とは、従業員が会社に損害を与えた場合に、身元保証人が会社にその損害を賠償することを約するものです。つまり、身元保証人と会社との契約です。

◆身元保証人の責任

身元保証契約を結んだからといって、身元保証人に損害のすべてを賠償させることはできません。
使用者の過失の有無、身元保証を引き受けるに至った経緯等諸般の事情を考慮して裁判所が決定することとされており、通常は全額の賠償が命ぜられることはありません。

 

身元保証の期間

また、身元保証契約の有効期間を定める場合は5年を超えることはできません。また、期間を定めなかったときは、契約のときから3年とされます。

 

身元保証書の提出を拒否されたら

採用時の必要書類を、正当な理由無く提出しない場合、懲戒処分の対象となります。
これは問題ありません。

では、「採用取り消し」、つまり解雇処分まで可能でしょうか?

これは、①提出書類が入社後の業務遂行や諸手続きを行うに当たって必要性の高いものであるか、②書類の不提出によって雇用関係に重大な支障が生じるか、③当該書類の提出が採用の条件とされているか、などによって、有効性が判断されます。

身元保証書については、従業員の故意または過失によって会社に生じ得る損害がどの程度の大きさであるか等が考慮されます。

 

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2018年12月25日

就業規則の実際(5)~採用(2)~提出書類(2)

個人情報の取得には配慮が必要

個人情報の取得は、業務の目的の範囲内で収集、保管、使用しなければなりません。

また、厚生労働省は以下のような項目について、面接時に質問したり、情報を収集したりしないよう十分配慮するようにという行政指導をしています。

<本人に責任のない事項>

本籍・出生地に関すること
家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)
住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
生活環境に関すること(生い立ちなど)
<本来自由であるべき事項>

宗教に関すること
支持政党に関すること
人生観、生活信条に関すること
尊敬する人物に関すること
思想に関すること
労働組合・学生運動など社会運動に関すること
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<その他>

身元調査などの実施
合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

 

その他のポイントは?

(1)学歴チェック
新卒の採用選考の際に、学校の「卒業見込証明書」を提出させる会社は少なくありません。 ところが、入社の段階で「卒業証明書」を出させない会社が意外とあります。

その場合、その人の最終学歴は、何をもって確かめるのでしょうか? 「当社は学歴不問採用だから」ということであれば、それでもいいのですが。
(であれば、「卒業見込証明書」も不要ですね)。

また、卒業できなかった学生の内定をどうするかは、会社の人事政策次第です。

・そのまま入社させる
・単位取得に差し支えのない範囲で会社に来てもらう。(学校は卒業させる)
・採用取り消しにする …

いろいろな方法があります。

最悪なのは、「そんなはずではなかった」というケース。
つまり、卒業したと思っていたら、実はそうではなかったという場合です。

そんなトラブルを避けるためにも、入社時に卒業証明書を提出させるのがいいですね。

(2)住民票記載事項証明書
今どき住民票を提出させている会社はないと思いますが…

現住所の把握は必要です。
そのため、この書類を出してもらいます。

 

必要書類の提出がなかったら

期限までに書類等の提出がなかったら、会社としてはどう対処すべきでしょうか?
これは実務上も困ることが多いですし、何より、入社の時点から会社の指示に従わないの ですから、厳正に対処すべきです。

必要書類を提出しないのは、労働者の義務違反として、適格性が疑われます。
就業規則にもその点を明示しておくのが望ましいですね。

 

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2018年12月23日

就業規則の実際(4)~採用(1)~提出書類(1)

入社する社員には何を出してもらう?

就業規則には採用・入社時の手続や提出書類のことを記載します。
こういうことは、たとえ就業規則に記載していなくても、実務上必要になります。

たとえば採用選考の段階では、履歴書等の書類を出してもらいます。
また、入社が決まった人からは、年金手帳や現住所、扶養家族に関する書類を出してもらいます。

会社が提出を求めるものが常識的な範囲のものであれば、定められた期限までにこうしたものを揃え、提出するのが、「常識」です。

しかし、世の中いろいろな人がいます。

たとえば…

・ずぼらで期限までに提出しない人
・特別な信条をもっていて、提出に応じない人

こういう場合、会社は提出を「命令」しなければなりません。
また、最悪の場合、採用取り消しということもあります。

こうした人事措置の根拠になるのが、就業規則になるのです。

また、さきほど「常識的な範囲のもの」と書きましたが、これはどのようなものでしょうか?
この点も、きちんと考えなくてはなりません。

 

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2018年12月23日

働き方改革への取組(8)~労働時間短縮への取組⑦

36協定の内容は

これまでお話ししてきた通り、時間外労働をさせるためには「36協定」という労使協定を結ばなくてはなりません。
36協定で何を決めておかなくてはならないかは、これまでも決まっていました。
「働き方改革への取組(3)~労働時間短縮への取組②」をご覧ください)

 

法改正で36協定の内容はどうなるか

今回の法改正で、36協定に記載しなくてはならない事項が法36条第2項に定められました。
これまでは「施行規則」だったので、格上げされたかたちになっています。

内容は次の通り。

①労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
②対象期間(1年間に限る)
③労働時間を延長し、又は休日に労働させることができるのはどんな場合か
④対象期間における1日、1ヶ月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
⑤労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項

①~③についてはこれまでとほぼ同じです。
変わったのは④の期間。
1日、1年は同じですが、「1ヶ月」というのがこれまでは「1日超3カ月以内の期間」でした。
私の知る範囲では、この部分は1ヶ月としている会社が多いので、実務的にはそれほど影響はないと思われますが、もし1週間とか、4週間、3ヶ月などという具合に、1ヶ月以外の期間で協定をしている会社は、法改正後はここを1ヶ月に変更する必要があります。

⑤は次の通りです。
1)協定の有効期間
2)1ヶ月、1年の起算日
3)特別条項について
・限度時間を超えて労働させる事由
・限度時間を超えて労働させたときの割増賃金率
・特別条項発動の手続
・健康・福祉確保措置

1)、2)は現在と同じです。
変わったのは特別条項に関する部分ですね。

次回は特別条項がどう変わったかを見ていきます。

 

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2018年12月23日

就業規則の実際(3)~総則規定(3)~従業員の定義

「正社員」って誰のこと?

会社には、いろいろな雇用形態・勤務形態の人たちが働いています。
こういう人たちを「正社員」、「パートタイマー」、「契約社員」などといった呼称をつけて、会社は人事管理をしています。

呼称をどうするかは、会社の自由です。
しかし、定義は明確にしておかなくてはなりません。

 

明確にしていなかった場合のリスク

会社によっては、特に深く考えずに、パート、バイト、嘱託といった呼称をつけていることがあります。

結構リスキーです。

「アルバイト」と称しているものの、勤務時間も仕事の内容も、雇用期間も正社員と全く変わらなかったとします。
違いは、賃金が時給制であることだけ。
会社も、「アルバイトだからアルバイトなんだ」としか説明できない…

こういう状況で、当のアルバイトが社員並み待遇を求めてきたらどうなるでしょうか?
紛争になった場合は、諸般の状況を総合的に勘案して判断されることになるのですが、会社は有利な状態にあるとは言えません。

まずは就業規則で、会社で働く人の定義を明確にしておきましょう。

 

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2018年12月21日

就業規則の実際(2)~総則規定(2)~適用範囲

適用範囲は明確に

就業規則が適用されるのは、誰になるのか?
何も決められていなければ、その会社が雇用している労働者全員になります。

こう書いて、「そうだね」と思っている方に、ひとつ質問です。

御社には、正社員の他に、パートタイマーや契約社員、臨時社員といった、「非正社員」はいませんか?

もしいる場合、たとえばパートタイマーの待遇は、正社員と同じですか?

「そんなことはない」
…こういうお答えは99%になるでしょう。

正社員とは異なる形態の従業員を活用するのは、それなりの理由があるからです。
ということは、正社員と異なる部分がどこかにあるはずです。


・賃金
・労働時間
・雇用期間
…その他

たとえば…
・単純定型業務を担当してもらい、時間あたり賃金を低くする。
・社員と仕事のレベルは同じ(したがって時間あたり賃金は同じ)だが、労働時間は短い。
・新製品開発のために1年契約でプロフェッショナルを雇う
…など、さまざまなケースがあります。

こういう人たちに正社員の就業規則は適用しません。

しかし、もし就業規則に、「規則の適用範囲」が定められていなければ、こういう人たちにも正社員の就業規則が適用されることになります。

 

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2018年12月21日

就業規則の実際(1)~総則規定(1)~目的

ここは、意外とおざなりにされがちです。

【よくあるパターン】
「この規則は、株式会社○○の社員の労働条件、服務規律などを定めたものである。」

まぁ、「全然ダメ」とまでは言いませんが…

ただ、この条文が、就業規則のどこにあるかを考えてみてください。
「第1条」にくるのが一般的ですよね?
つまり、就業規則を手にした人の目に真っ先に飛び込むのが、この一文なのです。
いわば、就業規則の、「リード文」。
そこが、このような無味乾燥な文章だけにしてしまっては、もったいない。

では、何を書けばいい?

ここに、会社の経営理念や、会社のミッションを入れるのです。

会社が競争を勝ち抜いていくためには、人材の活性化、戦力化が必須です。
そのためには働く人と組織との一体感、方向性やゴールイメージの共有がなくてはなりません。
これがあって、従業員のモチベーションが上がり、活力ある組織が出来上がるのです。

それを実現するためには、会社の理念がどこにあるか、どこを目指しているのかを明確にし、それを会社と従業員が共有している必要があります。

どうやって?
方法はいろいろありますが、もっとも有効なツールのひとつが、就業規則です。
ぜひ、そのような活用をしましょう。

 

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2018年12月21日

ここがポイント!就業規則作成・変更

あるべき姿から現状診断

就業規則の作成・見直しにおいて最初にやるべきことが「現状診断」です。

◆作成時の現状診断

新たに就業規則を作成する際に行う診断は、会社の人事・労務の現状診断です。
会社の労働時間管理、賃金決定基準や支払方法といった、現実に会社で行われている人事・労務管理施策を、就業規則の記載項目に沿った形で洗い出していきます。 

◆見直し時の現状診断

就業規則見直しの際、目の前にある就業規則を眺め、「ここはまずいな」とか「この項目が抜けている」とチェックを入れていくというのが、割とよく見られるやり方です。

いま存在する就業規則をじっくり読み込み、そこから問題点を探していくということも、必要なことです。
しかし、これだけで十分な見直しはできません。漏れ・抜けが生じます。
見直し対象の就業規則現物に、引きずられてしまうのです。

したがって、就業規則見直しにあたっては、「本来こうあるべき」「こうあってほしい」という、「目指す姿」からのチェックが必要なのです。

そのために「就業規則チェックリスト」を用意し、リストを元に就業規則をチェックしていきます。
こうすることにより、抜けている項目は見直すべき項目が明らかになるとともに、内容を漏れなくチェックできます。

 

不利益変更への対応

◆就業規則は「生き物」である

就業規則はいったん定めたあとも常に見直し・変更が繰り返されます。
法改正への対応もありますし、そもそも、会社の人事制度を具体的な文書としたものが就業規則ですから、こうしたものが変われば、当然就業規則も変更されます。

さらに、企業業績の悪化に伴う変更もあります。

就業規則の変更が問題になるのは、労働者にとって不利な変更の場合です。

◆就業規則の不利益変更と労働契約

労働契約法第9条には、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない」と、労働条件の不利益変更は合意が原則であることをまず述べています。

そのうえで、次の第10条の場合は、「その限りではない」としています。

「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。(以下、略)」

つまり、次の2つの要件を満たしている場合は、たとえ個々の労働者が同意をしていなくても、就業規則の不利益変更が可能だということです。

(1)就業規則変更の内容が合理的である
(2)変更後の就業規則を周知している

この「合理的」の判断基準は以下の通りとなります。

①労働者の受ける不利益の程度
②労働条件の変更の必要性
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況
⑤その他の就業規則の変更に係る事情

◆労働者の受ける不利益の程度と労働条件の変更の必要性

これは、変更をしないままでいた場合に経営に与える悪影響の度合いと、変更により労働者が被る不利益の度合いとのバランスということです。

両者のバランスを考えて、労働者に過剰に不利益とならないようにしなければ、その不利益変更は認められません。
特に、賃金や退職金などの重要な労働条件の不利益変更については、変更しなければ会社の存続にかかわるなど、「差し迫った経営の危機」に基づいたものであることが求められます。

◆変更後の就業規則の内容の相当性

就業規則の変更内容が、その時点の日本社会の一般的な通念・常識から見て妥当かどうか、ということです。
変更の代償として行われる措置や、関連する労働条件の改善状況なども判断材料に含まれます。

◆労働組合等との交渉の状況

「労働組合等」には、労働者の過半数が所属する労働組合から、少数労働組合、労働者の過半数代表者、労働者で構成される親睦団体まで、労働者の意思を代表するものが幅広く含まれます。(「労働契約法の施行について」(平成20年1月23日基発第0123004号)。

就業規則の不利益変更を実施するに当たって、労働者側と誠意をもって話し合ったかどうかが問われるということです。

 

戦略的な人事制度変更と就業規則

就業規則は、人事制度改定に合わせて変更することもあります。
この場合、業績悪化などの差し迫った経営危機があるために変更するとは限りません。
将来の成長戦略のために、人事制度を改革することもあるからです。

このような戦略的な就業規則変更の場合、結果として労働条件が上がる従業員もいれば、労働条件が下がる従業員もいます。
典型例が、賃金体系を年功序列型から成果・貢献度重視型へ変更する場合でしょう。

このような場合、現実の不利益があるとは限りませんし、人事評価などによって労働条件が上がる人もいれば下がる人もいます。
しかし、一部の社員でも労働条件が不利益になる可能性がある場合は、不利益変更にあたるとされています。
そのため、人事制度改革などに合わせた就業規則の変更の際にも、前述の就業規則の不利益変更の法理が適用されます。 し

かしながら、このような戦略的な就業規則の変更を、経営危機等による就業規則の不利益変更の場合と全く同じ基準で判断するのは、適切ではありません。


人事制度改革に合わせた就業規則変更の場合は、次の5点で合理性を判断するのが適切と思われます。

①制度内容、評価基準が公正・透明であること
②賃金総原資は同じであること
③一定の経過措置が設けられていること
④特定の層に不当な不利益を課すものでないこと
⑤労働組合等と十分な協議を尽くしていること

◆制度内容、評価基準が公正・透明であること

制度が一定のポリシーのもとに設計されており、内容が公開されている必要があります。
特に成果・貢献度重視型の人事制度に変更する場合、ここをしっかり押さえなければなりません。
なかでも、人事評価制度の内容や評価基準を公正・透明なものにすることは、賃金や格付といった重要な労働条件に直結するため、最重要ポイントといえます。

◆賃金総原資は同じであること

人事制度の改革を伴う戦略的な就業規則変更では、「原資イコール」が原則です。
つまり、社員によって賃金が上がったり下がったりしても、社員全体で見れば、変更前と同じ金額を会社が支払っているということです。
もし、新制度移行によって社員に支払う賃金総額が減るようであれば、差し迫った経営の危機が要件とされる可能性が高くなります。

◆一定の経過措置が設けられていること

新人事制度導入によって労働条件が下がる社員に対し、激変緩和措置など一定の経過措置を設けているか否かも、重要な判断基準となります。

◆特定の層に不当な不利益を課すものでないこと

中高年など特定の層を狙い打ちにしたような制度変更は、無効とされる可能性が高くなります。

◆労働組合等と十分な協議を尽くしていること

労働組合や労働者代表などと誠意をもって協議することは、ここでも重要な要件となります。

 

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2018年12月21日

就業規則の機能

就業規則には次の3つの機能があります

 

  • 法を守る~労務コンプライアンスの確立
  • 会社を守る~労務リスク管理
  • 社員を活性化する~人事のアカウンタビリティ

 

法を守る

労使トラブルの増加、雇用問題への関心の高まりを受け、法令遵守の重要性が増しています。

労働基準法をはじめとして、会社が守るべき労働法令は多岐に渡ります。
そして、この分野は改正、新法制定の動きがさかんです。
また、人事労務に関連する法律は、労働法に限りません。
民法、個人情報保護法、公益通報者保護法など、働く人に関連する法律はいろいろあるのです。
会社は、これらをしっかり押さえ、法違反を犯さないようにしなければなりません。

「法を守る」基本となるのが、就業規則です。
就業規則の内容を法令に則ったものにし、内容を周知することが、その第一歩となります。

また、就業規則そのものにも法的規制があります。記載事項、作成手続、周知義務などです。
したがって、就業規則を法に則って作成することも必須です。
法に則った就業規則を作成し、労使ともに就業規則を遵守することが、コンプライアンス経営の基本なのです。

 

会社を守る

会社は訴訟も含め、人を雇うことに伴う様々なリスクに晒されています。

これを「労務リスク」といいます。

この労務リスクは次の3つに分類できます。

コンプライアンスリスク:法令違反が引き起こす、訴訟などのリスク
人的リスク:従業員が直接引き起こすリスク
健康・メンタルヘルスリスク

就業規則は、このような労務リスクを防ぐという機能をも担います。
就業規則の中で服務などに関する事項を明確に定め、周知することによって、従業員の不祥事を防止することが可能になります。

一方、就業規則は、会社も守らなくてはならないルールです。
就業規則により、会社の遵法行動が確立されます。
たとえば、管理職が不法な残業を部下に強いたり、セクハラ行為をすることを、就業規則の整備と周知徹底によって防止することができます。

また、従業員の健康管理やケア体制も、就業規則の整備を通じて行うことができます。
従業員にとって、自社の労働条件や健康管理体制がどうなっているかよく分からない状態は、不安なものです。場合によっては不信感にもつながります。

このようなことを就業規則に明記することにより、従業員は安心して働くことができます。
就業規則整備は、人材の流出阻止にもつながるのです。

このように就業規則は、会社が晒される様々な労務リスクに対し、防波堤の機能を果たします。
そのためには、会社の事業内容、内外の環境などを十分考え、就業規則の役割と機能を理解した上で就業規則を作成する必要があるのです。

 

社員を活性化する

就業規則のバックには、会社の人事制度、さらにいえば会社の人事ポリシーがあります。
就業規則は、会社の、従業員に対する説明責任を果たすツールでもあるのです。
この機能が果たされているかどうかで、従業員のモラール、モチベーションは異なってきます。
たとえば、会社がどのような人材を、どのように処遇するかが、賃金の項目に現れます。 ま
た、会社が従業員を大事にしているかどうかは、安全衛生や福利厚生の項目を見れば分かります。

 

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2018年12月21日

就業規則の内容は?

就業規則に記載すべき事項は労働基準法で定められています。

 

1)から3)までと、3の2)以降では表現が若干異なっていることにお気づきでしょうか。

後者には「定めをする場合には」という言葉があるのに対して、前者にはそれがありません。
つまり1)から3)は、就業規則に必ず定めなくてはいけない「絶対的必要記載事項」であり、3の2)以降は、定めがあれば記載しなくてはならない「相対的必要記載事項」になります。

たとえば、退職金制度は法的義務ではありませんが、もし制度を作ったのなら、就業規則にも入れなくてはならないということです。

就業規則には、入れる・入れない含めて自由に決めていい「任意的記載事項」もあります。
社是社訓、経営理念、人事方針などが該当します。(ここを定めていない就業規則が少なくありませんが、結構重要です)

 

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2018年12月21日

就業規則はこうつくる

就業規則作成の流れ

 

労働者代表からの意見聴取

就業規則の作成・変更を行ったときは労働者の過半数代表者(過半数を代表する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は過半数代表者)の意見を聞かなくてはなりません。

過半数代表者に管理職がなることはできません。
選出にあたっては、何のために選ぶのかを明示した上で、投票、挙手などの方法によらなくてはなりません。会社が指名してはいけません。

また、労働組合はあるけど、組合員が過半数に満たない場合は、別途過半数代表者を選ばなくてはなりません。逆に、労働組合は複数あるが、そのひとつの組合だけで過半数を網羅している場合は、その意見だけを聞けばOKです。

現実には、全く無視することは望ましくありません。

就業規則に限ればそれでも問題ありませんが、少数組合にも団体交渉権はありますから、もし団交の申し入れがあったら応じなくてはいけません。
対応を誤ると、労使紛争につながりかねないので、注意が必要です。

 

労働基準監督署への届出

その上で、所轄労働基準監督署に、労働者代表の意見書を添付して届け出ます。


労働者代表が反対意見を述べても、反対意見を記した意見書を添付すればOKです。
同意は要件になっていません。

とは言え、労働者の過半数代表が反対している就業規則を強行することは、労務管理上も労使関係上も望ましくありません。
協議を尽くして、理解を得ることが大切です。

もし過半数代表が、意見を述べること自体にも反対したらどうなるのでしょうか。
その場合、意見を求めたことが客観的に明らかになる書面を添付します。

 

作成・届出の「単位」

就業規則の作成・届出は、「事業場」単位です。会社全体ではなく、場所を単位とします。
従って、支店などの事業場に常時10人以上の労働者がいる場合は、事業場ごとに作成・届出をしなくてはなりません。
ただし、届出に関しては、各事業場の就業規則の内容が同じなら本社で一括して行うことができます。

社内への周知

作成・変更した就業規則は、社内に周知させなくてはなりません。

周知の方法は、常時見やすい場所に掲示する、印刷物を配布する、イントラネットなどで閲覧できるようにするなどの方法が考えられます。

既にインフラがあるのなら、ネット経由で閲覧できるようにするのが、一番安価ですし、アップデートもすばやくできます。
ただ、セキュリティの問題には注意が必要です。
また、いわゆる「デジタル・デバイド」にも配慮が必要でしょう。

 

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2018年12月21日

就業規則はなぜ必要?

就業規則は、なぜ作成するのでしょうか?

「労働基準法に定められているから」。

確かにその通りです。
常時10名以上の労働者を使用する使用者は、労働基準法により就業規則の作成が義務づけられています。

つまり、就業規則作成は、人を使って事業を営むうえでの責務となっているのです。

では、就業規則を法的義務という位置づけだけで捉えていいものでしょうか?

もしそうだとすると、就業規則は、強制されて仕方なく作成するものということになります。

しかし、就業規則の位置づけは、それだけにとどまるものではありません。
実は、この就業規則の位置づけをどう考えるかによって、人材活用や処遇のあり方が大きく異なってくるのです。
法的義務ということを超えて、就業規則のあり方をしっかり考え、 作成する必要があるのです。

 

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2018年12月21日

働き方改革への取組(7)~労働時間短縮⑥

働き方改革関連法制を読み解きながらこれからの人事制度のあり方を考えるシリーズ企画、いまは労働時間・残業時間に関するお話を続けています。

今回も時間外の上限規制についてみていきます。

法改正で、従業員を働かせることのできる時間がこれまで以上に厳しく制限されることになりました。

ここで注意しなくてはならないのが、「80時間」とか「100時間」というのは、どういう時間を指しているのかという点です。

◆労働基準法が定める労働時間、休日とは?

まず基本的なことをおさらいします。

労働基準法では、労働時間を1日8時間以内、1週40時間以内と定めています。
これを「法定労働時間」といい、この時間を超えた分が時間外労働となります。

もし会社の所定労働時間が7時間となっているなど8時間未満の場合、7時間腸時間以内の分は法律上は時間外になりません。

したがって、時間外の上限規制の対象になるのはあくまでも法定労働時間を超えた分です。

次は休日です。
労働基準法では、休日は週1日以上となっています。(4週4日というパターンもありますが)。
これを「法定休日」といい、この日に仕事をさせたら休日労働ということになります。

週休2日制で、土日が休日、法定休日が日曜日の場合(ちなみに法定休日をいつにするかは会社で決められます)、土曜日に仕事をしても、労働基準法上は休日労働とはなりません。
ただしその結果、週の労働時間が40時間を超えた場合、その分は時間外労働となります。

◆時間外の上限規制の「時間」とは?休日労働は入る、入らない?

では本題に戻りましょう。

改正法ではいくつかの角度から労働時間の上限を定めていますが、この「時間」のとり方には次の2つのパターンがあるのです。

パターン①:時間外労働だけ
パターン②:時間外労働+休日労働

ここは要注意です。
時間外労働だけ見ていて限度時間に収まっていると安心していても、休日労働を加えたら超えてしまっていたということがおこってしまうかもしれませんので。

◆パターン別上限規制

このようになっています。

パターン①(時間外労働だけ)
・時間外労働の1ヶ月限度時間(45時間以内)
・時間外労働の1年限度時間(360時間以内)
・特別条項の1年上限時間(720時間以内)

パターン②(時間外労働+休日労働)
・特別条項の1ヶ月上限時間(100時間未満)
・特別条項の2ヶ月ないし6ヶ月平均上限時間(80時間以内)

特別条項の1ヶ月上限時間だけ「未満」となっている点にも要注意ですね。

◆パターン②は特別条項だけの話ではない

これまで述べてきたように、パターン①の上限時間はあくまでも時間外労働だけが対象で法定休日労働は含まれません。
これだけだと、時間外労働は限度時間の範囲におさめて、法定休日労働増やしても問題ないということになり、上限規制が尻抜けになるおそれがあります。
パターン②には、それを防ぐという意味があります。
この点も要注意ですね。

 

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2018年12月21日

働き方改革への取組(6)~労働時間短縮⑤

今回も改正法による時間外の上限規制についてみていきましょう。

◆時間外の「絶対的な上限」

36協定には「特別条項」というのを設けることができるというお話を少し前にしました。

限度時間を超えることがあり得る場合は、36協定に特別条項を設けることにより、限度時間を超える時間外を命じることができるというものです。
年6回(≒6ヶ月)以内という制限はあるものの、時間数そのものに上限はなく、「事実上の青天井ではないか」という批判もされていました。

これが法改正により、一部の例外を除いて、上限が設けられました。
これまでと違い、労使合意があってもこの上限を超えることは絶対にできません。

内容は次の通りです。

上限①
・期間:1ヶ月
・限度時間:時間外、休日労働の合計で100時間未満

上限②
・期間:1年
・限度時間:時間外720時間以内

上限③
・期間:2ヶ月ないし6ヶ月
・限度時間:時間外、休日労働の合計で平均80時間以内

③が分かりずらいところですね。

これはたとえば9月を起点に考えると--
・8月~9月の2ヶ月
・7月~9月の3ヶ月
・6月~9月の4ヶ月
・5月~9月の5ヶ月
--このいずれの期間をとっても平均80時間以内におさまらなくてはならないということです。

 

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2018年12月20日

無期転換に対応した人事制度の作り方(5)

前回に引き続き、無期転換に対応した人事制度設計のポイントをお話します。

B.「限定要因」と仕事の価値、成果の関係を明確に

限定型正社員は当然働き方が限定されます。それゆえに、無限定正社員と賃金に差をつけるという考え方も当然ありますし、不当ではありません。
ただし、その「差」を合理的に説明できるものにしなくてはなりません。
そうなると、賃金や賞与の構成要素をきちんと分類して考える必要がでてきます。
たとえば、次のような場合を想定してみます。
・会社に正社員と勤務地限定型正社員がいる
・賃金は役割を中心に他の要素も勘案して決める
・賞与は成果を基準に決める
この場合、正社員、勤務地限定型正社員の両者の役割の価値が同じなら、賃金のうち、役割対応部分は同じになります。一方、会社に人事異動のフリーハンドがある方が事業運営上の価値があるということであれば、この「価値」を数値化し、賃金に反映させます。また、賞与は上げた成果の大きさだけを基準に決めるようにします。

C.コース転換を認めるか

正社員と限定型正社員の転換制度を設けるかどうかを、会社の人材状況、事業の必要性、社員のニーズの3点から検討します。
また、転換制度を設ける場合、それが双方向なのか片方向なのか、転換は何回まで、どの程度の頻度で認めるのかといったこともつめます。

D.類型別検討事項

(1)勤務地限定型

1.限定範囲
限定範囲、すなわち、部署限定、事業所内限定、通勤可能圏内限定、一定エリア(関東圏内など)限定といったことを決めます。

2.期待役割
勤務地限定型正社員制度は社員のライフ重視型施策といえます。
とはいえ、ただそれだけでは社員のモチベーションという点で不十分です。会社としても、人材引きとめにとどまらない効果を期待したいところです。
勤務地限定型正社員ならではの価値として、地域の特性を熟知していることがあげられます。それを活かした営業活動、製品開発などに積極的に関わってもらうような人事を検討するのがいいのではないでしょうか。

(2)時間限定型

1.限定範囲
時間限定型の場合、勤務日数を限定するパターンと勤務時間を限定するパターン、両者の組み合わせパターンがあります。
本人のニーズと事業上の必要性の両者を勘案して設定します。

(3)職務限定型

1.限定範囲
職務とは、1人が担当する一連の業務の集まりと定義できます。
たとえば、営業職、人事採用職などです。
現実には、1人の社員が担当している業務には様々なものが混じりこんでいることが普通です。したがって、この職務というのは論理的な業務の集まりということになります。

 

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2018年12月20日

無期転換に対応した人事制度の作り方(4)

限定型正社員の人事・賃金制度設計フロー

人事・賃金制度設計の手順は、限定型正社員であっても同じです。図に典型的なフローをお示しします。

 

 

限定正社員人事制度の検討のポイント

A.人事等級制度が最大のポイント
人事・賃金制度は、人事等級制度、人事評価制度、賃金制度の3つが基本的な枠組みになります。
この中で中心にくるのが人事等級制度で、これは社員を何らかの基準でランク付けするものです。人事等級制度を軸に人事評価基準や賃金決定基準が設定されます。
人事等級の基準には、職務遂行能力、職務レベル、役割レベルの3つがあります。

 

限定型正社員の人事・賃金制度においては、職務や役割を機軸に考えていくのが親和性が高いように思われます。特に職務限定型正社員についてはそうです。
ただし、職能等級であっても、職務分析によって職務と能力の紐付けができていて、かつ、能力評価が合理的に行われていれば十分に対応可能です。
いずれにしても、「同一(価値)労働・同一賃金」の流れの中で、人事・賃金の決定基準はより重要なものになっていきます。

 

B.「限定要因」と仕事の価値、成果の関係を明確に

限定型正社員は当然働き方が限定されます。それゆえに、無限定正社員と賃金に差をつけるという考え方も当然ありますし、不当ではありません。
ただし、その「差」を合理的に説明できるものにしなくてはなりません。
そうなると、賃金や賞与の構成要素をきちんと分類して考える必要がでてきます。
たとえば、次のような場合を想定してみます。
・会社に正社員と勤務地限定型正社員がいる
・賃金は役割を中心に他の要素も勘案して決める
・賞与は成果を基準に決める
この場合、正社員、勤務地限定型正社員の両者の役割の価値が同じなら、賃金のうち、役割対応部分は同じになります。一方、会社に人事異動のフリーハンドがある方が事業運営上の価値があるということであれば、この「価値」を数値化し、賃金に反映させます。また、賞与は上げた成果の大きさだけを基準に決めるようにします。

 

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2018年12月10日

働き方改革への取組(5)~労働時間短縮④

ここまで、現在の時間外規制がどうなっているかをみてきました。
では、これが改正法ではどうなるのでしょうか?

◆時間外の上限規制

これまでお話ししてきた通り、いまでも時間外の限度に関する規制はあります。
ただ、具体的な限度時間は「告示」というかたちでしたが、今回の法改正で、法律の条文に「格上げ」されました。

またこれまでは、規制の内容が「当該協定(36協定)の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない」というものでした。
「なるようにしなければならない」…
要するに、絶対に守らなればならない義務とまではなっていない状態なのですね。

実務的には大半の会社がこの限度基準の範囲におさまるようにしていましたが、法律の条文になったという意味は小さくありません。
限度時間を超えたらただちに法違反となるわけですから。

また、これまでの限度時間は1日超3カ月以内と1年で定めることになっていましたが、改正法では1カ月、1年となりました。
これまでも1カ月、1年という単位で協定を結んでいる会社が多かったと思いますので、実務的にはそれほど影響はありません。
時間数は1カ月45時間以内、1年360時間以内で、現在の限度基準と同じです。

 

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2018年12月10日

無期転換に対応した人事制度の作り方(3)

限定型正社員の人事制度を設計するには

以下、限定型正社員の人事・賃金制度設計のポイントを述べていきます。ただし、単純無期契約社員についてもあてはまる部分が多々あります。単純無期型で対応する場合も、適宜応用していただければと思います。


1.会社の状況を把握する

人事・賃金制度を設計する際にまず最初にやるべきことは現状分析です。ここでは、限定型正社員制度を設計する上で特に押さえておくべき事項を述べます。

A.業務
人事制度設計で必要になるのが会社の業務の把握です。このために行う作業を職務分析といいます。
職務分析を通じて、会社にどのような職務をあるのか、それを遂行するためにはどのような要件が求められるのかを洗い出します。
職務分析を通じて洗い出された職務をランク付けします。このランク付け作業を、職務評価といいます。
職務分析・職務評価によって、会社全体の仕事と遂行要件を一覧にした職務基準書ができあがります。これが人事制度設計の基本ツールになります。

B.人事ポリシー
会社の人材活用の基本方針です。限定型正社員制度との関係では、求める専門性、人材調達・育成の2点が重要です。

(1)求める専門性
社員に求める専門性の内容とレベルです。
職務内容と結びついた具体性が必要です。たとえば「マーケティング」という場合、対象とするマーケット、製品・サービス、マーケティング手法などをできるだけ明確にします。
また、ゼネラリスト中心なのかスペシャリスト中心なのか、両者のおおまかな比率はどうするかといった、人材タイプの組み合わせも検討する必要があります。

(2)人材調達・育成
長期育成型中心か市場調達型中心かということです。
長期育成型の場合、新卒・若手が採用の中心になります。定年までの雇用を前提に、長期間にわたってじっくり育成・活用していきます。
市場調達型の場合は、即戦力の中途採用が中心になります。
両者をどのように組み合わせていくかがこれからの人材活用のポイントになります。また、市場調達型は職務限定型正社員との親和性が高いといえます。

C.組織風土の現状と今後
組織には、これまでの歴史や経営者の個性・考え方などを通じて醸成され、組織成員の行動特性に現出される空気のようなものがあります。これを組織風土といいます。
いかなる制度を入れるにしても、組織風土を無視することはできません。
それは現在の組織風土をそのまま維持するということでは必ずしもありません。いまの風土を変革しようという場合も含みます。

(1)多様性への耐性
限定型正社員は「多様な正社員」とも称されます。このことからもわかるように、この制度は多様性を受け入れ、積極的に推進しようという方向に会社をもっていきます。
したがって会社は多様性を受け入れる土壌にあるのかどうかということと、その現状を将来にわたってどうしていきたいのかを把握しなくてはなりません。

(2)求める忠誠心
組織は組織成員に何かしらの忠誠心を求めます。組織を維持発展させるうえで必須のことです。
忠誠心にも次のようにいろいろな態様があります。

①職務に対する忠誠心
これが強い人は仕事そのものや仕事を通じたキャリアアップに価値を見出す傾向にあります。

②ポストに対する忠誠心
いわゆる出世志向です。組織を通じてやりたいことを実現したい人、あるいはステータスを求める人はこれが強くなります。

③上司に対する忠誠心
いわゆる滅私奉公的な人はこれが強いです。

④ライフに対する忠誠心
これが強い人は、仕事よりプライベートを優先します。

会社に①が強い人が多い場合は職務限定型正社員制度が、④が強い人が多い場合は勤務地限定型正社員制度や時間限定型正社員制度がそれぞれうまくいくと思われます。

 

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2018年12月07日

働き方改革への取組(4)~労働時間短縮③

現行法制のもとでの時間外労働規制のお話、もう少し続けます。

前回、36協定には時間外の限度を定めなくてはならず、かつ、この限度時間にも基準があるというお話をしました。

この「基準」がどの程度の強制力があるのかということについては後日お話をしますが、原則的にはこの基準が法的に許される時間外労働の上限のようなかたちになっています。

しかし、現実には限度時間を超えてしまうこともあり得ます。それに対応する方法として、「36協定の特別条項」というものがあります。

これは、36協定に特別条項を設け、その中に、「特別の事情」、「限度時間を超える場合の手続き」、「特別延長時間」を定めておけば、その範囲で限度時間を超える時間外労働を命じることができるというものです。

◆特別の事情とは

まず、「特別の事情」に概括的・網羅的なものを定めることは許されていません。具体的に定める必要があります。

そして、
・特別の事情とは、臨時的なものに限る。臨時的とは、その業務で特別な時間外をさせるのは、1年の半分を超えないということ。
・協定では、「1日を超え3ヶ月以下の一定期間」について、特別な時間外をさせる回数を決める。
――という制限もあります。

36協定で時間外労働時間を、1日、1ヶ月、1年の単位で定めている場合(一番一般的なケースです)、特別条項を使えるのは6ヶ月以内かつ6回以内ということになります。

 

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2018年12月07日

働き方改革への取組(3)~労働時間短縮②

今回は、現行の時間外労働の規制がどうなっているかを概観しましょう。

◆36協定

会社は必要があれば社員に時間外労働を命じることがあります。
当たり前のように思っている方も少なくないと思いますが、法的にはそれなりの要件を満たしていないと時間外を命じることはできないことになっています。

時間外労働を命じるためには、次の2つの要件を満たしていなくてはなりません。
・労使協定を締結している
・就業規則に時間外労働を命じる旨の定めがある

この労使協定を「36協定」といいます。労働基準法36条に基づいているということですね。

具体的には、使用者が
1)事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があれば、その労働組合、そのような労働組合がない場合は、労働者の過半数代表者と
2)書面による協定を結び、
3)その協定を所轄労働基準監督署長に届け出れば
――協定の定めに基づいて、時間外労働、休日労働をさせることができるということです。

36協定で定めなくてはならないことは、次の通りです。
・時間外または休日に労働させる必要のある具体的事由
・業務の種類
・労働者の数
・延長すべき時間または労働させるべき休日
・有効期間

ここでいう「延長すべき時間」というのが、時間外労働をさせることのできる上限です。
これは1日、3か月以内の一定期間、1年の3つの単位で定めます。
「3か月以内の一定期間」とありますが、実務的には1カ月にしているところが多いです。

◆時間外限度基準

このように36協定では時間外労働の上限を定めなくてはなりません。
この時間を超えて時間外労働をさせてしまうと、違法となります。
「それなら、この時間をできるだけ多めにしておいた方がいい」と考えがちですが、そうもいきません。

協定の当事者は厚生労働大臣が定める基準(限度基準)に合致したものとなるようにしなければならないとされています。
限度基準は告示で次のように定められています。

・1ヶ月:45時間
・1年:360時間

(1ヶ月、1年以外の期間についても定めれられていますが省略します)

 

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2018年12月06日

無期転換に対応した人事制度の作り方(2)

有期労働契約を無期転換した場合、正社員に転換するやり方と、新たな形態を設ける方法の2つがあります。
この「新たな形態」として考えられるのが、単純無期契約社員と限定型正社員の2つです。

1.単純無期
その名の通り、契約期間を単純に無期にしただけで、それ以外の労働条件等は有期労働契約のときとほぼ同じという形態です。
一番簡便な方法といえますが、注意点も当然あります。

A.定年の定めの有無は要確認
有期労働契約の場合、定年を定めていないことが少なくありません。そのような状況で、単純無期契約社員には新たに定年の定めをおくということにするのであれば、予め就業規則等に明記し、周知する必要があります。

B.就業規則は必須
単純無期契約社員用の就業規則を、無期転換申込み権が行使される前に定めておく必要があります。放置しておくと就業規則の適用関係が曖昧になり、トラブルにつながります。
特に、前述の定年制を新たに定めた場合、労働条件の不利益変更になりますので要注意です。もちろん、定年制以外にも追加・変更したい事項があるのなら、就業規則に定めることが必須です。
また通達は、「無期労働契約への転換に当たり、職務の内容などが変更されないにもかかわらず、無期転換後における労働条件を従前よりも低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましいものではないこと」(平成24年8月10日基発0 8 1 0 第2号)としていますので、この点も要注意です。

2.限定型正社員
近年注目を集めている人材活用形態です。
「限定」には様々な態様が考えられますが、代表的なのは「勤務地限定」、「時間限定」、「職務限定」の3つです。
有期労働契約は元々職務や労働時間が限定されていることが多いため、無期転換制度との親和性は高いといえます。
また、人材育成・活用・処遇の一連の施策との関係で限定型正社員制度導入の目的、期待効果をあげると、次のようになります。
・ワークライフバランス
・育児、介護
・キャリアパターンの多様化
・人材活用形態の多様化

制度導入の目的・効果と、制度類型との一般的な対応関係を表に示します。

 

 

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2018年12月06日

無期転換に対応した人事制度の作り方(1)

無期転換制度の概要

無期転換制度は労働契約法18条に基づいた措置で、次の要件を満たした場合は有期労働契約が無期労働契約に転換されるというものです。

①有期労働契約が1回以上更新されている。
②契約期間が通算して5年を超えている。
③労働者が無期労働契約への転換を申し込んでいる。

この「5年」は、改正労働契約法施行日、すなわち2013年4月1日以降に始まる契約の始期からカウントされます。
したがって、最短で2018年4月1日から無期転換が始まっていることになります。

出典:厚生労働省「労働契約法改正のポイント(リーフレット)」

無期転換の態様

無期転換制度は労働契約の期間のことだけを対象にしており、転換後の契約内容などのことは何も規定されていません。そのため、転換後の形態にはいくつかのバリエーションが考えられますが、整理すると次の2つに分類できます。
①正社員に転換する
②新たな形態を設ける
この「新たな形態」として考えられるのが、単純無期契約社員と限定型正社員の2つです
無期転換後の形態としてどのようなものを用意するかは会社の自由です。
特定の形態だけを用意するという方法や、複数の形態を用意し、本人の希望と適性に応じて適用を決めるという方法などが考えられます。

また、無期転換申し込み権を得た労働者が実際に無期転換を申し込んだ場合、会社は必ず転換をしなくてはなりません。
職務限定型正社員など、ある特定の形態だけしか無期転換後の受け皿がない場合、無期転換希望者を必ずその形態で登用しなくてはならないのです。
「この人は職務限定型正社員には馴染まない」と会社が判断しても、登用を拒否することは許されません。
無期転換制度を設計する際には、この点も考慮に入れる必要があります。

 

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2018年12月03日

働き方改革への取組(2)~労働時間短縮①

働き方改革を推進する原動力として大きかったのは、長時間労働問題です。

古くて新しい問題ですね。
「ウサギ小屋に住むワーカホリック」と揶揄されたのはもう30年以上も前です。
また、過労自殺やサービス残業が問題になる都度、長時間労働の解消が叫ばれてきました。

見かけ上の総労働時間は減っていますが、フルタイムの正社員がパートタイマーに置き換わったという要因が大きく、正社員の負荷はむしろ増えているという見解もあります。

これには、技術革新の結果、いつでもどこでも仕事ができるようになったことも影響しています。
IT技術・モバイル機器の進化は、プラスの方向にいけば、柔軟で自由な働き方につながりますが、一方で、切れ目なく仕事をしている状況に置かれてしまうということにもなりかねません。

これは大変なストレスです。

労働時間の問題というよりメンタルヘルスやハラスメントの問題という方が適当かもしれませんが、これらは密接に絡み合う問題です。

さて、労働時間・時間外労働委短縮や年次有給休暇取得促進に向けて、法制・行政もさまざまな対応をしてきました。
次回から、現在の時間外規制、年休取得促進制度がどうなっているか、そして改正法はどうなったかを見ていきます。

 

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2018年12月03日

働き方改革への取組(1)~はじめに

働き方改革法制が成立し、関連する政省令案や36協定届の新様式も公表されました。
改正法の施行日はその内容によって異なりますが、最短で2019年4月、すなわち、来年の4月です。
対応を進めていくべき時期に入ってきましたね。

働き方改革法制が作られたのは、当然理由があります。
一言でいってしまうと、これまでのやり方に限界がきていたから。

しかし、今回の法改正であらゆる問題が解決するというものでもありません。
積み残し案件も多々ありますし、そもそも今回の改正法が実効性あるものかもまだ分かりません。

そのように考えていくと、会社がこれから取り組むべき課題も見えてきます。

会社にも人材管理上の問題や課題が多々あります。
これまでうまくいっていたやり方が通用しなくなったということもしばしばです。

その原因は次の3つでしょう。

①外部環境の変化(高齢化、人手不足、ブラック企業批判、グローバル化など)
②事業内容、事業構造の変化
③働く人の意識の変化

これらは最近急におこったことではありません。世の中が動いている限り続くことです。
ですから、過去のどの時点でも、新聞や雑誌は「激動の時代に入った」と書いています。
マスコミ特有の煽りもありますが、「変化」が「常態」ということかなとも思いますね。

いずれにしろ、常に変化していく環境に適合させていく不断の営みが会社経営ということですし、人材管理もその点は同じです。

このブログでは、これからの人材管理のありかた、制度の構築と運用を、働き方改革法制への対応も含めてみていきたいと思います。

 

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2018年12月02日