就業規則の実際(33)~人事(2)~出向

出向とは

人事異動というのは、同じ会社の中で、働く部署や勤務地が変わることをいいます。

それでは、働く会社も変わる場合は、どうなるのでしょう。

このような人事を、「出向」といいます。
出向には、元の会社との労働契約はそのまま継続する「在籍出向」と、元の会社との労働契約は終了する「移籍出向」があります。
一般に前者を「出向」、後者を「転籍」と呼んでいます。

今回はこのうち、「在籍出向」(今後、単に「出向」と称した場合、この在籍出向を指すことにします)のお話をします。


この出向という形態では、働く人は二重の労働契約を結びます。
ひとつは、元の会社との労働契約。
これは前述の通り、継続します。

もうひとつが、出向先の会社との労働契約です。

出向命令を受けた人は、元の会社と、出向先の会社両方と労働契約を交わし、出向先の指揮命令の元で仕事をすることになります。

 

出向は会社が一方的に命じられるのか?

人事異動と異なり、出向は、これまでの労働契約に加え、新たな労働契約を結ぶ形態です。そして、労務を提供する相手、つまり使用者が変わります。

したがって、会社は、このような命令を一方的に出すことはできず、本人の同意が必要となります。

ただし、個別の同意までは求められていません。

出向は、人事異動のように、「労働契約に付随した会社の当然の権限」とはなりません。
しかし、発令の都度、個別合意を要するものではなく、労働契約締結時に包括的な合意があれば、出向命令は有効になります。

したがって、就業規則や労働契約に、会社が出向を命じることがある旨が記載されている必要があります。

 

労働条件等への配慮が必要

また、それだけでは十分とはいえません。
出向の結果、労働条件が大幅に下がるような場合、いくら就業規則に出向を命じる旨が定めてあっても、「包括的な合意があった」とみるわけにはいかなくなります。

したがって、出向中の労働条件に配慮した詳細な規定を設ける必要があるのです。

 

権利の濫用は許されない

以上から、出向命令が有効とされるのは、次の2つの条件を満たしている場合です。

1)就業規則や労働契約に、会社が出向を命じることがある旨が記載されている
2)出向中の労働条件に配慮した詳細な規定がある


ただ、このような条件を満たしている場合でも、権利の濫用は許されません。
この点が、労働契約法第14条に、次のように定められていますので、押さえておきましょう。

(出向)
第14条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

 

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2019年01月29日