就業規則の実際(31)~労働時間、休日、休暇(14)~適用除外(2)

労働時間規制の適用除外、今回は管理監督者についてです。


管理職には、時間外手当や休日出勤手当を支給していないのが一般的です。
その根拠は、以下の労働基準法第41条の定めにあります。

労働基準法第41条
労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の1に該当する労働者については適用しない。
1.(略)
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.(略)

この「監督若しくは管理の地位にある者」が、「管理職」に該当するわけですが、どこまでがこの範囲に入るのでしょうか?
一言で「管理職」と言っても、その実態は企業によってさまざまです。
労働時間管理の中でも、管理職の範囲については、トラブルになりやすい部分なのです。


1.厚生労働省の通達では

この点について、厚生労働省は通達で基準を示しています。
行政指導も、この通達に則って行われますので、以下に要旨を掲載します。


【監督若しくは管理の地位にある者の範囲】

法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者とー体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。具体的な判断にあたっては、下記の考え方によられたい。

(1)原則

法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。


(2)適用除外の趣旨

これらの職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限つて管理監督者として法第41条による適用の除外が認められる趣旨であること。従って、その範囲はその限りに、限定しなければならないものであること。


(3)実態に基づく判断

一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と、経験、能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるに当たっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること。


(4)待遇に対する留意

管理監督者であるかの判定に当たっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視し得ないものであること。この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外のー般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといつて、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。


(5)スタッフ職の取扱い

法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によつては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、同法第41条第2号該当者に含めて取扱うことが妥当であると考えられること。


2.過去の判例では

<管理監督者に「該当しない」とされたケース>

◆課長職にあって役職手当を支給されていたとはいえ、課長昇進前とほとんど変わらない職務内容、給料、勤務時間の取り扱いに照らし、会社の利益を代表して工場の事務を処理するような職務内容、裁量権限、待遇を与えられていたとは到底いえず、会社と一体的な立場に立って勤務し勤務時間について自由裁量権を有していたともいえないから、管理監督者に該当せず、したがって、割増賃金の支払い義務があるとしたもの(サンド事件大阪地裁昭58 7 12判決)

◆国民金融公庫地方支店の総務課長に次ぐ地位にある業務役について、業務役の職務は本来の管理職の系列には属さない補佐的な役割を有するにとどまり、総務課長の権限の一部としての検印業務等を行い、契約係職員に対する超過勤務命令につき総務課長とともに支店長に対して具申する権限を有していたことは認められるものの、それ以上に被告の経営方針の決定や労務管理上の指揮権限につき経営者と一体的な立場にあったことを認めるに足りる事実は存在せず、出退勤の管理についても一般職員と同様であり、管理監督者に該当しないとしたもの(国民金融公庫事件東京地裁平7 9 25判決)

◆建設会社の現場監督について、勤務時間に関し自由裁量が認められていたと認めるに足りる証拠はなく、特に管理職に見合う手当なども支給されておらず、単に工事現場における従業員の配置を決めるだけではなく、これを超えて会社の従業員の採用および考課、労務管理方針の決定に参画し、または労務管理上の指揮権限を有し経営者と一体的な立場にあったとは認められず、管理監督者に該当するとはいえないとしたもの(光安建設事件大阪地裁平13 7 19判決)

◆地質調査会社支店の係長、課長補佐、課長、次長、課長待遇調査役、次長待遇調査役について、支店の管理職会議に出席し支店の運営方針について意見を述べる機会が与えられてはいたが、開催は年2回にすぎず、会議は基本的に会社側の運営方針を下達する場であり、原告らが行っていた人事考課も上位者による考課が予定され、最終的には支店長の評点が総合評価とされていたのであり、労務管理の一端を担っていたことは否定できないが経営者と一体的立場にあったとはいえず、管理監督者に該当するとはいえないとしたもの(東建ジオテック事件東京地裁平14 3 28判決)

<管理監督者に「該当する」とされたケース>

◆医療法人の人事第二課長について、看護婦の採否の決定、配置等労務管理等について経営者と一体的な立場にあり、タイムカードの打刻義務はあるもののせいぜい拘束時間の長さを示す程度のものであり、実際の労働時間は自由裁量に任され厳格な制限を受けておらず、責任手当、特別調整手当が支給されていること等から、管理監督者に該当するとしたもの(徳洲会事件大阪地裁昭62 3 31判決)


3.これらを総合すると

法の趣旨、通達などから具体的な判断基準を考えると、次のようなことになるでしょう。
(安西愈著「労働時間・休日・休暇の法律実務」より)

(1)企業の経営方針、労務人事管理方針の決定、労働条件の決定等に参画し、あるいは従業員の統括と管理、業務や労務取り扱い上の裁量事項の決定と命令又は承認を行う等その職務内容、責任と権限等からみて経営管理の一定範囲の事項や従業員の統括・管理的行為を行う立場にあること、又はそれと同等の地位のスタッフ的職にあること。

(2)労務管理上の勤務態様からみて、自己の勤務について自由裁量権限があり、出勤、退社について就業規則上および実態上厳格な制限を受けない地位にあること。つまり勤怠成績として評価されず、自主性が承認されていること。スタッフ職でも勤務態様が同等なものは、経営管理的な職務として該当すること。

(3)その管理監督的地位に対して賃金等の処遇面において、その地位にふさわしい処遇がなされていること。したがって直近下位の割増賃金が支払われる地位にある者とくらべて、月例給のみならず賞与等も含め相当程度の格差があること。

 

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2019年01月29日