会社の機密管理体制、競業避止

9月16日発行の労働新聞で紹介された知財高裁の判決は、会社の機密管理体制の重要さを改めて考えさせられるものでした。

事件は以下のようなものです。
・まつげエクテンション専門店(A)の元従業員(B)が、同業の転職先(同じ市内)で、元の店の顧客のカルテをその店の従業員に写真撮影させSNS経由で受け取った。Aを退職してから3ヶ月ほど後の行為。
・AはBを、「退職後2年間は在職中に知り得た秘密情報を利用して、同市内で競業は行わない」とする誓約に違反すると訴えた。

これに対し知財高裁は、秘密情報を利用した競業にあたらないと判断、Aの請求を棄却しました。

単純に考えると、顧客のカルテを写真に撮って転職先で使うなどもってのほかと思われます。

しかし高裁の判断は異なります。

判断のポイントは、Aの顧客のカルテは秘密情報にあたるかどうか。

裁判所は、「誓約書の「秘密情報」を「秘密として管理された情報」」(労働新聞)と定義しました。
ところが、「Aの就業規則等には秘密管理についての記載がなかったため、不正競争防止法に定める営業秘密の要件に照らして判断するのが相当」(同)としました。

ここが1つ目のポイント。
会社が秘密管理などについて特に決めていない状態だと、不正競争防止法に準拠した判断がされるということです。

同法は営業秘密を、次の3要件の全てを満たすものとしています。
「全て」ですから、かなり厳しい要件です。

・秘密管理性:秘密として管理されていること
・有用性:有用な営業上または技術上の情報であること
・非公知性:公然と知られていないこと

ここで問題になるのが、Aのカルテの管理状況です。ここが2つ目のポイント。

この点について労働新聞の記事から抜粋すると---
・A社のカルテは従業員であれば誰でも閲覧でき、保管棚に施錠もしていなかった
・従業員が私用のスマートフォンを使ってカルテを撮影し、データを共有することも日常的にあった
---ということです。

このような状況から、Aのカルテは営業秘密とは認められず、「競業避止義務違反」にならないとされたわけです。

正直、「脇が甘かった」といわざるを得ません。

◆会社の秘密保護体制

会社として何が秘密情報になるのかをきちんと定義することがまず必要です。
「当事者以外厳秘」、「部外秘」、「社外秘」などとランク分けをするのもいいでしょう。

次に管理体制です。
その情報にアクセスできる社員は誰なのかを決めておくべきでしょう。
少人数のサロンの場合、大半の社員がカルテなどを閲覧できる状態にあるのはやむを得ないかもしれませんが、それでも、閲覧できるのは「当該業務に就いている者」などとすべきです。
実際、その情報には直接関係のない補助的アルバイトの人もいるかもしれませんし。

そして、そのような情報を私用のスマートフォンなどで撮影することなどは許すべきではありません。
コピーも上司の許可を得ること、外への持ち出しは厳禁とすることなどが必要でしょう。

このように情報管理をしっかりすることが、様々な意味で会社を守ることになるのですね。

 

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2019年09月30日