入社、採用、試用期間をめぐるトラブルと就業規則③~試用期間③

◆適性のない人の人事異動はどう考える

業務に適性がないという場合、業務を変更したり、あるいは、人事異動によって部署を変えるといったことが行われることがあります。
これは新入社員に限った話ではありませんが。
人事異動は日本の会社では広く一般的に行われています。

入社時に、業務を特定するような特別な契約を結んでいない限り、人事異動は会社の「人事権」として認められています。
逆に言うと、業務に適性がないとか、能力に欠けるといったことがあっても、会社は人事異動、教育など、可能な限り必要な措置を取り、解雇をしないことが求められます。
「適性がない」「能力がない」といった理由で解雇までするのは、結構ハードルが高いです。

◆あなたがAさんなら

以上を踏まえて、あなたがAさんなら、この問題にどう対処すべきでしょうか。
ここでまず押さえておかなくてはならないのは、会社、上司はこの期間で、新入社員のあなたの、どこを、どのように見ているのかということです。

先ほどお示しした就業規則例は「社員として不適当と認められるときは」解雇するとしています。つまり、この先あなたを社員として雇い続けても問題ないかどうかを会社は見ているわけです。
具体的な基準は会社によりますが、ほぼ共通しているのは、次の点でしょう。
①勤務態度
②職務能力、適性

このうち、1番目の勤務態度に関することは、次のパートとの関連が強いので、そこで解説します。

2番目の職務能力とは、文字通り仕事をしていくうえで必要な能力です。
適性とは、その仕事に向いているかということです。
また、入社した会社に馴染むのかどうかということも含みます。

今回の一件を見ると、上司はAさんの能力に疑問を持ち始めていますね。
2度続けて同じようなミス、それも、顧客を怒らせるようなミスをしたのですから、それは仕方のないことです。
また、これまでもたびたび、不注意からくるミスがあったようですね。
そのため、上司は、この状態が続くようだと、業務に支障をきたすばかりか、いつか取り返しのつかないミスをしでかすのではないかと危惧をしているわけです。

前述した通り、会社は能力不足の社員に対しては、教育をするなどの手を打つ義務があります。
それを抜かして解雇をすることは、認められないことが多いです。

だからといってAさんは、「私を教育してください」と受け身でいたり、開き直ったりするようなことは避けるのが賢明です。
ここでAさんがすべきことは、3ヶ月の試用期間満了までに「少なくともこの時点で会社を辞めさせるという判断はできない」という状態にもっていくことです。

つまり、就業規則にある、「社員として不適当」という要件にあてはまるわけではないと判断されるようにするわけです。

就業規則に「試用期間3ヶ月」と書かれているわけですから、会社はこの間に判断を出さないといけません。
「本採用を拒否する」という判断を下すには、それに相当する材料が必要です。
逆の言い方をすれば、これからAさんがミスなく業務をこなせば、最悪の事態は避けることも可能です。

もし、残り1ヶ月程度ではリカバリーできないほどにこれまでのミスの程度がひどいものであっても、就業規則に試用期間の延長規定があれば、それの適用を受けられる可能性もあります。
前述の就業規則例では、3ヶ月の範囲で延長できることになっています。

ただし、これまで述べたことは、あくまでも「最低条件」。
今後Aさんがすべきことは、しっかり名誉挽回して、後日、「最初はどうなることかと思ったけど」という笑い話ができるようにすることですね。

◆あなたが上司なら

頭の痛い問題ですね。
これまで述べてきたとおり、能力不足で本採用拒否をするのは簡単ではありません。
異動させたいと思っても、どこの部署も余裕がなさそうですし、Aさんを引き受けてくれる部署があるとも思えません。
最優先に考えるべきことは、何とか教育して、最低限、一応のことはミスなくできるようにもっていくことです。

くれぐれも感情的にならないように。
労務トラブルの多くは、当事者が感情にまかせて行動してしまうところに端を発しています。

ただ、就業規則に、上記の例のように就業規則の延長規定があれば、それを使うという方法もあります。人事担当部門に相談してみてください。

そのときは、Aさんに、「これまでの業務状況から、あなたを本採用しても問題ないという判断はできない。就業規則に基づき試用期間を延長する。この間の仕事ぶりによっては本採用できないかもしれないので、心するように」と伝えるようにしましょう。
また、最悪の場合、すなわち、本採用拒否も視野におくのがいいですね。
人事部門ともよく連携を取るようにしてください。

 

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2019年08月26日