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社員が退職するときの社会保険手続(5)~退職後の医療保険(2)

退職後はどの医療保険に入ればいいのか?

これは人事のご担当の方がよく聞かれる質問かと思います。

前回お話しした通り、選択肢になるのは、現在加入している健康保険に任意継続するという方法と、住んでいる地域の国民健康保険に加入する方法の2つがあります。

この2つ、どちらを選ぶのがいいのでしょうか?

まずは保険料負担の面からみていきます。


<保険料負担>

任意継続被保険者の場合、保険料は全額自己負担となります。
(在職中は会社と本人折半でした)。

保険料の基礎になるのは「標準報酬」ですが、これは、次のいずれかの低い方となります。

・本人の退職時の標準報酬
・加入している健康保険(協会健保または組合健保)の平均標準報酬

平均標準報酬は、加入している健康保険に確認してください。


一方、国民健康保険の保険料は、前年の年収をベースに算定されます。
額は自治体によって異なりますので、窓口で確認してみてください。


以上から、保険料負担という面では、どちらがいいとは一概に言えません。
ご本人の収入状況などから個別に検討してみてください。


<保険給付>

それぞれの保険制度の給付内容を一覧にすると、次のようになります。

◆健康保険・任意継続
 療養の給付
 入院時食事療養費
 入院時生活療養費
 保険外併用療養費
 療養費
 訪問看護療養費
 特別療養費
 移送費
 埋葬料
 出産育児一時金
 高額療養費

◆国民健康保険
 療養の給付
 入院時食事療養費
 入院時生活療養費
 保険外併用療養費
 療養費
 訪問看護療養費
 特別療養費
 移送費
 高額療養費
 ※出産育児一時金
 ※葬祭費
  ※:自治体による

こうして並べてみると、ほとんど違いがないことが分かります。
療養の給付における自己負担率3割なども同じです。

ただし健康保険・任意継続については、協会健保の給付内容を示しています。。
健康保険組合の場合、さらには、「特例退職被保険者」の場合は、独自の給付制度を設けている場合がありますので、確認してみてください。

 

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2019年06月17日

36協定の結び方のポイント、時間外の上限規制④~36協定の内容②

36協定で定めなくてはならないのは、次の事項です。

・時間外労働、休日労働をさせる労働者の範囲
・対象期間、起算日
・時間外労働、休日労働をさせる事由
・1日、1ヶ月、1年の時間外労働の時間数、休日労働日数
・協定の有効期間
・「特別条項」に関する事項

◆対象期間

1年に限られています。
「対象期間」とは、時間外労働、休日労働をさせることができる期間をいいます。
36協定では時間外労働できる時間の上限を決めますが、その時間を計算する期間ということです。

◆時間外労働、休日労働をさせる事由

どういう場合に時間外労働、休日労働をさせることができるかを決めます。
内容はできるだけ具体的にします。単に「忙しいとき」というだけではダメで、どういう理由で忙しくなるのかを記載します。
厚生労働省から記載例が示されていますので、参考にするのがいいでしょう。

◆1日、1ヶ月、1年の時間外労働の時間数、休日労働日数

時間外労働時間、休日労働日数の上限を、1日、1ヶ月、1年の単位でそれぞれ定めます。
1ヶ月、1年の時間外労働時間の限度時間が次のように法で定められています。

・1ヶ月45時間(1年変形の場合42時間)
・1年360時間(1年変形の場合320時間)

36協定の上限時間は、この限度時間の範囲におさめなくてはなりません。

一方、1日の時間外時間、休日労働の日数は特に規制はありません。
実状に見合うよう労使で話し合って決めるようにしましょう。

ただ、休日労働の「日数」に規制はありませんが、時間外労働時間と休日労働時間を合計した「時間数」には次のように限度時間が定められていますので注意が必要です。

・1ヶ月100時間未満
・2ヶ月ないし6ヶ月の平均80時間以内

また、36協定で定めた上限時価を超えることがありうる場合は、「特別条項」を結びます。

時間外の上限、36協定の特別条項については別の項でお話しします。

◆36協定の有効期間

36協定の有効期間をどのぐらいにするかは労使の任意ですが、通達では1年とすることが望ましいとしています。

 

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2019年06月14日

社員が退職するときの社会保険手続(4)~退職後の医療保険(1)

退職した場合の社会保険、今回は、退職後の医療保険について見ていきましょう。

退職した人が、別の会社に再就職した場合は、その会社で健康保険に入ります。
本人があれこれ考える余地はありません。

一方、そのまま完全にリタイアした場合、または自営業者などになった場合は、その人は健康保険の任意継続被保険者になるか、国民健康保険の被保険者になるか、いずれかを選ぶことになります。

(厚生年金などに20年以上加入し、老齢年金の支給開始年齢に達している人が退職した場合は、国民健康保険の退職被保険者になります。
また、加入している健康保険が特定健康保険組合の場合は、「特例退職被保険者」になることもできます)。


健康保険の任意継続被保険者になれるのは、被保険者期間が2ヶ月以上あるす人です。

資格喪失後20日以内に本人の住所を管轄する健康保険協会または加入していた健康保険組合に「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を提出します。

任意継続被保険者の期間は2年間です。途中で任意に脱退することはできません。


では、退職後はどちらを選択するのがいいのでしょうか?
次回はこのあたりを見ていきましょう。

 

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2019年06月12日

36協定の結び方のポイント、時間外の上限規制③~36協定の内容①

36協定で定めなくてはならないのは、次の事項です。

・時間外労働、休日労働をさせる労働者の範囲
・対象期間、起算日
・時間外労働、休日労働をさせる事由
・1日、1ヶ月、1年の時間外労働の時間数、休日労働日数
・協定の有効期間
・「特別条項」に関する事項

◆時間外労働、休日労働をさせる労働者の範囲

「全社員」というような定め方はNGです。
業務をごとに決めなくてはなりません。
これについて「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針
」(以下このコラムでは「36協定指針」とします)4条には次のように書かれています。

「業務の種類について定めるに当たっては、業務の区分を細分化することにより当該業務の範囲を明確にしなければならない」

つまり、大まかな区切りではダメで、細分化した具体的な定義をしなくてはならないということです。

ではどこまで細分化すればいいのか?
この点については、以前出された通達に次のような記述があります。

「労使は、各事業場における業務の実態に即し、業務の種類を具体的に区分しなければならないものであり、事業の実態、実情を最も熟知する労使の判断が尊重されるものであるが、例えば、労働時間管理を独立して行っている各種の製造工程が設けられているにもかかわらず業務の種類を「製造業務」としているような場合は、細分化が不十分であると考えられる。」(平成11年3月31日 基発169号)

ここでポイントになるのが「労働時間管理を独立して行っている」という部分でしょう。
労働時間の管理単位、業務内容・実態を基準に決めていくということですね。

 

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2019年06月06日

社員が退職するときの社会保険手続(3)~資格喪失日と被保険者資格、保険料の関係

退職した場合、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の資格喪失日は、退職日の翌日です。

したがって、療養などの保険給付は、原則として退職日が境になります。

一方保険料は、月単位になります。

そして、資格喪失月は、保険料徴収の対象となりません。

したがって、次のようなことになるのです。


(月末が31日の月の場合)

・30日退職=31日資格喪失→退職月が資格喪失月となるので、退職月は保険料がかからない

・31日退職=翌月1日資格喪失→退職月の翌月が資格喪失月となるので、退職月は保険料がかかる


保険料という観点だけで考えると、末日に退職するより、末日の前日に退職する方が得ということになります。


でも、保険料のことだけで決めるのは宜しくないですね。
それ以外のことも考える必要があります。

たとえば、年金給付は保険料の納付実績に対応します。
保険料を納めた月が1ヶ月少なければ、その分年金額も減ります。

また、退職金制度など、会社独自の制度についてはどうなのかもきちんと押さえる必要があります。


退職を考えている方はこうした点をトータルで考えるようにしましょう。

また、人事のご担当の方は、これらをよく理解した上で対応するようにしましょう。

 

◆入社から退職までの人事、社会保険便利手帳INDEX◆

2019年06月05日
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