コラム

コラム一覧

無期転換に対応した人事制度の作り方(4)

限定型正社員の人事・賃金制度設計フロー

人事・賃金制度設計の手順は、限定型正社員であっても同じです。図に典型的なフローをお示しします。

 

 

限定正社員人事制度の検討のポイント

A.人事等級制度が最大のポイント
人事・賃金制度は、人事等級制度、人事評価制度、賃金制度の3つが基本的な枠組みになります。
この中で中心にくるのが人事等級制度で、これは社員を何らかの基準でランク付けするものです。人事等級制度を軸に人事評価基準や賃金決定基準が設定されます。
人事等級の基準には、職務遂行能力、職務レベル、役割レベルの3つがあります。

 

限定型正社員の人事・賃金制度においては、職務や役割を機軸に考えていくのが親和性が高いように思われます。特に職務限定型正社員についてはそうです。
ただし、職能等級であっても、職務分析によって職務と能力の紐付けができていて、かつ、能力評価が合理的に行われていれば十分に対応可能です。
いずれにしても、「同一(価値)労働・同一賃金」の流れの中で、人事・賃金の決定基準はより重要なものになっていきます。

 

B.「限定要因」と仕事の価値、成果の関係を明確に

限定型正社員は当然働き方が限定されます。それゆえに、無限定正社員と賃金に差をつけるという考え方も当然ありますし、不当ではありません。
ただし、その「差」を合理的に説明できるものにしなくてはなりません。
そうなると、賃金や賞与の構成要素をきちんと分類して考える必要がでてきます。
たとえば、次のような場合を想定してみます。
・会社に正社員と勤務地限定型正社員がいる
・賃金は役割を中心に他の要素も勘案して決める
・賞与は成果を基準に決める
この場合、正社員、勤務地限定型正社員の両者の役割の価値が同じなら、賃金のうち、役割対応部分は同じになります。一方、会社に人事異動のフリーハンドがある方が事業運営上の価値があるということであれば、この「価値」を数値化し、賃金に反映させます。また、賞与は上げた成果の大きさだけを基準に決めるようにします。

2018年12月10日

働き方改革への取組(5)~労働時間短縮④

ここまで、現在の時間外規制がどうなっているかをみてきました。
では、これが改正法ではどうなるのでしょうか?

◆時間外の上限規制

これまでお話ししてきた通り、いまでも時間外の限度に関する規制はあります。
ただ、具体的な限度時間は「告示」というかたちでしたが、今回の法改正で、法律の条文に「格上げ」されました。

またこれまでは、規制の内容が「当該協定(36協定)の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない」というものでした。
「なるようにしなければならない」…
要するに、絶対に守らなればならない義務とまではなっていない状態なのですね。

実務的には大半の会社がこの限度基準の範囲におさまるようにしていましたが、法律の条文になったという意味は小さくありません。
限度時間を超えたらただちに法違反となるわけですから。

また、これまでの限度時間は1日超3カ月以内と1年で定めることになっていましたが、改正法では1カ月、1年となりました。
これまでも1カ月、1年という単位で協定を結んでいる会社が多かったと思いますので、実務的にはそれほど影響はありません。
時間数は1カ月45時間以内、1年360時間以内で、現在の限度基準と同じです。

2018年12月10日

無期転換に対応した人事制度の作り方(3)

限定型正社員の人事制度を設計するには

以下、限定型正社員の人事・賃金制度設計のポイントを述べていきます。ただし、単純無期契約社員についてもあてはまる部分が多々あります。単純無期型で対応する場合も、適宜応用していただければと思います。


1.会社の状況を把握する

人事・賃金制度を設計する際にまず最初にやるべきことは現状分析です。ここでは、限定型正社員制度を設計する上で特に押さえておくべき事項を述べます。

A.業務
人事制度設計で必要になるのが会社の業務の把握です。このために行う作業を職務分析といいます。
職務分析を通じて、会社にどのような職務をあるのか、それを遂行するためにはどのような要件が求められるのかを洗い出します。
職務分析を通じて洗い出された職務をランク付けします。このランク付け作業を、職務評価といいます。
職務分析・職務評価によって、会社全体の仕事と遂行要件を一覧にした職務基準書ができあがります。これが人事制度設計の基本ツールになります。

B.人事ポリシー
会社の人材活用の基本方針です。限定型正社員制度との関係では、求める専門性、人材調達・育成の2点が重要です。

(1)求める専門性
社員に求める専門性の内容とレベルです。
職務内容と結びついた具体性が必要です。たとえば「マーケティング」という場合、対象とするマーケット、製品・サービス、マーケティング手法などをできるだけ明確にします。
また、ゼネラリスト中心なのかスペシャリスト中心なのか、両者のおおまかな比率はどうするかといった、人材タイプの組み合わせも検討する必要があります。

(2)人材調達・育成
長期育成型中心か市場調達型中心かということです。
長期育成型の場合、新卒・若手が採用の中心になります。定年までの雇用を前提に、長期間にわたってじっくり育成・活用していきます。
市場調達型の場合は、即戦力の中途採用が中心になります。
両者をどのように組み合わせていくかがこれからの人材活用のポイントになります。また、市場調達型は職務限定型正社員との親和性が高いといえます。

C.組織風土の現状と今後
組織には、これまでの歴史や経営者の個性・考え方などを通じて醸成され、組織成員の行動特性に現出される空気のようなものがあります。これを組織風土といいます。
いかなる制度を入れるにしても、組織風土を無視することはできません。
それは現在の組織風土をそのまま維持するということでは必ずしもありません。いまの風土を変革しようという場合も含みます。

(1)多様性への耐性
限定型正社員は「多様な正社員」とも称されます。このことからもわかるように、この制度は多様性を受け入れ、積極的に推進しようという方向に会社をもっていきます。
したがって会社は多様性を受け入れる土壌にあるのかどうかということと、その現状を将来にわたってどうしていきたいのかを把握しなくてはなりません。

(2)求める忠誠心
組織は組織成員に何かしらの忠誠心を求めます。組織を維持発展させるうえで必須のことです。
忠誠心にも次のようにいろいろな態様があります。

①職務に対する忠誠心
これが強い人は仕事そのものや仕事を通じたキャリアアップに価値を見出す傾向にあります。

②ポストに対する忠誠心
いわゆる出世志向です。組織を通じてやりたいことを実現したい人、あるいはステータスを求める人はこれが強くなります。

③上司に対する忠誠心
いわゆる滅私奉公的な人はこれが強いです。

④ライフに対する忠誠心
これが強い人は、仕事よりプライベートを優先します。

会社に①が強い人が多い場合は職務限定型正社員制度が、④が強い人が多い場合は勤務地限定型正社員制度や時間限定型正社員制度がそれぞれうまくいくと思われます。

2018年12月07日

働き方改革への取組(4)~労働時間短縮③

現行法制のもとでの時間外労働規制のお話、もう少し続けます。

前回、36協定には時間外の限度を定めなくてはならず、かつ、この限度時間にも基準があるというお話をしました。

この「基準」がどの程度の強制力があるのかということについては後日お話をしますが、原則的にはこの基準が法的に許される時間外労働の上限のようなかたちになっています。

しかし、現実には限度時間を超えてしまうこともあり得ます。それに対応する方法として、「36協定の特別条項」というものがあります。

これは、36協定に特別条項を設け、その中に、「特別の事情」、「限度時間を超える場合の手続き」、「特別延長時間」を定めておけば、その範囲で限度時間を超える時間外労働を命じることができるというものです。

◆特別の事情とは

まず、「特別の事情」に概括的・網羅的なものを定めることは許されていません。具体的に定める必要があります。

そして、
・特別の事情とは、臨時的なものに限る。臨時的とは、その業務で特別な時間外をさせるのは、1年の半分を超えないということ。
・協定では、「1日を超え3ヶ月以下の一定期間」について、特別な時間外をさせる回数を決める。
――という制限もあります。

36協定で時間外労働時間を、1日、1ヶ月、1年の単位で定めている場合(一番一般的なケースです)、特別条項を使えるのは6ヶ月以内かつ6回以内ということになります。

2018年12月07日

働き方改革への取組(3)~労働時間短縮②

今回は、現行の時間外労働の規制がどうなっているかを概観しましょう。

◆36協定

会社は必要があれば社員に時間外労働を命じることがあります。
当たり前のように思っている方も少なくないと思いますが、法的にはそれなりの要件を満たしていないと時間外を命じることはできないことになっています。

時間外労働を命じるためには、次の2つの要件を満たしていなくてはなりません。
・労使協定を締結している
・就業規則に時間外労働を命じる旨の定めがある

この労使協定を「36協定」といいます。労働基準法36条に基づいているということですね。

具体的には、使用者が
1)事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があれば、その労働組合、そのような労働組合がない場合は、労働者の過半数代表者と
2)書面による協定を結び、
3)その協定を所轄労働基準監督署長に届け出れば
――協定の定めに基づいて、時間外労働、休日労働をさせることができるということです。

36協定で定めなくてはならないことは、次の通りです。
・時間外または休日に労働させる必要のある具体的事由
・業務の種類
・労働者の数
・延長すべき時間または労働させるべき休日
・有効期間

ここでいう「延長すべき時間」というのが、時間外労働をさせることのできる上限です。
これは1日、3か月以内の一定期間、1年の3つの単位で定めます。
「3か月以内の一定期間」とありますが、実務的には1カ月にしているところが多いです。

◆時間外限度基準

このように36協定では時間外労働の上限を定めなくてはなりません。
この時間を超えて時間外労働をさせてしまうと、違法となります。
「それなら、この時間をできるだけ多めにしておいた方がいい」と考えがちですが、そうもいきません。

協定の当事者は厚生労働大臣が定める基準(限度基準)に合致したものとなるようにしなければならないとされています。
限度基準は告示で次のように定められています。

・1ヶ月:45時間
・1年:360時間

(1ヶ月、1年以外の期間についても定めれられていますが省略します)

2018年12月06日
» 続きを読む