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就業規則の実際(41)~賃金(2)

賃金の法的性格

賃金は法律でどのように定義されているのでしょうか?
労働基準法第11条は、次のように定めています。

「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」

つまり、賃金とは、次の2つの条件を満たすものを指します。

・労働の対価である
・使用者が労働者に支払う

「労働の対価」というのは、必ずしも、成果や貢献度に対応して支払われるものとは限りません。
就業規則、労働契約などで支給要件が明確に定められていて、労働者に請求権があるものはすべて賃金となります。

<出張旅費・日当>
支給条件は明確ですが、「実費弁償的なもの」は賃金とはなりません。
したがって、出張旅費や日当は、賃金とはなりません。

<福利厚生的なもの>
支給条件が不明確で任意的・恩恵的なものは賃金とはなりません。
ただし、福利厚生的なものであっても、就業規則などで支給条件が明確に定められているものは賃金となります。たとえば、就業規則に定めのある結婚手当などが該当します。


<退職金>
退職金でも、就業規則や退職金規程などで支給条件が定まっているものは、賃金となります。

 

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2019年02月05日

就業規則の実際(40)~賃金(1)

賃金の重要さは、改めて言うまでもないぐらいのことでしょう。

働く人にとっては、賃金が生活の唯一または最大の糧です。
そのため労働基準法でも賃金については、厳しい規制をかけています。
この点については、またお話します。

一方、会社にとっても賃金は、人材マネジメント上の重要なツールです。
ここをいかに設計・運用するかで、賃金が、「利益を圧迫するコスト」か「価値を生み出す投資」になるかが決まります。

人事戦略、人材マネジメントと賃金について書き始めると、それだけでたいへんなボリュームになってしまいます。
「就業規則講座」という本題からはずれていきますので、これについては近日、別のコラムを立ち上げて、いろいろとお話していきたいと思っています。

ここでは、賃金とは何かということをおおまかに俯瞰しておきましょう。

 

賃金決定の「3原則」

従業員1人1人の賃金をどうやって決めるのかは、会社によってさまざまです。
ただ、どんな方法にも共通の原則というのがあります。それを「賃金決定の3原則」といい、次の3つになります。

1)労働対価の原則
2)生活保障の原則
3)労働力の市場価格

普段は、このようなことを意識することはありません。しかし、この3原則を無視して賃金体系をつくったり、賃金額を決めることはできないのです。
意識する・しないにかかわらず、賃金はこの3原則の枠組みで決まります。

 

賃金の公平性

賃金を決める際に、3原則以外に考えなくてはならないのが、「内部公平性」と「外部公平性」です。
これは、自分の賃金額が社内外の水準と比べて妥当と感じるか不公平と感じるかということです。

 

会社の支払い能力

賃金額を決定する要因は以上の通りですが、何であれ賃金総額(正確には人件費総額)は会社の支払能力を超えることはできません。

 

賃金の決定基準~賃金体系

賃金の決定基準を、「賃金体系」といいます。
もちろん、賃金を決める要素は、ひとつだけとは限りません。担当している職務の価値や本人の能力を基本に、需給関係や生活を勘案して決めるのが現実です。
ただ、その中で、一番基本になる、会社としてもっとも重視する基準があります。(もしなければ、新たに作ります)。この基準を何にするかが、賃金体系ということになるのです。
したがって賃金体系は、前述の「格付制度」とリンクするのが、もっとも理にかないます。

代表的な賃金体系は、次の通りです。

役割給:担っている役割のレベル
職務給:担当している職務のレベル
職能給:身につけた能力のレベル

 

均衡処遇、同一労働同一賃金

 

いま一番重要でホットなテーマですね。
この問題は別にコーナ-を設けてお話していきます。

 

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2019年02月05日

就業規則の実際(39)~退職、解雇(4)

解雇に関する労働基準法の規制

解雇については、労働基準法にいくつか規制があります。

 

解雇制限

使用者は、次のような場合、労働者を解雇してはなりません。

・労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間
・産前産後休業期間及びその後30日間

ただし次の場合を除きます。
・使用者が、労基法第81条の規定によつて打切補償を支払う場合
※打切補償:業務災害で療養開始後3年を経過しても傷病が治らない場合に、使用者が平均賃金1200日分の打切補償を支払えば、以後は補償をしなくてもいいという制度です。
労働者が労災保険の傷病補償年金を受けて3年経過した場合も含みます。

・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合(所轄労働基準監督署の認定が必要)

 

解雇予告

使用者は、労働者を解雇しようとする場合、30日以上前に「解雇予告」をしなければなするか、平均賃金30日分以上の「解雇予告手当」を支払わなければなりません。
ただし、解雇予告の日数は、解雇予告手当を支払った日数分を短縮することができます。

また、次の場合で、所轄労働基準監督署の「解雇予告除外認定」を受けた場合除きます。
・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
・懲戒解雇など労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合

なお、次の者は解雇予告の適用が除外されます。

・日日雇い入れられる者(1ヵ月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
・2ヵ月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
・季節的業務に4ヵ月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
・試用期間中(14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)

 

退職時等の証明

使用者は労働者が退職証明を請求した場合、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
証明すべき項目は次の通りです。

・使用期間
・業務の種類
・その事業における地位
・賃金
・退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)

また、労働者が解雇予告をされた日から退職の日までの間において、解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
ただし、解雇の予告がされた日以後に、労働者がその解雇以外の事由により退職した場合は、退職の日以後、証明書を交付する必要はありません。

なお、これらの証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはなりません。
また使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはなりません。

 

金品の返還

使用者は、労働者の死亡又は退職の場合で、権利者の請求があった場合は、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。

また、賃金又は金品に関して争いがある場合、使用者は、異議のない部分を7日以内同項の期間中に支払い、又は返還しなければなりません。

 

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2019年02月01日

就業規則の実際(38)~退職、解雇(3)

就業規則の作成には、さまざまなノウハウがあります。

・会社の規模・体力
・業種・業務実態
・人事政策
・従業員構成

こういう点をふまえて、一言一句吟味して作ります。
そうしないと、会社の実態に合わない、使い勝手の悪い就業規則ができあがってしまいます。

労務トラブルの中でも、退職・解雇にかかるものはトップクラスです。
(他にはハラスメント、メンタルヘルスがありますが)

そのため、就業規則にも、退職・解雇に関する事項は特に注意して定める必要があります。

就業規則作成講座、今回も退職・解雇に関するお話です。

 

いわゆる「リストラ解雇」

会社の経営上の理由で、従業員を解雇せざるを得ないことがあります。
いわゆる「リストラ解雇」。
やりたくない話ですが…

さて、この整理解雇を実施する場合は、しかるべき要件があります。

これを「整理解雇の4要件」と」いいます。

この要件を満たしていないと整理解雇は無効とされる可能性が大です。

 

判例が元

この「整理解雇の4要件」は、判例で示された考えで(東洋酸素事件・1979年東京高裁)、その後の裁判でも、これを踏襲したものが多く見られます。

労働契約法でも、これを法文化することが検討されましたが、見送りとなりました。
「4要件を踏襲した判例が多く見られる」のは事実ですが、一方で、この要件にこだわらずに判断している判決も見られ、確立した判例法理とまでは言えないといことからだと思われます。

とは言え、4要件が解雇有効・無効の重要な判断要素であることは確かです。
実務上はこの4要件を無視することはできません。

 

整理解雇の4要件

次の通りです。

①人員削減の必要性
②解雇回避の余地がないこと(他部署への配転などによって解雇を回避する努力を尽くしていること)
③対象者の選定基準の合理性(基準が客観的・合理的であること)
④解雇手続の妥当性(労使協議、労働者への説明等の手続を踏んでいること)


整理解雇は、実施する側・される側ともに、相当な痛みを感じる行為です。
される側にとっては、死活問題です。
会社にとっても、様々な傷跡が残ります。

もし、やらざるを得なくなったら、誠意をもって、十分な理解が得られるような努力をしましょう。

 

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2019年02月01日

就業規則の実際(37)~退職、解雇(2)

解雇権の濫用は許されない


労働契約法第16条には、解雇に関して次のような定めがあります。

(解雇)
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。


いわゆる「解雇権濫用の法理」と言われるものです。
元々労働基準法第18条の2にあった条文を、労働契約法に移したものです。

ここにある通り、解雇が有効とされるには、次の2つの条件を満たしていなくてはなりません。

・客観的に合理的な理由がること
・社会通念上相当であること

 

「客観的に合理的な理由」とは

「合理的な理由」には、次のようなものが考えられます。
・労働者の能力不足
・労働者の服務規律違反等の不始末
・会社の経営上の必要性によるもの
・会社の解散
・ユニオンショップ協定等の労働協約の定めによるもの

 

「社会通念上相当である」とは

「相当である」とは、解雇の事由と、解雇という処分の間のバランスが取れているということです。
合理的な理由は確かにあるが、解雇までやってしまうのは行き過ぎという場合は、「相当でない」となります。

これの判断基準として、次の点を検討し、判断します。

・就業規則違反があった場合、それを会社が知りながら放置していなかったか、また、適切な注意、指導、監督をしていたか
・本人の不適格性是正のために指導や人事異動等の努力を会社はしたか
・本人の能力不足や勤務態度不良について教育・指導をしたか
・他の処分との均衡は取れているか
・整理解雇の場合、「整理解雇4要件」に則っているか
・解雇に不当・不純な動機はないか

 

◆就業規則作成講座INDEX◆

2019年01月31日
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